閑話 旅について②
見知らぬ天井。
ここはどこかしら?
朝のようで暖かい日差しが、身を包んでいる。
一人の少女は、ゆっくりと体を起こした。
頭からは薄紫色の髪が垂れ、するりと体をなぞる。横の壁にはいつも愛用している合羽や傘がかけられていた。
ただ……それらは酷く傷が刻まれている。
目に飛び込んできて気付く。
そうだ……我はあのとき死んだはず!
パッと両手を見るが、不自然なところは何一つ見られない。自由自在に動くし、挙動に異常もない。
あれは夢だった?
いやいやそんな訳はない。体が、心が、あのときのことを鮮明に覚えている。
我はあのとき、シルフと言う少年に殺された。
では今、何故我は生きているのかしら……。
誰か仲間が助けてくれた?いやあの少年がそんなミスをするとは思えない。
それに四肢切断され命も絶え絶えだったと言うのに、傷一つなく元通りということは、かなり高度な回復魔法を使われたことを意味する。
あー……何となく分かったわ。
我を殺したのも、救ったのもきっと彼だ。
それを証明するように、壁の向こうから鼻歌が聞こえた。我はベッドから飛び降りると、ドアを突き開けて隣の部屋に飛び込み。
「お、起きた?良かった、ずっと目覚めないからちょっと心配しちゃったよ。」
そこにはやはり、はにかむような微笑みを浮かべた緑髪の少年が立っていた。
★
シャーク街、宿の一室。
机に並べられたのは、コンガリと焼けたパンが2つ。
朝の開始を体に告げる朝食。
しかし少女は、これから食事するとは思えないほど鋭い目付きで、僕のことを睨んできていた。
「なんで我を殺さなかったのよ!生き恥を晒せと?」
少女は酷く怒っているようで、声色にはドスの聞いた凄みがあった。
しかし生きていることに、怒っているとは不思議な奴である。
人であろうと悪魔であろうとも生きてなんぼ。
血反吐をすすってでも生きてこそ、意味があるはずなのだが。
「まあまあ、落ち着いて。ほらとりあえず服着たら?」
「服?あっ……変態!」
少女は下着しか着ていなかったのが酷く恥ずかしかったようで、顔を赤くしながら小走りで部屋に戻って行った。回復魔法をかける際、どうしても服を脱がさなければならなかったのだ。
僕のせいではあるが、他意は無い。
数秒後青色の合羽を着た姿で、再び僕の前に戻ってきた。
「まさかあなた、我が寝ている間に何か変なこととかしてないですわよね?」
「変なこと?例えば?」
「そ、それは、そんなこと言う訳…ってなに普通に会話してくれてるのよ!あなたと我は敵同士。こんな会話をしている暇なんてないですわ!」
「会話は大事だよ。僕、君と話したいこと色々あるし。」
「我は話したいことなんてないですわ!何であなたが我を殺さなかったのか分からないけど、私を生かしたことを後悔しなさい!問答無用!ここで死んでもらいますわ!闇五月雨!……ってあれ?」
少女は呪文を叫び、魔方陣を展開して魔法を発動させようとする。
しかしうんともすんとも、魔法は発動しない。
それどころか少女は魔力の操作すら十分に出来ていない様子だ。
それはそう……何故なら僕がそうなるようにしていたから。
「無理だよ。ほら、ここ。」
首元を指さして教えてあげる。
すると少女は動揺しながらも、首を触った。
驚く表情。
どうやら気づいたらしい。首に小さな首輪がはめられていることに。
「ちょ、ちょっと……これはなにかしら?まさか……奴隷の首輪。」
「んー、まぁ大体そうだね。」
「嘘!?嘘でしょ……あなた、まさか我を奴隷にしたと言うの?」
「うん。」
「な、ななななな何て外道!我は魔王軍幹部よ!ど、奴隷?信じられない、この私が奴隷ですって……最悪……最悪にも程がありますわ!今すぐこんなもの外してやる!」
少女は激しい剣幕で、首輪を外そうとする。
だが力が思うように入らないようで、全く外せる兆しが見えない。
「そりゃ外すのは無理だよ。そういう首輪だし。」
「ふ、ふざけるんじゃないですわ!なんで我があなたなんかの奴隷に……。生き恥を晒させるだけでなく、奴隷にまでするなんて殺す以上の悪行!貴様!戦闘した相手への敬意や良心はないの!?鬼畜の所業ですわ!」
「あはは、まさか悪魔にそんなこと言われるとはね。たまたま最近奴隷の首輪に興味が出て、作っちゃったもんだからさ、試しに使いたくなっちゃったんだ。てへぺろ。それにさ……敗北者が何言っても何の意味もないよ。負け犬ちゃん。」
「くっ、許さないですわ…貴様など……くっ、体が思うように動かない。ならせめてこのまま恥を晒すなら一層、死んでやりますわ!」
少女は勢いよく舌を噛み切ろうとする。しかしもちろん自殺することも出来ない。
奴隷首輪とははめられた時点で、行動は全て制限され主人の許可なく行動することはできなくなる。
ここで言う少女の主人は、僕。
僕が自殺を許可しない限り、もちろん自殺することは不可能だし、僕に危害を加えようとすることも一切出来ない。
言ってしまえば少女は既に、僕の操り人形だ。
「はぁ、はぁ、くそ!許さないですわ!確かにあのときは負けましたわ。きっと今でも勝てやしない。けど絶対…絶対……貴様を絶対ぶっ殺しますわ!」
「発言がいちいち怖いなー。貴様とか、主人に使う言葉じゃないし。あ、いいこと思いついた。命令、これからは僕のことをご主人様って呼ぶように。」
「な、そんな呼び方をするわけないでしょ!き、きさ……ご主人様ごときに!な!?嘘!?なんで!?」
奴隷への主人の命令は絶対の効力を持つ。
少女が拒もうと、それは既に意味をなさない。
「く、酷いですわ!ご主人様の鬼畜!くそ人間!アホ!」
「何かご主人様って呼ばれると、罵倒も悪くないかもしれないな。」
「なっ……くそ変態!」
少女は歯をギシギシと鳴らしながら、握り拳を作っている。本当に僕を恨んでいるらしい。
ただ少女は知る由もないだろう。その首輪はただの奴隷の首輪では無いことに。
さっき言ったように、少女にはめている首輪は僕の手作り。つまり普通の奴隷首輪と違い、僕流のアレンジが加えられている。
そのため普通の奴隷の首輪よりコンパクトで、刻まれている魔法陣も多い。
外から見えなくなるように透明にすることも可能で、実は今も実は発動している。触れば感触があるものの、僕の目には映ってはいない。
ただ僕オリジナル首輪の最大のポイントは、精神魔法が刻まれていることだ。
精神魔法。
それは非常に高度な魔法ジャンルの一つで、習得が非常に困難だと言われる魔法。
この世に扱えるものはほぼおらず、資料や魔術本などもほとんど残っていない。
ただそれを僕は独学でマスターしていた。
故に実は使い放題。もちろん人格を歪めて他人の人生を歪めるほどの魔法なので、使うことは極力避けている。
ただたまたま奴隷の首輪を作ろうと思ったときに、つい興が乗って使ってみてしまった。
僕が刻んだ精神魔法。
それは徐々に僕のことが、好きになってしまうという魔法だ。
いやはや自分で言ってても恐ろしい。この目の前の少女は、自身の意思関係なく時間が経つにつれ、僕のことが好きになっていくのである。
恋と言う魔法ほど、生き物を簡単に手懐ける魔法はない。精神魔法や奴隷魔法にも限界はあり、完全な忠誠を誓わせるのに恋の感情は一番手っ取り早いのだ。
試作段階で完全に発動するかもよく分からないが、気長に少女の経過観察をするとしよう。
少女がいつからか魔王への忠誠を無くし、僕の恋の奴隷になれば面白いな~なんて言う甘い期待と共に。
「ご、ご主人様っ……くっ?言いたくないのに……言葉が出ちゃう。」
少女は必死に自身の口を手で押さえつけるも、全く意味が無いようである。
「ほら、朝ご飯作ったしとりあえず食べよう。君の分まで作ってあげたんだから感謝して欲しいね。」
「わーいご主人様、ありがとうございますわ!……ってなわけないでしょ!く、口が勝手に…くぅ。」
そう取り乱してはいるものの、少女のお腹からはグ~と微かにだが音が鳴ったのが聞こえた。
本当は腹が減っているらしい。
「んぐ、うま。あ、パンに何つける?マーガリンでいいかな?」
「もちろん良いですわよ!ご主人様!……もう、嫌……恥ずかしい。」
少女は赤面させながらも、マーガリンを受け取ると丁寧にパンにつける。
そしてパクッと頬張った。
サクッと音がなり、上手に焼けたことが音だけで伝わってくる。良かった。
「お、美味しいですわ。」
「でしょ。僕パン焼く時間、すっごくこだわってるからね。」
「流石ですわ!ご主人様!……あーもう!何なのですのよこれ!言葉の強制力って奴隷の首輪にあったかしら……。はぁ、ずっと悪夢が続いてる気分ですわ。」
少女はため息をついたあと、そのまま一瞬でパンを食べ終えてしまった。そしてキリッとした表情で、僕を見つめてくる。
「えっと、何かな?」
「ご主人様……ちっ、ご主人様の魔力やっぱエグいですわね。こんなに近くても魔力量を感じない。やっぱり、化け物か何かなのかしら?」
「別にどう思われても構わないさ。僕は僕が僕らしく生きれればそれでいい。それに魔力が少ないと錯覚して、油断する奴は今まで余るほど見てきた。そう意味でもこの生まれ持った力には、感謝してるよ。」
「そう、はぁー。やっぱ我じゃ、手も足も出ないですわね。しょうが無い、抗っても意味ないし……とりあえず今は甘んじてこの状況を受け入れてやりますわよ。」
少女の睨んでいた目が穏やかに変わったのが見えた。
「お、理解が早いね。」
「このまま意地張ってもなんの意味も無いですもの。けど勘違いしないで欲しいですわね。我は別にご主人様に手懐けられた訳じゃない。全ては演技であり、軌跡。奴隷として虎視眈々と下克上のみを狙い続ける、仲間の皮を被った悪魔ですわよ。覚えておきなさい!」
「ふーん、じゃあそういうことにしてあげるね。」
「うざ。で……一応聞いておくけれど、我を奴隷にした理由はなにかしら?こんな感じに敗北を味あわせて、楽しんでるような人間じゃないでしょ。」
「え、まあ、何となくかな。」
「は、はぁ!?何となく?我、魔王軍幹部ぞ!これほどの存在を奴隷にしといて、何の目的がないと!?」
「いや、完全に目的がないわけじゃないよ。奴隷の首輪の効力を研究したいってのもあるし、一人旅もいいけどたまには他人と話ながら旅してもいいかなと思ってね。」
「つまり、それ、我じゃなくてもいいですわよね?」
「いや、そういう訳じゃないよ。実際ほら、今君と話せて楽しいと思ってるし。こういう一緒にいて楽しい人との旅って憧れてたんだよね。2人旅ってのは迷惑とか考えると出来ないんだけど、奴隷になった君なら気兼ねなくできる。」
「そ、そう。我は全然楽しくないんだけど……。」
「僕も君を楽しくできるように頑張るさ。おっと、昨日会ったばかりじゃ良く僕のこと知らないよね。改めて自己紹介するよ。僕の名前はシルフ。世界四大ギルドの一つ、シルフギルドのギルドマスター。趣味はこの通り旅だよ。このくらいで良い?知りたいことある?」
「特にないですわ。我はご主人様に興味なんてないですし。ただ将来殺すためだけの敵でしかないですわ。」
「そっか、残念。じゃ、君も自己紹介してよ。」
「はぁ?何故我が……て、やっぱり拒否できない。我は魔王軍幹部。悪魔族の長のスピネルですわ!今は失踪扱いになってるでしょうから、どうなってるか分からないけれどね。趣味は虐殺。使える魔力属性は、闇と風と水。スリーサイズは84、54、82……って、なんで我こんなとこまで言ってるの!?」
「あはは、おもろ。にしても三属性使えるなんてすごいね。シルフギルドにもそんな人いないよ。」
「ま、そうでしょうね。我は神に選ばれた天才だもの。今や奴隷だけれど……それで逆にご主人様は、何属性扱えるのかしら?」
「四属性かな。」
「四……四!?は!?神に選ばれた天才とか言ってた、我が恥ずかしいですわ!どうしてくれるの!?もしかしてさっきまでのは、我への嘲笑!?」
「いやいや違うよ。実際三属性扱える人見たの初めてだし。もちろん僕と同じ四属性は見たことないけどね。」
「四属性なんて我も聞いたことがないですわよ!あーもう、魔力量も扱える属性も一段階上って、どうやって勝てばいいんですわ……。その力で我の同僚であるアメトリンも倒したと言うの?」
「アメトリン?」
「なんで分からないんですのよ!ダークフェアリー族で、我と一緒の魔王軍幹部の奴ですわ!それとも名前を覚える価値も無い敵だったってこと?」
「あー、いや違うんだ。僕が倒したわけじゃない。彼女を殺したのは僕の親愛なる仲間、白金等級のクリスタだね。」
「クリスタ?へぇ、驚きましたわ。あれは我に比べれば貧弱この上ないけれど、弱くはなかったはず。それに勝てる冒険者がいるだなんて、帝国軍は層が厚いのかしらね。」
「魔王軍は層が厚くないのか?」
「いいえ、厚いに決まってるじゃないのよ。12人幹部がいて、それぞれ優秀な仲間を持ってるもの。帝国軍が予想以上に層が厚いと思っただけですわ。」
「そっか。あーあ、戦争もそんな感じじゃ終わりが見えないね。」
「いや、ご主人様……くっ、が本気出せば終わらせられんじゃないかしら?少なくともご主人様ほど強い存在、魔王軍内にいるとは思えないのだけれど。あー、成りうる候補は2人ほどいますけれどね。」
「2人?おー僕くらい強い人がこの世界に2人もいたなんて感動だ。是非手合わせして見たいね。」
「あくまで予想ですわ。魔王軍幹部の吸血鬼族の長と、妖狐族の長…その2人ならもしかしたら……ってところですわね。」
「あ、僕も少し小耳に挟んだことあるよ。その2つの種族は、魔王軍内でも特別なんでしょ。」
吸血鬼族と妖狐族。
その二種族が歴史の表舞台に出てきた記録は、魔王軍幹部の情報と比べてもほとんど残っていない。そのためどのような種族なのかもの詳しく分かってないのが帝国の現状だ。
僕も何度か調べたことがあるが、明確な情報は未だに掴めていない。これは詳しく知る好機かもしれない。
「特別…ね。けれどこの二種族に関しては、魔王軍内でもトップシークレットですのよ。話したくないって言っても……はぁ意味ないですわよね。」
「うん、話してくれる?」
「正直幹部である我も、詳しくは知らないですわ。だから知ってる限り話しますわよ。この二種族は魔王軍が成立してから、ずっと幹部の議席に居座っている種族。我ら悪魔族だって幹部になったのは500年前くらいからですし、種族の入れ替わりが多い幹部職にとってこれはかなり異常なことですのよ。」
魔王軍には何百と言う種族がおり、その種族が互いに村を形成している。そのため魔王軍とは分かりやすく言うならば、多くの種族の連合軍。
その数多ある種族の内、より有能であったり、能力に吐出した種族の長が魔王軍幹部の12議席の内の一つを獲得する。
またもちろん能力が他に劣る者は、魔王軍幹部から外されるのだ。こうして種族同士が常に競争状態を作り上げることで、魔王軍はより強くなるという仕組み。
これは帝国でも割と一般常識である。
「今や噂では、吸血鬼族と妖狐族は魔王様を軽く凌ぐ力を持っていると言われていますわ。実際近くで見てた我から見ても、魔王様はその二種族の操り人形。完全に頭が上がらないって感じでしたわね。」
「つまり魔王軍ってのは実質、その二種族によって支配されてるのか?」
「そういうことですわね。だからこそ魔王様が代替わりしても、変わらずブレないって言う強みもあるけれど。あの種族は長寿だし。我が知ってるのはこんなあたりですわよ。どう?十分かしら?」
「うん、いやすごくありがたかったよ。これで帝国軍の常識が大きく変わるだろうね。」
「くっ、これ完全に我魔王軍の裏切り者ですわ!マジで最悪。どうしよう…このままじゃ幹部どころか魔王軍に戻れないかも……。」
「そうかもしれないね。大丈夫。君の居場所は、僕が帝国軍に作ってあげるよ。」
「嫌すぎるのだけれど……。」
スピネルが顔を暗くしているのを片目に、僕はパンを頬張り食べ終えた。
お腹も膨れたし、満足満足。
皿洗いでもするかと、思って皿を取ろうとするが……
逆にスピネルが僕の皿を持って席を立った。
「あれ、皿洗ってくれるの?」
「何ですのよ、奴隷ってこういう雑用をやるのが基本じゃなかったかしら?魔王軍幹部様である我が、わざわざ皿を洗ってあげるのよ感謝しなさい。」
「おおー、すばら。」
スピネルは洗面台で、皿を洗い始めた。
雑用をやってくれると言うのは、想像以上に気持ち的にも肉体的にも楽な気がする。
不味い……このままだと奴隷がいないと生きていけない体になりそうだ。
けど今くらいは、甘えるとするか……。
水の流れる音を聞きながら、朝届けられた新聞にパパっと目を通す。
内容はやはり、魔王軍幹部を倒したという一大ニュースで埋まっていた。
これでシルフギルドの名声が上がること間違いない。
より有能な人材が入ってきてくれれば、四人目の白金等級冒険者を輩出するのも夢じゃないな。
そんな気がする。
「何か面白いことでも書いてあったのかしら?」
いつの間にか家事を終わらせた、スピネルが僕の横から新聞を覗いていた。
思い出してみれば彼女は水属性と風属性を扱えるはずだ。この二属性は家事で非常に役立つことが多い。
皿洗いも少女からすれば、速攻終わらせられる簡単な家事なのだろう。
「魔王軍幹部の討伐と、魔術協会の裏切りについてばっかりだね。」
「魔王軍幹部としては、やるせない気持ちですわね。ってまさか、我がこの新聞に乗ったりしないですわよね?『奴隷になってた!』なんて書かれた日には、本当に魔王軍に戻れなくなってしまいますわあああああああ。」
「それについては僕も気をつけようかと思ってるよ。だってバレない方が、君の有用性高いしね。あっ、ずっと君って呼んでるけど、いい?なんか嫌だよね。けど名前で呼ぶわけにもいかないし。」
「我はその二人称で言いのだけれど。それで……名前で呼べないのは、魔王軍のスパイが帝国領にいたらバレるからかしら?」
「そ。だから新しい名前を考えよう、そうだな~あ、どうせだから僕の昔の名前から取ろうかなアンってのはどう?」
「ご主人様の名前を頂けるなんて光栄ですわ!……何なのかしらこの発作。けど名前変えても、普通…容姿や気配で分かるんじゃないかしら?」
「そうだね。だからこれから君には服装も髪型も武器も一変してもらう。」
「一変!?ってことは我にこの合羽と傘の武器を捨てろと!?それに仮面だって……い、嫌ですわよ。これは我が母親からもらった肩身で、肌身離さず使い続けるって決めたものなのよ!」
「捨てるまでは言わないけど、肌身離さずってのは無理だよ。それとも僕の奴隷になったって魔王軍に知られたいの?」
「うぅ、それは……。分かりましたわ、ご主人様。」
スピネルは見るからに項垂れてしょぼんとなる。
とりあえず彼女の物は、僕の空間魔法の収納スペースに入れておくとするか。
いざという時にすぐに取り出せるし。
「よし、じゃ、今から服とか買いに行くから外出るよ。」
「い、今から!?わ、我この合羽以外今服持ってないのだけれど!」
「とりあえず僕の服を着てくれ。ほらこれ。サイズ的に大丈夫だと思うけど。」
「そ、それは彼Tみたいで、ちょっと我、嫌なのですわ……。」
「文句言わない。ほら準備準備!」
「な、何故魔王軍幹部の我がこんな仕打ちを……。」
スピネルは僕の服を受け取ると、とぼとぼと寝ていた部屋に戻っていった。
うーん別にその部屋、スピネルの部屋って訳じゃ無かったんだけどな……。
そんなことを思いながら、僕は朝のルーティンである歯磨きをすることにした。
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感想お待ちしてます。
髪色めちゃくちゃになってた、ごめんね。
スピネルさんは薄紫の髪色です。




