第二十八話 戦闘について⑦
地下研究施設、B棟廊下。
エメラルドは転がる瓦礫を足で払いながら、数メートル先にいる漆黒の甲冑を見つめる。
壁にめり込んでいたこともあり、彼女のツインテールの黒髪には瓦礫の石やほこりがかかり所々灰色に染め上げられていた。
体全身、動かす度に走る痛み。震える体。
それでも両手に握る剣をぎゅっと強く握りしめて、四本の剣を構える。
先ほどの『何か』の攻撃、全くと言っていいほど何も見えなかった。
けど、多分勝ったと思って油断しただけ。
うちは良くそういうことがある。
勝って兜の緒を締めよとは言ったもので、うちは強力な一撃を与えられたり、勝利を確信したりすると、すぐ調子に乗る。そうやって何度危険な目に遭ってきたことか分からない。
治したいとそうは思っているのだが、いつもついやってしまうのだ。我ながら恥ずかしい。
きっとこれからも治んないだろうなーなんて思ってる。
もう本能っていうか……生まれながらの才能っていうか……。
うちが将来、戦闘で死ぬことがあるのだとすれば…きっとそうなったとき。
けど油断したうちは、今生きている。
ならここはうちの死に場所じゃない。
次こそ必ず、見切る。
エメラルドは一度場所を変え…後ろに壁がないように、曲がり角を曲がって長い廊下を背にするようにして迎え撃つ姿勢をとる。彼女の背後には、先ほどまで歩いてきた長い廊下が広がっていた。
「***^#*^+*%>%"*!!」
何度も聞いた、耳障りの悪いキモイ声。
そう思った瞬間、漆黒の甲冑は目の前にいた。
まるでホラーかと思うほどの、一瞬の接近。
剣を振り上げ、うちを今にも斬り殺そうとしている。
驚き動揺する心、それと反射的に動く体。
ただ振りかぶった様子が見えたと言うことは……
見切れる!
エメラルドは両手剣を十字に交差させ、その剣の中心で受けきった。
だが受け止められることは出来ても、凄まじい剣の威力は殺せない。
そんなことは分かっている。だからこそ後方に壁が無いよう陣取ったのだ。
彼女の体は後方に勢いよく吹き飛び、宙を舞う。
それでも体制を崩さず、冷静に、そして華麗に床に着地をした。
「あーまじで強いんだけど、何その威力。けど…うん、まあそうね、うちなら勝てる。」
エメラルドはそう言って、複雑そうな笑みを浮かべる。
後方に吹き飛ばされたこともあり、宙に浮かせている剣がふわふわと自分の場所に近づいてきた。
この浮いている剣は特別で、特性の魔方陣が刻み込まれている。操作系の魔方陣で言ってしまえば、どこにあっても自身の魔力と呼応して思い通りに動かせるのだ。
剣と言うよりかは、もはや体の一部と言ってもいい。ただ厳密にいうと武器ではなくて、ゴーレムとかの使役型魔道物体に近い魔方陣だったりする。まぁ細かいことは気にしない、気にしない。
「*^%^*^^++**^%%%!!!」
甲冑はまたも理解出来ない言語を叫ぶと、大量の魔方陣を体の周りに出現させた。
魔方陣は多くの魔力を含んでいるらしく、紫色に不気味に光る。
そして魔方陣の真ん中から、漆黒の槍先が顔を出した。
「あー次はそっちね~。そっちは、何回ももう見たっての!」
エメラルドは、空中に浮かせていた二本の剣を真っ直ぐ地面に突き刺した。
魔力を流し込むことで、突き刺さった剣を中心とする魔方陣を二つ現界させる。
魔方陣は黄色に輝き、瞬時に雷属性でできた壁を作り出した。
ズドドドドドド!!!
飛んできた槍と、雷の壁がぶつかり合い、激しい爆発音のような音が廊下に響く。
魔力と魔力の衝突は衝撃を生み、舞い上がった粉塵により、視界が一気に悪くなる。
その瞬間、粉塵の中から突如漆黒の甲冑が表れた。
遠距離からの魔法を囮にして、距離を一気に縮めてきたのである。
だが…それは予想がついていた。
あちらとしても遠距離の魔法攻撃よりも接近しての攻撃の方がダメージを与えることに、この戦闘を通して気づいたはず。
それなら、それを活かさない手を使うはずがない。だってうちなら、そうするから!
エメラルドはその一刀を、再び両手剣で受けきる。
ただ攻撃が読めたとしても、やはり攻撃一つ一つの威力が尋常じゃなく受け流すことすら難しい。
砂埃を上げながら、地面を滑るようにして後方に下がった。
彼女のすぐ後ろには、またも壁が現れる。
この地下施設の構造は、長い廊下と何個もの曲がり角で構成されている。
攻撃を受けて後方に下がっていては、廊下の端から端を移動してしまうことは必然。次の曲がり角の壁がすぐに表れてしまうのはどうしようもないことだ。
後ろに壁があっては、『何か』の攻撃を受けた際さっきみたいに体を強打してしまう。
もう一度あの衝撃をくらって立っていられると思うほどの自信は、うちにはない。
骨折して動けなくなるか、衝撃で気絶するか、はたまた両方か……
想像すると寒気がする。
エメラルドは素早く、背を向けないようにしながら角を曲がろうとする。
だがこのとき、どうしても後ろに意識が向いてしまい注意が散漫になってしまうことを、彼女は自分で分かっていた。
あの『何か』も、この瞬間の隙を狙って突いてくる可能性は十分に高い。
この漆黒の甲冑には、底知れぬ魔力と人間離れした身体能力がある。
素早く追撃する能力は十分に備わっているのだ。
そこで先ほどの攻撃をした際、空中に浮かせていた二本の剣を地面に突き刺したことを、エメラルドは思い出す。
本来ならば手元まで戻って来させるところだが……今回はあえてしないことを決めた。
『何か』がもし私を追撃しに来るならば、うちが地面に刺した剣の間を通り過ぎて接近することを意味する。つまり位置関係で考えると、『何か』の後方に二本の剣があるという状況になるはずだ。
ならばその状況を、ふんだんに使うのみ。
「+%**+%#%**+*!!!」
甲冑がまたも叫び声を上げたかと思ったら、案の定再びエメラルドに接近しようと走り出す。
目が慣れてきたのか、走ってくる過程までだんだんと見えるようになってきた。
剣の間を通り過ぎた瞬間を見極め、瞬時に刺さっていた二本の剣を独りでに動き出させる。
エメラルドは角を曲がり、甲冑は剣を振り上げて彼女を斬ろうとする
……その瞬間、
二本の剣は一直線に宙を飛び、『何か』の甲冑の背中に勢いよく刺さった。
多大な魔力がこもっており剣は光り輝いて、大きな衝撃を生む。
『何か』その衝撃が予想外だったようで、大きくバランスを崩しエメラルドへの追撃を諦めた。
大きく傷をつけ、鎧に深く剣が食い込む。
だが予想以上に甲冑が堅すぎて、中まで剣が通らなかった。
「+*%^%%^*++!?」
『何か』は驚いているのか、怒っているのか、良く分からない奇声をあげる。
背中に刺さっていた剣を素早く抜いてまじまじと見つめていた。
そして剣を握り潰す。
バキバキっと剣が潰れる破壊音が、広い廊下に響き渡った。
「うわ、まじ!?それオリハルコン性の超高い一品で、簡単に握るつぶせる代物じゃないんだいんですけど!?あとせっかく頑張って魔方陣の刻印を行った、思い出深い一品なんですけど!まじで引くわ~。」
エメラルドはその隙に曲がり角を曲がって、『何か』から距離を置いた。
後方との距離を測りつつ安全を確認すると、両手剣を構え直す。
彼女にとって二本の剣を失ったことは、何よりも予想外であった。
彼女の戦闘スキルは全て、四刀流が基礎。戦い方もまた、空中に二本剣が浮いている前提で今まで考えてきた。
それを失ってしまったのは、大きな痛手だ。もちろん二刀流でも戦えない訳ではないのだが、相手が相手である以上非常に厳しい。
「+^^*%%^*##########!!!」
発狂するような金切り声の叫び声が聞こえたかと思うと、『何か』は曲がり角を曲がってエメラルドの前方に現れた。
良くは分からないのだが、あの反応は怒っているということなのだろう。
さぞかし後方から予想外の攻撃が気に食わなかったらしい。
甲冑から溢れ出す魔力が、さらに増えている。その圧倒的な迫力に、冷や汗が頬を垂れる。
エメラルドは、手がまたも震え始めたことに気付いた。
それでも自身を鼓舞するように、両手の剣を力強く握り直す。
「大丈夫、うちは勝てる…うちは勝てる…うちは勝てる…。」
そう何度も、小さな声で口にする。それでも、恐怖という感情を拭い切れないでいた。
ここまでの強大な敵に、彼女は対面したことは無かったからだ。
経験が無かった。未知であった。
口では勝てると言って自分を奮い立たせているが、この『何か』を倒すプランは全く思いついていない。
いやあるにはあるのだ……
先に行ったであろうクリスタたちや、ガーネットが戻ってくるまでどうにか時間を稼ぎ、彼女たちを利用して、一緒に仕留める。
けどそれは希望的観測の範疇でしかない。
やっぱり、ここは逃げるべきなのだろう。
ガーネットにも行ったはずだ、『死んでの名誉より、生きた恥を重んじるタイプ』だと。
けれど私には、逃げることさえできる余裕が無い。
「^%%^**^########!!!!」
甲冑が剣を振り上げ、瞬きをする暇もなく接近してくる。
毎度毎度、単調な攻撃の連続。だと言うのにただ威力が凄まじい、ただそれだけで圧倒されてしまう。
数十メートル距離を開けていたというのに、一瞬で接近する存在。
まじで、つくづくふざけだ化け物だ。
エメラルドは、その攻撃も何とかしのぎ切る。
そして、後方に壁が現れれば、何とか隙を見せないように角を曲がる。
背後からの奇襲がよほど心にダメージを負わせたようで、それ以降角を曲がる時に追撃はしてこなくなった。
それを何度も何度も何度も繰り返すことで、どうにか命を繋ぐ。
反撃の術もなく、ただただ守りに徹する。
攻撃を受け、後方に吹き飛ばされるて着地する。その繰り返し。
だが……それを数えたくないほど何度も繰り返したとき、とうとうどうにもならない状況にたどり着いた。
気づくと……すぐ後ろには階段があったのだ。
この階段はエメラルドとガーネットが、地上からこの地下施設に移動するために通った長い階段であった。つまりこれは、廊下の終点を意味している。
攻撃を防いだときに、吹き飛ぶための空間。それを失ってしまった。
まさに色んな意味で、行き止まりである。
ガシャン
ガシャン
漆黒の甲冑が歩いてくる音が、前方の曲がり角から聞こえてくる。
そしてやはり現れた、『何か』の姿。
「**^^%#%^*%%^##%^^^^^^^^」
またも聞き取れない言葉を話す。
だがそれは、少し笑っているようにも聞こえた。
とうとう追い詰めた。そういう喜びが滲み出ているような気がしたのだ。
本当にキモイ。
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい……
けどうちには、どうしようもない。
「あーあ、こりゃぁ参ったわ~。」
エメラルドは、苦笑いをしながらそう言葉をこぼす。
すぐ後ろに階段がある以上、次の接近攻撃を受ければ壁に叩きつけられるのは必至。
だからといって階段を登って逃げる?いや無理っしょ。
あの階段は長く狭い。
『何か』の攻撃を避ける空間も無ければ、走って逃げられる距離でもない。
それこそ本当の死だ。
どうする……、どうする……、
エメラルドは心の中で自問自答する。
この最悪の現状を打破する何か、それを必死に考える。
けど心の中に溢れ出てくるのは、案ではなく恐怖という感情であった。
追い詰められた……、攻撃を受けきれない……、怖い……、殺される……、死ぬ……、死にたくない……。
感情が収まらない。濁流のように止まらない。
気付けばエメラルドは、心の中で叫んでいるようであった。
足が震えて、視界もおぼつかなくなってくる。
けどそれでも……そんな状態だったとしても……諦めと言う言葉は彼女の頭の辞書にはなかった。
エメラルドは剣の持ち手で膝を何度も叩いた。
痛みで精神を強制的に収めて、、膝の震えを無くす。
「+*%%#^^*%^*^%^!!!」
甲冑の男は容赦なく、大量の魔法陣を生み出し、前方空間を埋め尽くすほどの漆黒の槍を出現させた。
魔法を囮に接近し、最後の一撃をエメラルドに刻む。
さっきも見た算段だ。どうやら確実にうちのことを仕留めたいらしい。
「考えろっ!考えろっ!考えろっ!考えろっ!」
エメラルドは叫んでいた。
ここで魔力の壁を生み出し、槍の攻撃を防ぐことは何とかなる。
だが接近攻撃は、もちろん対処できない。
むしろ全魔力を剣に込めて、あの一撃に対抗してみるか?
いやいやいや……そこに魔力を費やすことを考えると、壁を疎かになり漆黒の槍の蜂の巣となる。
ダメだ……、全然浮かばない。
ただでさえきついのに、いつも共にある二本の剣さえ失ったのだ。
戦術プランが全く想起できない。
何かヒントはないかと、今までの戦闘を振り返る。
うちがあれに攻撃を与えられたのは、後方からの奇襲の一回。
あのとき剣は鎧に防がれ、中まで攻撃が通らなかった。
だが、甲冑がなかったらどうだ?
あれほどの化け物でも、ゴーレムなどの類ではなく中身は人間。
そうなれば、倒せる可能性は十分ある。
だが、あの甲冑を剥がす方法などない。では、甲冑の隙間ならどうだろうか?
頑丈とは言え、鎧は鎧だ。
空気を吸うためにも、完全に密閉などということは絶対に無く、必ず穴がある。
後方には階段……階段!?
そこで階段の天井が高いことにエメラルドは気づいた。
これを利用すれば、もしかしたらいけるかもしれない……。
考えつきもしなかった未知の選択肢が……。
『何か』から、漆黒の槍が勢いよく放たれる。
そのとき、エメラルドは素早く階段の入口に入って階段を登った。
漆黒の槍は壁と階段の入口部分に激しく衝撃を与え、一瞬で階段ごと穴だらけにする。
槍の衝撃により、階段は揺れ天井からパラパラと砂利や埃が舞い落ちた。
ただその槍は槍と言えど、それは素材を用いて作られた武器ではなく、魔力で生み出された産物。
漆黒の槍は煙のように消えて無くなり、ボコボコに空いた穴だけが残った。
「**%%%^^%^^***%%%^??????」
甲冑の男は素早く接近して、エメラルドに剣を振るおうとする。
だが、すでにそこに彼女の姿は無かった。
不思議に思ったのか階段の入口に入って、階段を見上げる。
すると微かに空の明かりが届くだけの長い階段が広がっていた。非常に暗く、階段を人が登っていたとしても見えない。
この階段を登って逃げた?
その予想が、『何か』の頭の中によぎった。
「*^%#%**%^**+!!!!」
『何か』は金切り声をあげて魔法陣を展開し、漆黒の槍を階段先の空に目掛けて発射する。
だが手ごたえは無かった。
何故ならそう、エメラルドは階段にはいなかったからだ。
エメラルドは階段の高い天井に張り付いていたのである。
蜘蛛のように張り付いて天井から、階段に入ってきた『何か』の様子を伺っていた。
彼女の扱える属性は、特殊属性である雷属性。
だからこそ落ちることなく、壁に張り付くことを可能にしていたのだ。
両手足と剣に雷属性の魔力を大量に流し込みつつ、完全に気配を消す。
彼女は冒険者だ。冒険者とは魔物を狩るのが一番の本業。
ならばこそ気配を消すことは、日常茶飯事であり長年の技術と経験がある。
どれだけ慌ててようと、エメラルドは気配を消すとなれば途端に冷静になれた。
「+*%^*^^^!??????」
『何か』は完全にエメラルドを見失い困惑していた。
その瞬間……
エメラルドは天井から飛び降りると、『何か』の肩の上に飛び乗った。
自由落下した体重が、甲冑の男の肩の上に勢いよく乗り、その衝撃は容易に『何か』を怯ませる。
だが、それでも鎧が膝を着くことは無かった。
圧倒的な身体神経と魔力……それが転倒せずに直立させることを可能にした。
そして、それはエメラルドにとって作戦通りに物事が進んだことを、決定させる瞬間でもあった。
倒れないからこそ、彼女は存分にバランスを考えず行動できる。
「甲冑は硬いけど、中に直接攻撃したら流石に厳しいっしょ!」
エメラルドは手に持っていた一本の剣を、甲冑の首部分に勢いよく刺す。
酸素が通る、気道の穴。普段それは頭の兜と胴の間にあり、表に出ることは無い。
だが彼女の一本の剣が隙間に引っ掛かり、気道の穴がエメラルドの瞳に写った。
『何か』はその瞬間、エメラルドが何をしようとするのかを理解した。
どうにか彼女を、肩から降ろそうと暴れ回る。
だが、すでに遅かった。
エメラルドの手際の良さは、その隙すら与えてくれなかったのだ。
「おりゃぁ!!」
エメラルドのもう一本の剣が、空いた首の隙間に勢いよくぶっ刺さる。
剣は雷属性の魔力を十二分に含んでおり、激しく閃光を放っていた。
バリバリっと耳が痛くなるほどの大きな音が轟く。
「+%%+%^**%%%***##^^^*$!?!?!?!?!」
『何か』の絶叫が階段に響いた。
首から大量の血を吹き出すと共に、『何か』の体は電気によって激しく痙攣する。
そして、肉の焼けるような匂いが、エメラルドの鼻をツンと刺した。
だが……どうであろうと、彼女は容赦なく電流を流し込むのを止めなかった。
数秒後『何か』の体の痙攣が止み、バタンと階段に倒れた。
エメラルドは怪我をしないように、素早く肩から降りて着地する。
絶命したのだろう。呼吸が途絶え、ピクリとも動かない。
魔力で生成していた漆黒の甲冑は消え、『何か』からの禍々しい魔力の気配が途絶える。
そこに倒れていた人間。それは年端もいかない少年であった。
そう、エメラルドはこのとき始めて知ったのだ。
あれほどにも禍々しく脅威と思っていた『何か』が、少年であったということに。
「嘘……。」
エメラルドは一言、小さな声でそう呟いた。
少年は既に丸焦げになっており、べったりと服が体にへばりついている。その服は、奴隷が良く来ている薄い麻の布地一枚だけであった。
熱されて湯気が出ており、その少年に触ることすら難しい状態。
「あーもう、恨まないでね。あなたの命分まで、うちが精一杯生きてあげるから。」
エメラルドは、熱いにもかかわらず両手で少年を抱き上げると、階段入り口の廊下の端に寝かせた。
ちょっと色々ありすぎて混乱しているが、今はクリスタやガーネットたちが気になる。
生憎魔力はまだ残っているし、少しくらいの戦闘ならまだ問題はなさそうだ。
四刀流でなくなったという、大きなペナルティは背負っているが……。
「ったく、奴隷がこんなんになってるって、この施設はマジでどうなってんのよ……。」
エメラルドは、そうつぶやく。
前に広がる長い廊下を見据えながら……。
読んでいただき感謝申し上げます。
評価感想等頂けると、モチベに繋がります。
この作品はそのキャラによって、使う技のネーミングにコンセプトがあります。
そこまで気付いていたのなら、目から鱗。




