第三十一話 戦闘について⑩
事の顛末について話そうと思う。
僕らは闇属性研究施設から無事シルフギルドに到着し、地下施設の研究資料をギルドマスターの元へと届けることに成功した。
なんでもギルド内でも大変な戦闘があったらしく、帰ってきたらギルドの食堂がめちゃくちゃ。
椅子や机は壊れ、壁には穴が開き、まさに大惨事だった。
グリフォンがカイヤを回収するように冒険者を派遣しただの何だの言っていたので、それによる戦闘だったとのこと。アズや他のギルド冒険者たちがカイヤを守ってくれたようで感謝しかない。
シルフギルドとサラマンダーギルドのギルドマスターたちは、帝国の上の方々にまで迅速に報告し対応してくれた。何だか既に資料を持ってくるだろうと思われてたのかと思うほど、素早い対応でちょっと不思議である。
数日で非人道的な研究における多くの事が明るみになり、魔術協会の一部の人間が魔王幹部と手を組んでいたという事実も世間に知れ渡った。
これにより魔術協会の権威は大きく低下したと言っていいだろう。その後、王様と四組織による会議が行われ今回の騒動について決着がついた。
詳しくは聞いていないので分からないが、魔術協会の協会長は責任を取って辞任。またカル施設長や研究関係者の他、関わっていたグリフォンギルドの冒険者を含め、全て騎士団によって牢屋行きとなったらしい。どんな罰せられ方をされ行くのかは僕の知る由ではないが……。
風のうわさで聞いたが、ギルドマスターが死んだこともありグリフォンギルドは取り潰しになったらしい。
この世界が日本と大きく違う一つの点として、真実は必ず明るみになってしまうと言うが挙げられる。
この世界では魔術の扱いが長けている者ほど、嘘を見抜く能力も高い。僕も分かるときがあるのだが、魔力の揺れなどから何となく読み取れるのだ。
それを応用した嘘を見抜く装置などもあることもあり、嘘が通用することは先ずない。精神魔法による強制的な自白も可能らしく……もう、ここまで来ると恐ろしくも感じてきた。
とにかく悪い奴は全員捕まった、めでたしめでたしってこと。
あんな非人道的実験、この世から消えることを願うばかりだ。
僕とダイヤは死んでしまった奴隷の子供たちを供養できるよう、墓石を作ったりと色々出来ることを行った。生き残った奴隷たちは……奴隷である以上これからも辛い仕打ちを受けるかもしれないが、実験で死ぬことは防げたと言えるだろう。
僕らシルフギルドの冒険者の他、サラマンダーギルドの二人は、大きな事件の解決に導いた。
この功績を認められ、僕らやアズたちも多くの謝礼を頂いた。貧乏人からちょっとしたお金持ちに大変身である。
まさか施設に調査に行くときはこんなことになるとは一ミリも考えてなかった分、何だか地に足がついてないような感覚だ。
そんな中、シルフギルドのメンバーの多くに集合の号令がかかり、食堂に集まれられた。
そう、宴である。
大きな偉業を達成したなら、宴。これぞ冒険者の鉄則である。
え?いつも宴してるじゃないかって?まぁ気にしない気にしない。
さすが異世界と言うべきか、修復能力もすさまじく食堂は数日で、全て綺麗に元通り。
机には、豪華絢爛な食事がズラリと並べられていた。
「今回、我らシルフギルドの冒険者が国王に直々に称賛頂くほどの功績を遺した!故に、祝え!飲め!歌え!宴の始まりだあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「「「「「おおおおおおおお!!!!!」」」」」
クリスタの一喝でギルド内に歓声が響き渡り、勝利記念の祝賀会が開催された。
好き放題飲んで、食べていい。お金は全てギルドマスターが直々に出してくれる夢のような宴の始まりである。
踊り食いする者がいれば芸を披露する者など、楽しみ方も多種多様。食べ物を奪い合って殴り合いを始める奴、そこに賭けをして楽しんでいる奴、ダンスしたり歌ったりと食堂の中央は大いに盛り上がっている。
僕とアズ、カイヤはそこから少し離れた四人席で、騒いでいる様子を片目に食事を楽しんでいた。
転生したところで心の内は変わらないと言うか、陰キャはいつまでたっても陰キャ。別に皆ではしゃいでワイワイするのが嫌いなわけではない。ただ疲れるので、見てるくらいが丁度いいと思っている。
ビール片手に、カエルの唐揚げを食べる。これだけでも僕は充分幸せだ。
見たことのない高そうな食べ物が多く並んではいるが、いつも食べているこういう普通の食い物だって美味しくないわけじゃない。むしろこれはこんぐらい美味いんだぞって安心感がある。
そんな安心感を感じながらカエルの唐揚げにかぶりつきビールを喉に流し込んでいると、向かい側に座ってたカイヤが呟くように話し始めた。
「いやー、まさか私のギルドマスターがあれほどの極悪人だなんて思いませんでした。それも私を実験体にしようだなんて、とんだくそ野郎です。あの魔族因子だかに適応してなかったら、私死んでたってことじゃないですか!」
「そうね。あんた本当に中々に悪運が強いわ。私たちが助けてなかったらこの数日で三回はしんでたものね。キンググレートボアに、注射に、実験体って。逆にすごいことじゃない。」
「すごいことでも、こんなのはごめんですよ。お二人にもまた命を助けてもらいましたし……、フォスさん、この謝礼は体で払うしか……って痛い!」
「あんたまた変なこと言って!ちょっとは恥じらいを持ちなさいよ。フォスも本気にしないでよ!まったく……。」
「う、うん。その…恩を感じてるくれてるなら、カイヤにはシルフギルドに入って恩返してもらいたい所だね。」
「わ、分かりました!フォスさんのお願いならば、私必ず合格してみせましょう!アズさんも合格したらの約束忘れないで下さいね!」
「約束?あ~デートだっけ、分かったわよ……。けど正直、合格以前にあんたの扱いがどうなるのか気になるところよね。」
「扱い……?どういうことですか?」
「あれ知らないの?いや、あんたってあの注射の適合者って訳でしょ。つまりあんたはあの私たちが苦戦した漆黒の甲冑と同じ実力を持ってるってことになる。そんなあんたがあいつらみたいに魔力暴走を起こして見なさいよ、とんでもない兵器だわ。それで、そんな存在をどう扱うかって、上の方では結構揉めてるわみたいなのよね。」
「え!?は?私そんなこと初耳何ですけど!?ちょっと待ってください、私…どうなっちゃうんですか?」
「既に話題になってたし知ってるのかと思ってたわ……。そうね……最悪、どこかしらの施設に収容ってとこかしらね。」
「ぇぇえええええ、何ですかそれ!?理不尽すぎませんか!?まさかこの宴は私の最後の晩餐!?最悪です!フォスさん助けて下さい!私こう見えても貴族なんですよ!どうにかなりませんか?」
カイヤは懇願するように、自分の手を両手で握ってくる。
僕もその話を聞いたときは理不尽すぎると思っていた。
だって彼女は何も悪くなくて、ただたまたま被検体に選べれて異常な能力を持ってしまっただけじゃないか。それなのに強制的に収容はあまりにも理不尽である。
ただ彼女の能力は、多くの人に恐怖を与えるのも事実だろう。まだまだ魔力の扱いが拙い分、いつ魔力暴走が起こるか分からない。せめて僕らにもっと権力があったらどうにかなったかもしれないのだが……、所詮シルフギルドの金等級冒険者ではどうしようもないらしい。
「ごめん、カイヤ。一応クリスタやギルドマスターにも、そんなことが起こらないようにお願いしてみたんだけど、どうなってたのかは何とも……。ちょうどクリスタがいるしどうなったか、聞いてみる?」
「は、はいお願いします!」
カイヤの握る力が強くなった気がした。
食堂の隅の方で飲んでいるクリスタを見つけると、空中に魔力線で文字を書いてみる。
クリスタは常に周りに気を配っていることもあり、僕の魔力線にも気づいてくれることだろう。
楽しんでいるようで楽しんでなかったり、逆に楽しんでいないようで楽しんでたりする外骨格みたいな感情を持ってはいるが……滅多に外に出すことはなく、心から泣いていたあのときが僕が初めて見たときかもしれない。楽しんでいるようで常に警戒を怠らない、それがクリスタだ。
ビールを飲んで楽しんでいたとしても、クリスタの眼はきっと冷静なのである。
そして狙い通り、クリスタが何食わぬ様子で僕らの所まで近づいてきた。
流石白金等級!心から賞賛したい。
「どうしたフォス、そんな粋な呼び方をして。何か用があるのか?」
「そのカイヤの処遇について聞きたくてですね。結局どうなったんですか?」
「どうなったんですか!?」
カイヤは身を乗り出して、僕の言葉に追随してきた。その必死そうな様子を見て、クリスタがくすりと笑う。
「ふふ、つい先程だが結論は出たぞ。カイヤはシルフギルドが面倒を見ることになった。良かったな、カイヤ。」
「「「え!?」」」
クリスタの言葉に僕を含めアズまで、そうハモって驚いた。
カイヤに至ってはそのままフリーズしている。
「ちょっと、面倒を見るってのはつまり……、カイヤはシルフギルド所属の冒険者になったってこと?」
「いや今のことろは、ギルドマスターの奴隷って扱いになるな。あはははっ。」
「え゛!?」
カイヤはその言葉を聞いて、汚い音を口に出す。
そして矢継ぎ早に言葉を繰り出した。
「ちょちょちょ待ってください!なんで私がギルドマスターの奴隷になってるんですか!?フォスさんのならまだしも……見ず知らずの人の奴隷何て絶対嫌です!」
「そう、慌てるな。見ず知らずって前に会ってるだろ。それに便宜上奴隷と言うだけのことだ。ギルドマスターは君のために頑張って、この居場所を作ってくれたんたぞ。それで……ここからが本題なのだが、カイヤには奴隷ではなく、正式にギルド所属の冒険者になってもらうのが望ましい。」
「つまりカイヤには、試験に真正面から合格してもらう必要があるってことですか?」
「そういうことだ。ギルドマスターからは私がカイヤの修行をこれから見るように言われた。つまり、これからは私がカイヤの師匠になると言うことだな。よろしく。」
クリスタがそう言うと、アズが僕の肩を叩いてくる。
「良かったわ。こんな状況でカイヤが合格しなかったときどうなったことか……責任から逃れられて助かったわよ。ね、フォス?」
「うーん、確かにあれほどの力を持ってるカイヤを修行するには、僕らじゃ力不足感は否めない。クリスタに任せられるなら安心だな。だけど……、」
僕はそう言ってカイヤの顔を見る。
一番重要なのはカイヤが一番信頼出来る師の元で修行することのはず。
そして案の定、カイヤは少しバツの悪い顔をしていた。
「え、えと、わがまま言ってるのは分かりますが、私はクリスタさんに修行してもらうより、フォスさんとアズさんに教えてもらいたいと言うか…なんというか……やはり今まで教えて頂いてた信頼がありますし……。その方針は変えられないんですか?」
「ぷっ、信頼ね。」
アズが小さな声でそう呟いた。
口に手を当てて、ニヤニヤ笑みを浮かべている。
「変えられるも何も、ギルドマスターからの指示なのだから従うのが当たり前だろ。君はまだ事の重大さを理解していないようだが、もし次の入団試験に落ちることでもあろうものなら、本当に奴隷になる可能性が高い。その点私なら君を合格に導くことくらい容易い。」
「そ、それは分かってますけど……。このままでは私の計画が……、」
「計画?ふむ……あーなるほど。少し耳を貸せ。」
クリスタは何かを理解したような表情を浮かべた。
グッとカイヤを引き寄せ、彼女の耳に顔を近づける。
「カイヤ、もし君が私の元で修行して合格したならば、無事フォスと兄弟弟子ということになる。どうだ兄弟弟子と言う称号、欲しくないか?さらにフォスがどんな女性が好みなのかの情報まで提供してあげよう。」
「え!?兄弟弟子……、確かに師弟関係より兄弟弟子の方が親密度が高いような気がする。それに貴重な情報……。なるほど分かりました。クリスタ師匠、お願いします!」
カイヤは大声でそう言うと、クリスタの手を両手で握った。
彼女たちの会話は聞こえなかったのでわからなかったが、十中八九クリスタに何らかの手段で言いくるめられたのだろう。
あれは口が達者だからな、騙す能力に長けているカイヤもコロッと騙されたに違いない。
まあ直にカイヤも修行のうちに、クリスタの恐ろしさに気づいていくことだろう。
これも人生の勉強だと思って頑張って欲しい。
「カイヤの講師としての給料がもらえなくなるのは残念だけど、今回の騒動でお金もたんまり入ったし、問題はなさそうね。って、げ!?……、」
アズは唐突に動揺したような、様子を見せた。
何があったのかと彼女の目線を追うと、そこには一人の少女がいた。
ピンク髪のツインテールに、どこかしらのアニメの魔法少女のような恰好。いつもは大きな帽子も着ているはずなのだが、今日は珍しく被っていないらしい。
身長は低く、中学生か下手すれば小学生にも見える幼い体形。
そう彼女こそアズの師匠であり、世界に七人しか存在しない白金等級冒険者の一人、ローズである。
ローズは唐揚げを片手に持ちルンルンとスキップしながら。僕らの座っている席まで近づいて来た。
「も~ローズちゃんが近づいてくるのが見えただけで、そんな声あげなくていいでしょ!ぷんぷん。あ、フォスちゃん、久しぶり!きらっ。今回の騒動の発端はユーなんでしょ?色々やってくれたわね。」
「その…色々と迷惑をかけたようで、すいません。ローズさんがいてくれて本当に助かりました。」
僕はそう言って、少女にお辞儀をした。
こんな幼い少女にしか見えないのに、僕よりも年上と言うのは全くどういうことなのだろうか?
種族を聞いたことが無かったが、見た目だけでは人族にしか見えない。エルフの親戚とかなのだろうか?
「ん~やっぱり、フォスちゃんはしっかりしてるね。ローズちゃんそこまで言われちゃ、満足満足だよっ!これからもローズちゃんの可愛くない弟子のこと、よろしくね!迷惑とかかけてない?」
「迷惑ですか……もちろんかけられてない節が無いわけでは無いのですが、いつも頼りになってる僕にとっての大事なパーティーメンバーですよ。今回もアズには助けてもらいましたし。」
「ふふ~ん、へぇ、まさかフォスちゃんにそこまで言わせるとは、アズちゃんやりますねぇ。」
「う、うっさい……。」
「お~、アズちゃん照れてるね~。」
「死ね!」
アズは少し顔を赤く染めなら、ローズの顔を睨んだ。よほど照れてくれてるらしい。
酒が入ったアズの前で彼女の悪口でも言ってみろ、殴られるだけじゃすまないかもしれない。
ここはこんな感じで上手く誤魔化すのが吉なのである。
作戦成功。
嘘はついていないし、実際にそう思ってはいるのでなんの問題もない。
「ローズ、私も君に言いたいことがあるのだが、事務作業を手伝わそうとするといつも逃げる……あれはどういうことだ?君が手伝ってくれないせいで、こっちは毎晩毎晩徹夜させれてるんだが?」
「ク、クリスタ……いや~、ローズちゃんも手伝う気持ちでいつも一杯なんだけどね、いつもタイミングが悪いんだよね~。嘘じゃないよ、ほ、ん、と、う。キラっ。」
「ほう、そうか手伝いたいのか。それは良かった。これから私がカイヤの面倒を見ることになる分、どうしても手が回らなくなってしまうだろうからな。その穴埋めとして事務作業をやってくれる人を探していたんだよ。ギルドマスターはまた旅に出てどこか行ってしまったし、明日から事務作業の方、ローズよろしくな。」
「は!?はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?冗談でしょ!ね、冗談って言ってよ。ローズちゃん、また新しい魔法の研究始めたの!そんな暇ないの!」
「はははっ、冗談じゃないぞ。残念だったなローズ。自分が育成担当に任命されなかったことを恨むと良い。それともコハクでも呼び戻してくるか?」
「コハクなんて、どこ行ってんのかも分かんないじゃん!うわ、最悪。せっかくの宴だってのにテンション爆下がりだよ~しょぼん。やけ食いしてくりゅ!」
ローズはぐったりした様子で、食堂の中央の方へと歩いて行った。
事務作業には機密情報も多く含まれることから、白金等級以上じゃないと閲覧できないものもあると聞く。クリスタがカイヤの修行の担当にされた分、ローズ以外に今ギルドに白金等級冒険者がいないので拒否権はないのだろう。
一応シルフギルドにはもう一人白金等級冒険者はいるのだが、絶賛遠出中である。
どんまいです……ローズさん……。
「まぁ、まぁ、私も手伝えるところは手伝うから、そう落ち込むな。」
クリスタはローズにそう言葉をかけると、追いかけるように食堂へと歩いて行った。
二人はあんな感じだが、なんだかんだ仲が良い。同じ年代でこのシルフギルドに入団したと言うこともあり、長年の付き合いなのだろう。
そのとき、ふと歓声が耳に入った。
どうやら食堂奥で、盛り上がっている様子である。
見るとウルツとガーネットが物凄い気迫で腕相撲をしていた。
ガーネットはシルフギルド所属ではもちろんないのだが、今回の功労者と言うこともありエメラルドと共に、シルフギルドに御呼ばれしている。
他ギルドだと言うのにあの溶け込み具合、あの二人は生粋の陽キャなのだろうか……。
どうやらウルツが腕相撲で負けたようで、悔しがっている様子。相手が白金等級なんだから当然だろって感じなのだが、あの黒髪イケメンは何を考えているか分からない。
そう思っていると、メノウがウルツの後から現れ、「次は僕がっ」と叫んでいる。メノウがこういう乗りに乗ってくる人間だったと言うのは少し意外だ。
そう言えば彼女も、カイヤを守るために尽力してくれたらしい。お礼くらいはとりあえず言っておきたいものだ。
ガーネットは笑いながらも、もう一度腕相撲に臨んであげるようでメノウと手を握っていた。ボーっと酒を飲みながらそれを見ていると、ふと彼女たちの周りにいたエメラルドと目が合った。
彼女はチラッと僕の方に手を振ってくると、黒髪のツインテールを揺らしながら小走りで僕の元まで迫ってくる。
「よっす、フォスっち。飲んでる?」
エメラルドはナチュラルに近くの席から椅子を持ってくると、僕の横に座ってきた。
「うん、飲んでるよ。エメラルドはどう、楽しんでる?」
「そりゃもう、当たり前っしょ!宴、最高~。皆の様子見てるだけで、自然と酒が進んでくるもんね。こりゃ明日は二日酔いだわ~。今日はシルフギルドに泊まるから、最悪介抱よろしくね。」
「僕は既に多分介抱しなきゃならない人が、横にいるからな……。それは僕じゃなくて、ダイヤに頼んでくれると助かるよ。」
「あ~、確かにダイヤっち介抱とかちょー上手そうだわ。それで……うちと同じように介抱が必要になるその方は、そこのフォスっちの仲間?うちエメラルド、よろしくね~。」
「私はアズよ、よろしく。エメラルドだっけ、確かフォスと一緒に研究施設の調査に行った人よね。」
「そうそう!うわ知っててくれたの、嬉し~。アズっちもこれから、よろしくね。」
「え!?アズっち?……まぁ、それはいいとして…あんたフォスと近すぎない。酒入ってるのか知らないけど、あんまり距離感バグらせてもらっても困るんだけど。」
「距離感?え~これくらい普通っしょ!それにうちとフォスはもう一緒に戦った戦友だもんね。これくらいむしろ当然。え、それともなに、アズっちもしかして妬いてんの?」
「は、はぁ?な、なわけないでしょ!」
「うわ、アズっちかわいい~。大丈夫、うちはフォスっちを狙ってるとかそういうのは無いからさ!んでんでそちらの方は~って、あ!資料に載ってた人だ!たしかカイヤっしょ?」
「あっ……はい。カイヤです。今回は私が全ての原因みたいなもので……すいません。けどそれとフォスさんは全く別の話ですからね!フォスさんは私のものなんですから!」
「わお、フォスっち超モテモテじゃん!」
「僕をからかいたいだけだから。」
「えー、そう?けどカイヤっちは、うちにそんな謝んなくていいよ!冒険者にとってトラブルなんて茶飯事だし、むしろ面白いことも多いからね!今回だってフォスっちとかダイヤっちとか、マジ最高な仲間に出会えたし、むしろハッピーを提供してくれて感謝だわ。」
サラッと最高の仲間なんて言われると少し照れてしまう。
エメラルドだって死ぬかも分からない死闘を乗り越えてきたはずだ。そうだというのにそう笑い飛ばせ、むしろプラスに考えられると言うのは、彼女の才能なのかもしれない。
僕も見習いたいものだ。
「あ~けど、アズっちとカイヤっちには、不幸な知らせがあるかも。だってライバル一人増えちゃったもんね~、ごめんね。あはははは。」
エメラルドはそう言って、愉快に笑う。
すると彼女の後方から、修道服を着た白髪の少女が現れる。
エメラルドが影になって見えていなかったが、どうやらいつの間にかダイヤが僕らの席まで近づいて来ていたらしい。
アズとカイヤ、そしてエメラルドの間にするりと入り込むと僕の手を取ってきた。
「あの、フォスさん。あっちに美味しい料理が新しく出たんですけど、一緒に見に行きませんか?」
「え、そうなの?分かった、んじゃダイヤ、一緒に行こうか。」
「はい。」
特に断る理由もなかったので、彼女の手に引かれて食堂の中央までついていくことにした。
僕がその場からいなくなることにより、アズとカイヤがその場に取り残されたような形になる。
二人はポカンと僕とダイヤを見届けた後、ビールの入ったグラスを机に叩きつけた。
「ちょっと、あの女誰なんですか!?私より胸も大きいし……、反則級です!さらに私なら分かります!あれは明らかにメスの顔、絶対フォスさんのこと狙ってますよ!許せません!」
「……ちょっとエメラルド、あの子について色々と何があったかまで事細かに話してくれるかしら?」
アズは真っ黒な笑みを浮かべて、エメラルドの肩をガシっと掴んだ。
その手には絶対に離さないとばかりの意志が込められている……そんな気がエメラルドはした。
「そ、そう言われてもな~、うち途中から別行動だったし。二人が肩車してるとこを見たくらい……。」
「「肩車!?」」
アズとカイヤの声がハモった。騒がしい宴の会場でなければ、部屋の端から端まで響き渡るほどの声量である。
「ふ~ん、どうやらこれは本当に詳しく聞かなければならないようね。」
「はい。情報を全部吐くまでサラマンダーギルドには返しませんよ!」
「あはは、お手柔らかに~」
エメラルドは苦笑いをして、覚悟を決めた。
どうやらフォスっちは、金や富なんかよりもとんでもないものを手に入れてしまったんじゃないか……。
そう心に思いながら……。
これにて一部完結となります。
評価して下さった方、ブックマーク登録をして頂いた方、含めこの作品に目を通して頂いた全ての人に感謝申し上げます。
明日に登場人物解説を出そうと考えていますので、よろしくお願いします。




