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第三十話 戦闘について⑨

闇属性魔法研究所

地下施設、廊下。


「いきなり押し倒しちゃってごめん。立てる?」

僕は起き上がって、倒れているダイヤに手を差し伸べる。


「ありがとうございます。いえ、謝らないで下さい。フォスさんに無理やり抱きつかれて倒されなかったら、私……あのビームで死んでたんですから!」

ダイヤは少し顔を赤くしながら、僕の手をとって立ち上がった。

何だか妙に強調する言い方に、何らかの意味を感じるような気がするが……ここは気にしないことにしよう。


そんなことより、この目の前の敵をどうするか。

これを考えるべきだ。


ガシャン


ガシャン


廊下奥から響く、鎧が擦れるような音。

グリフォン…いやグリフォンであるはずの化け物が僕らの遠く前方からゆっくり迫ってくるように歩いて来る。


僕らとグリフォンにはかなり大きな距離が開いていた。にも関わらず、彼から感じる気配は尋常ではない。さっき会った魔王軍の幹部と同じくらいなんじゃないかと思えるほどの迫力と気配。


それに、あの超高火力魔法……あの広範囲の魔法を鑑みれば、距離なんて関係ない。いつ攻撃をされてもおかしくないのだ。

あの魔法を思い出すだけで体が震えてきそう……。

今生きていることすら実感がわかない。


相手の攻撃動作を見逃さないよう、目と体に魔力を常に大量に循環させ戦闘態勢を維持する。ダイヤも同様に、グリフォンを睨むような姿勢をとった。


「^%"><>#^#""#<^*^*"'^^^^">%%"<」

再び聞こえた、意味不明の雑音。

それと共に現れたのは、見覚えのある巨大な魔法陣であった。

グリフォンを囲む大量の魔法陣が組み合わさり光を伴って回り始める。


また、あの魔法が来る!


僕は素早くダイヤの手を引くと、廊下を走り角を曲がった。あの魔法の攻撃範囲は直線的なもの。角を曲がって逃げられれば、避けることが可能のはず。


そして予想通り、僕らの背後をとてつもない轟音と共にビームが過ぎ去って行った。あれほど高威力で莫大な魔力を消費しているはずにも関わらず、この短時間で二発目を打ってくるとは……本当に馬鹿げてる。


それに全く魔力量が減ってないようにも見える。あの魔王軍の幹部だかが作った注射が、これほど人を化けさせるものなのか……。こんな注射、この世から消さないと、悪用されて目も当てられないようなことになるかもしれない。絶対このクリスタから受け取った資料を、ギルドまで届けなければ……。


目的の達成だけ考えれば、グリフォンがこちらに積極的に接近してこないのを見ると、もしかしたら戦わずにこのまま出口まで逃げるのが得策かもしれない。


生憎、先ほどの戦闘でグリフォンと位置が入れ替わっているため、このままグリフォンを無視して廊下を突っ走れば外へと続く階段にまでたどり着ける。


いや……ダメだ。

焦って行動を起こしては相手の思うつぼ。

グリフォンが接近しようとしてないだけで、いざ接近するとなれば僕らで逃げ切るのは不可能。あの莫大な魔力だ、少し消費して追いかけられただけでも余裕で僕らに追いつけるスピードが出るはずだ。


ここはグリフォンに僕らの姿を見せて、遠距離攻撃を誘導させつつ出口まで逃げるのが最前の選択だ。

ここから角が多いことを考慮すれば、達成できない作戦ではない。


しかし……階段まで逃げてどうするんだ?

あの細く狭い階段ではどう頑張っても、あの強力な遠距離魔法を避けられない。さっきみたいに壁などに埋もれる手もあるが、あの攻撃範囲を考慮すると埋もれた壁ごとえぐられることになるだろう。

…となれば、出口は逃げ場の無い場所とも言い換えられる。何かあれを足止めできたり倒せたりする手は無いだろうか……。


「あのフォスさん、私提案したいことがあるんですけどいいですか?」

僕が思い悩んでいると、横からダイヤが言葉をかけてきた。

反射的に首を縦に振る。


「その……私が囮になるのはどうでしょうか?」


「囮?それはつまり……、」


「はい、私が身を呈してグリフォンの気を引きます。このまま階段まで逃げてもダメなことくらいフォスさんも分かっているはずです!なら私が出口直前でグリフォンの気を引き、その間にフォスさんが逃げるのがいいかと思いまして。」


「いや、それは……、それに気を引くと言ってもどうやるんだ?それにダイヤだって……、」


「さっき使った魔法をもう一度使います。グリフォンと言えど、あの私の魔法は脅威のはずです。必ず私が魔法を完成させる前に仕留めに来る、そうなればフォスさんが地上に逃げるまでの時間は稼げます!その…私は……きっと殺されます。けど命よりも任務を優先する、それが冒険者じゃないんですか?」

ダイヤは強い意志の篭った瞳で、そう訴えてきた。


冒険者が命より任務を優先する?そんなことはない。確かに冒険者は任務達成のためならどんな汚い手でも使う。けど命を落としてまで……そこまでしてやるような職業では無いはずだ。命を落としやすい職業だからこそ、命を大事にすべき……そうじゃないだろうか。


それに……


「いやダイヤ、その提案は受け入れられない。ダイヤが十分に時間を稼げるとも限らないし、もし気を引けなければ資料ごと僕が死ぬ。それに……これは至極個人的な意見だけど、ダイヤには死んで欲しくない!」


そう言い切って、ダイヤを見つめ返した。

握る手に自然と力が入り、彼女の手を強く握る。


死してでもやるべきことをやる。それは素晴らしいことなのかもしれないし、賞賛されるべきことなのかもしれない。けど、それは騎士団とかがやることで、冒険者には相応しくない。


如何にも、どこかダイヤの言う通り死んでも達成すべき場面と言うものがあるのだろう。けど僕は足掻いてでもその選択肢をとりたくない。

僕は一回死んだ…一つの人生を歩んだ…だからこそ強く分かる。死ぬと言う選択肢は、絶対にとるべきじゃない、僕の愛すべき友達のように。


「そ、そう言われるのは嬉しいですけど…ではどうするんですか?このままじゃ……どうしようもないじゃないですか……。」

ダイヤの頬がほんのり赤みがかったように見えた。見るからに語気が弱くなる。


ただ、彼女の言う通りではあるのだ。このまま出口まで行って、2人まとめて死んでは意味が無い。

ならどうする……このままではダイヤが死ぬ選択を取らざる負えなくしてしまう。


魔法で気を引くとは言え、あの状態のグリフォンにかかればダイヤは一瞬で殺されるだろう。

囮の時間稼ぎが有効打なんて思えない。


ん、ダイヤの魔法……?


先ほどの彼女の魔法は、非常に強力なものであった。あの魔法をもう一度発動出来れば、このどうしようもない状況を切り抜けられるのではないだろうか。


そう考えると共に、自分の頭に妙案が浮かんできた。

確実性はなく、負担も多い。だがダイヤが死ぬよりもずっといい方法のはずだ。


「さっき魔法で気を引くって言ってたよね?ってことは、ダイヤがまたあの魔法を使えるってことでいいの?」

僕は彼女の手を引いて走りながら、ダイヤに確認する。


「一応、魔力的に考えれば、ギリギリですがもう一発は打てます。ですが……何故、このことを?」


「いや、あのダイヤの魔法を使えばグリフォンを倒せるんじゃないかと思ってね。」

僕がそう発言した瞬間、ダイヤが酷く驚いた顔を見せた。


「え、ええ!?いやいやいや、厳しいですよ!確かに強力な魔法ではありますが、今の状態のグリフォンを倒せるかどうか……。それに魔法の準備をする時間もとれません!」


ダイヤは慌てふためくが、彼女の背後を再びグリフォンの魔法が横切った。

地面が揺れ、瓦礫が廊下に飛んで散らばる。

それでも歩みを止めず会話を続けた。


「僕の風属性と土属性の魔法陣を、ダイヤの魔法に加えるのはどうだろう?そうすれば、さっきより威力はとてつもなく跳ね上がるよね。」


何度も言っているが、魔法は他属性が混ざりあうほど、威力が跳ね上がるという性能を持っている。これを利用すれば彼女の詠唱による複合魔法に加え、自分の風属性と土属性、そしてダイヤの光属性を合わせた三属性の合成魔法が可能になるのだ。


だがここで重要なのはただ魔力を合わせるのではなく、魔法陣を合わせると言うことにある。


「そ、それはそうではありますが……、あまりにも無茶です!だってそれは、私の魔法に波長を合わせるってことですよ!そんな高度なことできるわけ……、」

そうダイヤは、言葉を詰まらせた。


一度に展開できる魔法陣の量、それを他者が加えることで超えることが出来る。

そうなれば威力は爆発的に向上は確実。

ただそれは、はいやりましょうとなるほど簡単ではない。


魔法陣と言うのは、様々なバランスにより成り立っている。既に構築された魔法陣にさらに異なる魔法陣を加えるとなれば、バランス調整が必須。

調整をミスれば魔法は崩壊し、魔法が発動しなくなることを意味する。


つまり術者の魔法への知識と、魔力を扱う高い技術が求められるのだ。


さらにこの魔法陣の追加の難しさに拍車をかけるのが、先程ダイヤが口に出した、魔力の波長を合わせなければならないというもの。


魔力はただ流れるだけのように見えるが、実際は血流などと同様に波がある。この波長が合えば合うほど、他者と魔法陣を組み合わせる際、強い効果を発揮すると言う性質を実は持っているのだ。


ただもちろん魔力の波長と言うのは個人によってバラバラ。血脈と違い、ある程度自分の意思で変化させることは可能なのだが、それでも他者と合わせるというのは非常に困難。逆に全く合わなければ、魔法が発動しないどころか魔法陣が爆発なんてことも……。


さらに今の状態ならば、威力のより更なる上昇は必須。

……となればより精密に、波長を合わせる必要があるのだ。

想像を絶するほど、高度な技術である。


「難しいのは分かってる。けど僕は、この方法しかないと思うんだ。無理言ってるのは承知の上で、協力してくれないか?」

僕は頼み込むように、ダイヤの顔を正面から見た。


難しい……そんなことは当然。

だがあの状態のグリフォンに勝つには、それぐらいやらなければ勝てない。それはあの超高火力魔法を見れば、実力が違いすぎることくらい一目瞭然だ。なら魔力量ではなく技術で勝つ。それが僕らのすべきことでは無いだろうか。


「そ、それは……分かりました。けどもう1つの、魔法構築時間の確保。これはどうするんですか?私逃げながら魔法を構築して、さらにバランス調整なんてことできませんよ。」


「それは僕に作戦がある。肩車しよう。」


「か、肩車!?」

ダイヤは僕の予想外の発言に、口があんぐりと開いた。


驚くのも無理はない。これが思いついたとき、どうなんだろうってちょっと考えた。

けど色々思考すると、肩車ほど現状最善のフォームはない。


「とにかく時間がない、頼む!」


「え、あっ、はい!その……重くないですか?」


しゃがんで催促すると、ダイヤは勢いに押されるように僕の肩に足をかけて座った。

グッと力を込めて、立ち上がる。


「全然重くないよ。むしろすごく軽い。」


重いと言うのは流石に失礼なので、無理でもそう言っておいた。

僕はこんなときでも、気が利く人間なのだ。


日本にいた頃であれば100%腰を痛めていただろうが、シルフギルドで死ぬほど鍛えられた体と、魔力を体に循環させることが、この行動を可能としている。


ダイヤが落ちることがないように、土で手を作り出し、ダイヤの体を自分に固定した。

これで僕が全力で走ったとしても、落ちることは無いだろう。


「よ、良かった……って、え!?あ、ありがとうございます。」


「いえいえ。それより魔法陣の調整は、完全にダイヤに任せることになる。波長は僕が合わせるけど、任せられるか?」


「も、もちろん、それは承諾した以上覚悟しています。けど波長を合わせるなんてこと、フォスさんできるんですか?……あっ、だから肩車……」

ダイヤはそこでやっと、肩車の真意に気付いたのだろう。


魔法の波長を合わせる……この高度な事象を可能にする上で体と体の接触は、非常に重要。

肌が触れ合うことで互いの魔力を感じやすくなり、魔力の波長を感じやすくなる。


一度、アニメや漫画のシーンで、協力して強大な魔法を発動するシーンを思い出して欲しい。

そのとき互いに手を繋ぎあったりしてなかっただろうか?

それはこの観点から見れば、非常に理にかなっているのだ。


故に今僕らがしている肩車もまた、互いに体を密着できて理にかなっていると言えると言う訳。


さらに肩車のすごい所は、ダイヤが魔法の準備、そして展開や発動を支障なく行える体制であることにプラスして、僕が走ることでグリフォンの魔法を避けることもできることである。

まさに一石二鳥ならぬ一石三鳥と言ったところか。


「%^#^*%*^%%^!!!!!」


再びグリフォンの声が聞こえたため、肩車したまま強く足を踏み出し角を曲がる。

魔力の塊のようなレーザービームが、またも背後を貫いた。


廊下に響き渡る、轟音と爆風。それでもダイヤは魔法の準備に集中し、僕は魔法陣を展開させつつ波長を合わせるのに尽力を注ぐ。


見てわかるように自分で言い出したことではあるが、実を言うと僕の負担はとてつもない。

グリフォンの攻撃を避けつつ、ダイヤの波長を合わせ、更には魔法陣の構築に、ダイヤの魔法発動に合わせて階段に到着できるようにする時間調整。


明らかにキャパオーバー。けど、これをこなせなければ、ダイヤが死ぬ選択を取らなければならなくなる。

それは嫌だ!その一心で僕は走り続ける。


グリフォンの魔法を角を曲がって避ける。

それを何度も繰り返していると、突如廊下の壁がボコボコに凹んでいることに気づいた。


まるで誰かがすでにここで戦闘していたような跡である。ただそんなことを気にしている暇はない。

そして……とうとう、前方数十メートル先にある階段が目に入った。


ダイヤの魔法は最終段階。どうやら僕の魔法陣との適合も上手くいったらしい。

流石ダイヤだ。時間調整もバッチリ。あとは僕が波長をより合わせられれば完成する。


「え!?ちょっ!?フォスっちたち何してるの!?肩車!?」


階段近くまで来ると、不意に僕らに声がかかった。予想外で驚きながら、声の主を探すと階段付近に黒髪ツインテールの少女が立っていた。

エメラルドである。どうやら彼女もまた地下施設に来ていたらしい。


「ごめん、説明は後!エメラルド、僕らが魔法発動したときに、反動で吹っ飛ばされないように支えてくれない?」


「え!?あ、え?うわ、甲冑の化け物!もう一人とかエグいって!ってあー、なるほどね何となくわかったわ。おけまる!」


エメラルドは突発の頼みにも関わらず、状況を理解してくれたようで、僕がグリフォンに振り返ると同時に肩を後ろから掴んでくれる。

彼女はさらに、反動に耐えられるように腰を曲げ、力を入れて衝撃に備えた。


「フォスさん!いけます!」

エメラルドが肩を掴んだのと全く同じタイミングで、ダイヤが叫んだ。

すでにダイヤの周りには大量の魔法陣が、大量の魔力が循環しており輝いている。

僕の風属性と土族性の魔法陣が加えられていることもあり、その色は虹のように7色であった。


あとは本当に波長を合わせるだけ……、波長が合えば僕の魔法陣とダイヤの魔法陣はさらに互いに干渉し適合して、さらなる高度な魔法陣へと変化させられる。


だが……まずい、時間が足りない。

やっぱりキャパオーバー過ぎたのだ。自分で言っておきながら、未だに波長を合わせられていない。高度で難しいことくらい覚悟して決断した、だと言うのに僕は……、


瞳に映るグリフォンの姿。焦る心。

いつの間にか波長がよくわからなくなり、頭がおかしくなるような感覚に襲われる。


その瞬間……


ダイヤが自身の修道服を勢いよく破った。


「わぉ、ダイヤっちだいた~ん。」


「フォスさん、私の体に手を合わせてください!」


ダイヤは自分の手を掴むと、服が破れて(あらわ)になった自身のお腹周りの素肌に、無理やり触れさせた。


彼女は僕が波長を合わせられていないことを感じたのだろう。

瞬時に機転を効かせた行動。


手と彼女の脇腹が触れたことで、肌と肌の密着面積が増えたことにより、波長がより鮮明に伝わってくる。

合いそうで合わなかったズレが、修正され魔力と魔力が繋がる感覚……


「出来た!」

僕はそう叫んでいた。

ダイヤの魔法陣にありったけの、魔力を注ぎ込む。


ダイヤと僕の魔法陣が完全に合わさり、回転を始めた。

豪風が巻き起こり、僕とダイヤ、エメラルドの髪が激しくバタつく。


「これはシスターダイヤそしてフォスの名の下に神の神罰を与えし一矢の灯火、天たる我らを脅かし悪魔なりし存在を我が弓をもってこの世になさざん者とならざんと!」


詠唱に魔法陣が呼応し、更なる輝きを生む。

そして魔法陣の中から輝かしい光を伴った弓矢が、ダイヤ目の前に現界した。


「++^**%%**%%^*^??????」


そのときグリフォンは初めて気付いただろう。僕らがただ逃げていたのではなく、強力な反撃を用意していたことに。

焦ったように防御魔法を構築しようとする。


だが……もう遅い。


ダイヤはその弓矢を手に取り、弓の弦を思いっきり引き放った。


「天の光咆!」


ダイヤの咆哮のような叫び。


その一瞬……眩い光の線が、グリフォンの漆黒の甲冑を貫く。

そしてその光の線はどんどんと膨張し、廊下を全て包むかのようなレーザー光線のように変化した。


廊下は閃光で真っ白になり、光に遅れてとんでもない爆風が自分たちを襲う。エメラルドが僕らが吹き飛ばないように、歯を食いしばって、必死に支えてくれていた。


そして眩い閃光が徐々に小さくなり……

静寂が訪れた。


ゆっくりと目を開けると、廊下の壁は魔法の跡を描くかのようには丸く抉れている姿が瞳に飛び込んできた。

あまりの高威力に、天井や地面までもが大きく抉れボロボロに剥がれている。


廊下奥の壁には、グリフォンの体をクッキリと表す跡。

漆黒の甲冑はすでにどこかしらに消え、ありのまま黒焦げでボロボロになったグリフォンの姿がそこにはあった。動き出す気配は既にない。


「すいません、私…限界……、」


頭上から声が聞こえてきたかと思うと、ダイヤがぐらりとバランスを失って肩から落ちそうになる。魔力を全力で使ったこともあり、彼女を支える土の手は消えていた。


僕は何とか力を振り絞ってダイヤを支えると、抱き抱えて床に降ろす。彼女はは地面に降りると、力無くバタリと大の字で地面に倒れてしまった。


立つ気力が無いほど、魔力を使い頑張ってくれたのだろう。本当に彼女には感謝しかない。


ただ気づくと、自分もダイヤに並ぶようにバタリと倒れていた。どうやら僕も力を使い果たしていたらしい。

頭がダイヤの腕に乗り腕枕のようになる。申し訳なく感じるが、体を動かすほどの力も湧かなかった。


「フォスっちたち、おつかれ~。いや~波長合わせての大魔法とか凄すぎっしょ!ちょ~興奮したんだけど!」


エメラルドは嬉しそうな笑みを浮かべながら、倒れている僕とダイヤの顔を覗いて来た。

元気そうに振舞っているが、彼女から感じる魔力量が朝に比べてかなり減っている。

彼女もまたかなり頑張ってくれたのだろう。


「あはは、エメラルドもありがとう。いきなり無茶言っちゃって。」


「ん?いや、全然だよ!あの状態で手助けしないとか戦犯すぎるっしょ!それで……フォスっちとダイヤっちはこの地下施設で何をしてたのかな~?」

エメラルドは小悪魔のような笑み浮かべる。何だか可愛らしく見えた。


「それは話すと長くなるけど……、逆にエメラルドはなんでこの場所に?」


「それは地面にあった線を追ってきたに決まってるっしょ!何も言わずに勝手に地下行くとか、うちちょっと怒ってるんだからね!」


「それは……その、ごめんね。」

素直に謝った。誤魔化す意味もないし、そんな気力も僕にはない。

エメラルドの説教は甘んじて受けるとしよう。


そう思っていると、廊下奥から聞き馴染みのある声が聞こえて来た。


「すまない、ガーネット。回復魔法で両腕まで治してもらって……。」


「なんや、そんなこと気にしなくてええで。それより今の音が何だったかの方が気になるやろ!早く行くで!」


その2人の声は、足音と共に少しづつ大きくなっていく。

そして……曲がり角からガーネットとクリスタが姿を表した。

クリスタは肩をガーネットに支えられ、歩くのも困難な様子がみてとれる。


それでも僕らを見つけた瞬間、走って近寄ってきた。

素早く僕とダイヤを両手で抱きしめる。


「フォス、ダイヤ、良かった……生きてて。2人がどうなったのか気になって仕方がなかったんだ。本当に…本当に良かった。


クリスタは既に涙ぐんでいる様子で、笑顔を見せながらも涙をこぼした。

ぽつりぽつりと自分の頬に、彼女の雫が流れ落ちる。


正直言えば、僕はクリスタの様子に驚いていた。

彼女はあまり心からの感情を出す人間では無い。上っ面の感情をコロコロ見せることはあるのだが、これほど心から感動し泣いているクリスタを見るのは初めてだった。そこまで僕らを心配してくれていたと思うと、少し恥ずかしく思える。


それにクリスタがここにいると言うことは、魔王軍幹部に勝ったと言うことだろう。僕も彼女が生きていてくれて嬉しい。もらい泣きしそうだ。

恥じらいからかグッと涙を堪えて、クリスタに声をかける。


「クリスタこそ、良かった。無事で……、」


「なーに、無事では無かったさ。ガーネットがいなかったら私は死んでいたよ。けどそんなことより、フォスとダイヤが生きてくれたことが、心から私は嬉しい!」


クリスタは僕の頭をガシガシと触ってくる。ダイヤも抱きしめられて、何だか嬉しそうだ。

ただ彼女の腕からはいつもに比べあまり力を感じない。それほどにクリスタもまた疲労していると言うことだろうか。


「あー、病み上がりだってのにクリスタ張り切っちゃって……。エメラルドも無事で何よりや。逃げる恥をとるとか言っといて、しっかり倒してるあたり流石やな。」

ガーネットはクリスタに遅れて近づくと、エメラルドの頭を優しく撫でた。


「も~、本当に100回経験したら99回死んでるくらいの奇跡を乗り越えたわよ。こんなんなったんだから、ガーネットが活躍してなかったら、殴ってたかもしれないわ。」


「ガハハハッ、大丈夫やで。道中の研究員全員ぶっ飛ばしたし、クリスタと一緒に魔王軍幹部も倒したんや。十分な活躍やろ。」


「それはそうね……って、え!?魔王軍幹部!?あーあ、あの鎧の化け物といい、めちゃくちゃ。マジでどうなってんのさ。」


「ガハハハッ、ほんまその通りやな。私も全然分かっとらん。ま、帰りの竜車でそこの三人に詳しく教えてもらいましょか。」


「そね。」

エメラルドとガーネットは少し離れた場所から泣き崩れている僕たちを見ると、顔を合わせて笑っていた。


この地下施設で僕は、いや僕らは死にかけた。

もう一度繰り返したら、死んでたんじゃないかと思うほど死に物狂いの戦場。

そんな末恐ろしい場所で、経験したことの無い強敵に出会い、そして勝利を手にしたのだ。


あーあ、生きた感じがまるでしない。あのときダイヤに助けてもらえなかったら僕ごとダイヤとエメラルドも死んでたと思うと、夢にまであの情景が出てきそうだ。

もう二度とこんな経験はしたくない。

あんな強敵一生会いたくもない。


けど、勝てて良かった。

生きててよかった。

死ななくてよかった。


そう心に噛みしめて、僕らは帰路に着くのである。


評価、コメント下さると助かります。

技名間違えてた……ゆるちて。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぶっつけ本番で合わせ技出来るだけでも十分常識外れよねw そりゃチートに比べたらまだ控えめな方ではあるだろうけどw
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