第二十話 魔力について⑨
クリスタの迫真の演技により、無事に地下施設の研究資料を見つけることができた。
クリスタとダイヤ、そして僕は煩わしい白衣を脱いだ後、その資料を食い入るように見る。
その資料を読み取ると、どうやら僕らの見たあの恐ろしい実験は『魔族因子の適応実験』と言うものらしい。その実験はこの施設の核となるような重要な実験で、この地下施設もこの実験を秘密裏に行うためのものであったと記されていた。
魔族因子と言うのはカイヤの修行の際に言ったと思うが、魔王軍に所属する全ての種族が生まれながらに持っているものである。
じゃあ因子って何?って話になるかと思うのだが、因子とは言ってしまえばDNAのようなものに近い。
生き物は生まれながらに特定の因子を持っており、この因子が魔力の属性に大きく関わっていると言われている。一般に魔王軍は皆闇属性を扱えることから、この魔族因子と言うのは闇属性と深い関わりのあるもの何だとか。
そんな因子を無理やり変えたり加えたりすると生き物はどうなるのか……、それがあの実験の根本だろう。
「因子を無理やり入れるだなんて、非人道的すぎます!ありません!」
「そうだな。だが……因子があの不気味な注射を刺すだけで加えられるものなのか?」
「一応、この資料によれば可能なようだね。作り方や中身は記載されてないけど。」
資料のページをめくると、次の記述が書いてあった。
『この実験は魔族因子を打ち込むことで、生き物全ての魔族化を図ることを目的として行うものとする。』
人類魔族化計画。まるで人類補完計画みたいな雰囲気では無いか。
帝国軍の人々がこんな目的の実験を行うとは僕には思えないのだが。
次のページからは、この実験の結果と現状が記されていた。
『魔族因子の持たぬものに、適応するように改良された魔族因子βを打ち込むと、魔力量に異常が発生し倍増することが発見された。ただ適応する生物は少なく、ほとんどの者は魔族因子に拒否反応を示して体が爆発する。適応者の共通点を見つけるべく、ここからは大量の被検体に魔族因子βを打ち込み、改良に努めるべきだろう。』
気になる要素が多くある文言ではあるが、何よりも僕が気になったのは『魔力量に異常が発生し倍増する』と言う記述だ。これはまさに、カイヤの身に起こった現象に酷似している。
カイヤはこの研究の関係者?いや、カイヤにこの研究施設を訪問すると伝えたとき、これといった反応を一切見せていなかった。彼女がこの研究を知っていたとは考えにくい。
疑問と不安を抱えながら次のページをめくるとそこには、びっしりと人の名前が記載されていた。それがそのページだけでなく、何ページにも渡って記載されている。よくよく見ると、名前の横に性別や身長体重、適正魔力属性……他にもその人の情報と思われるものが小さい文字で、こと細かく記載されている。そして大きく強調するように書かれた×の記号。
察するにこの×印は、魔族因子に適応しなかったことを意味しているのだろう。
これほどの人数が、この実験によって犠牲になっている訳だ。エグすぎる……。
「これは……100人なんてくだらない程の人数ですよ!こんなに多くの人が命を失っているなんて……、この実験を考えた人は頭がおかしいです!」
「そう取り乱すな。ここに記載されているほとんどは奴隷だろう。ただ、奴隷じゃない人間もかなりの人数いるよだがな。貴族の子供に、貧民街の住人、そして冒険者まで……、この人数が同意で実験を行ったとはとてもじゃないが考えにくい。」
クリスタの言う通り、実験の被害に合った人間は少なくなく奴隷だけに留まってはいない。人体実験は違法ではあるが、技術の成長のために奴隷を使うのはしょうがないと…そう考える風潮がこの世界には根付いている。
しかし奴隷では無い一般人が巻き込まれているようならば、この実験は大変な違法性を持つことになるだろう。この実験の管理者や、所長のカルは死刑宣告されても不思議じゃない。
あんなにも酷い実験を行ってたのだ、しっかりと罰を受けて貰わなければ困る。
被検体リストのページをパーッと目を通しながら、ペラペラとめくっていく。
ほとんど全てが×印なのだが、微々たる人数○印が書かれている者がいた。
最後のページ付近の○印、その名前に僕は見覚えがあった。
「おい、フォス。これ……、」
「はい……、カイヤですね。」
『カイヤ・ナイト』と、カイヤの本名がそこに記載されていた。まさか……と言うよりはやはり……と言った方が適切だろう。
実験結果がカイヤの身に起こった変化に酷似しすぎていた以上、彼女がこの実験に関わりがあるのは自明の理だ。ただ彼女はこの施設の関係者ではない。
そうなると……、彼女はどこかこの施設外の場所で注射を打たれたことになる。
だが……もしそうであったならば、カイヤ自身が注射が原因で莫大な魔力が発現したと思うはずではなかろうか?
あんなどす黒くて禍々しい注射、普通刺されるとなれば違和感を感じるのが当たり前である。しかしカイヤは、魔力が発現した原因は魔物を生で食べたからだと誤解していた。
あんな注射を打たれたならば、生うんぬんより先に注射が原因かもしれないと言ってもおかしくない。
けれど彼女からは注射のちの文字すら、聞いたことは無かったのだ。
ここから予想できることは、カイヤは注射されたことを認知していない、もしくは全く気にならないほど自然に注射をされた……のどちらかということになるはず。
寝ているときに注射されたのなら気づく訳もないだろうし、医療行為と言われれば気にならないかもしれない。
ただ……何故カイヤなのだろうか?そこがつい引っかかってしまう。
被験者はほとんどが奴隷で、カイヤのような奴隷ではない一般人の数はとても少ない。この施設があの実験を進めていく上で、一番経費が安く得られるのは奴隷の子供だ。だからさっき見たように、奴隷の子供が実験の被験者に多いのだろう。わざわざ一般人を被験者に選ぶ必要性は極めて低い。
けれど、カイヤは被験者に選ばれてしまった。カイヤ以外にも貴族の子供や、貧民街の人々、他の冒険者も選ばれて……
!?
ちょっと待てよ。
よく見ると、奴隷の次に多いのは冒険者じゃないか。
これは偶然か?いや、何か共通点があるはず。
被験者に選べれている冒険者一人一人を見つけ出して、じっくりと詳細を見比べる。
僕はそこで信じられない共通項を見つけてしまった。
「クリスタ、被験者になっている冒険者の所属ギルドを見てくれ。」
「所属ギルド?そこまで書いてあるのか。文字が小さすぎて読み辛いのだが……、えーとグリフォンギルド…グリフォンギルド…グリフォンギルド…って、あれ。被験者になっている冒険者は全員グリフォンギルドに所属していたのか。」
クリスタそこで初めて、驚いたような顔を見せた。被験者リストに記載されている冒険者は漏れなく全員グリフォンギルド所属になっていたのだ。
「まさか、グリフォンギルドがこの実験の被験者を提供しているんですかね。確かに、冒険者なら不自然な死は珍しくないですけど。」
「グリフォンギルドはサラマンダーギルドの管轄のはず。冒険者が死んだ場合はサラマンダーギルドに報告する義務が生じているはず……だが、不自然に人が減っても魔物に殺されたと書いておけば疑われないだろうな。」
クリスタはダイヤの言葉に納得の様子で、あごに手を当てて感心している。
これで真相が見えてきた。
カイヤに注射をした人物は、キンググレートボアの一件で疲れ切っている彼女に面会ができる人物であり、隣にいたとしても気にならないほどカイヤが信用している人物。
それでいて非人道的実験をグリフォンギルドの冒険者に行っても怪しまれることが無く、サラマンダーギルドへの報告書も自由に書き換えることが出来る権力の高い人物だ。
この条件に当てはまる人、僕はその存在を一人しか知らない。
……っとその瞬間
ガチャっと、扉が開く音が聞こえた。
部屋に入って来た人影は、体格が大きくがっしりとした肉体をしている。
首から下は人間と相違ない体形にも関わらず頭だけ鷲にそっくりで、上半身が裸の男性。
彼こそが……カイヤに注射を打ち込み闇属性魔力を発現させた人物。
そう……グリフォンギルドのギルドマスター、グリフォン。
「む!?シルフギルドの冒険者が何故ここに!?施設調査は来週の予定のはず……いやそれ以前に何故この場所に彼らがいる!?」
グリフォンはよほど僕らがいたことに驚いたようで、かなりの動揺が窺える。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。いやこの場合は鳩ではなく鷲か。
「やあ、グリフォン。聞きたいことが色々とあるが、何故この場所にいる?ここは何年もの間隠蔽され続けてきた、地下施設だぞ。」
クリスタは嘲笑するような笑みを浮かべて、グリフォンにそう問いただした。
「え!?あっ、いや……わ、私もこの施設の調査をしている所なのですよ!何とかここまで辿り着きましたが、私より先に証拠を見つけたんですね、それは良かった。さあ、その書類を私に渡してください。今すぐ一緒にこの地下施設から抜け出して、騎士団に報告しに行きましょう!」
「はははっ、猿芝居はよせ。君がこの施設の関係者であることは既に割れてるぞ。それとも、滑稽な様を見せて私たちを笑わせたいのか?」
クリスタの挑発で、グリフォンの目つきがガラッと変わる。僕の知っていた優しそうな顔ではなくなり、人を殺しそうなほど殺気じみた顔だ。
「なるほど、そうですか。ふっ、これはこれは一本取られましたね。まさか私の愛すべき研究がばれてしまうとは。」
グリフォンは僕らを舐めるように見た後、部屋の中を見渡す。
そして彼の目線はクリスタの近くで伸びている眼鏡の研究員に止まった
「なるほど、その研究員を利用してこの部屋まで来たのですね。脅迫でもしたのですか?世界4大ギルドの冒険者とあろう者がなんと非道なことを。私はシルフギルドに尊敬の念を抱いていたと言うのに、失望しましたよ。」
「失望?それは私の言葉だな、グリフォン。ギルドマスターともあろう者がこんな非人道的実験に手を貸すとは。それも信頼すべき自分のギルドの冒険者を被験体にするなど以ての外だ。」
「非人道的実験ですか。人体実験ぐらい魔法の進歩のためには、しょうがないことではありませんか?この偉大なる実験を理解できないとは……、白金等級が聞いてあきれますよ。」
グリフォンさんは、まるで何の悪気もない様子でそう喋る。
どこか信じたくないところもあったが、どうやら逃れられぬ真実のようだ。
「グリフォンさん…いや、グリフォン。一つ聞かせて欲しい。カイヤに注射を打ったのはあなたなのか?」
僕は手を強く握りしめて、そう彼に質問する。
「まさか、フォスさん。あなたまでここにいるとは。私はあなたに感謝しているのですよ。あなたのおかげで貴重な魔族因子適合者を失わずにすんだ。そうですね……、その質問に答えるならはいと言いましょうか。」
その言葉を聞いたとき、僕の心の中がひどくざわめいた。
カイヤはずる賢くて目的のためなら手段を選ばない性格ではあるが、可愛いところもあって、修行では自分に必死について来てくれる。僕のことを尊敬してもくれて、嘘をついたりされたも何だかんだ許してしまうような……そんな存在なのだ。
他ギルドだし知り合ってからあまり時が過ぎていないかもしれないが……それでも僕はカイヤのことを仲間だと思っている。
そんな仲間を殺そうとした存在を目の前にして、僕は冷静ではいられる気がしない。
「そうですか。なら、僕はあなたのことを……一生許しません。」
「許さない…ですか。それでしたら私も、フォスさんに許せないことがあるのですよ。あなたは最近カイヤの師匠になって修行をつけているそうじゃないですか。おかげでシルフギルドに行った後、彼女はグリフォンギルドに帰ってこなかった。私、必死に彼女のこと探したんですよ。それなのにあなた方が匿っていたせいで全然見つからず、ずっとシルフ街にいたことが分かったのが数日前。到底許せることではありませんよね。」
別に彼女を匿っていたつもりは無かったのだが……。修行の際に自然と人目のない場所でおこなっていたので、それが良い方に働いたと言うことだろうか。
グリフォンはそのまま話を続ける。
「全く……解剖対象になる前にわがままの一つ聞いてあげようと思って、シルフギルドに連れて行ったのが間違いでした。まあ、それも今日で終わりですが。」
「解剖対象?グリフォン!お前はカイヤを解体するつもりなのか。」
「む?もしかしてその資料の最後のページを読んでいられないのですか?魔族因子適応者は、解剖実験を行ってより研究に役立てることが決まっているのですよ。」
そう言われて、資料の最終ページを素早く開く。
するとそこには確かに、次の記述があった。
『魔族因子適応者は適合成功体一番を除いて、解剖を行いより正確に身体的特徴の情報を得ることにする。成功体二番から七番はすでに解剖済み。成功体八番は施設B棟106研究室で拘束監禁するものとする。成功体九番は確保次第、解剖対象とする。』
グリフォンの言っていることは間違いないらしい。しかしこうなると言うことは……
「その成功体九番こそ、君の弟子であるカイヤのことだよ。今、私の部下が適合成功体のいるシルフギルドに向かっている。いや、もう着いた頃だろうな。じきにカイヤも回収されて解体される。」
「嘘……だろ?」
カイヤがこんなふざけた実験で殺されるだと……、そんなこと絶対にさせない。
させるわけにはいかない。
だが……僕には何ができる?今の僕では何もできない。
ワープでもできたのなら、今すぐにでもシルフギルドに帰りたい気分だ。今の時間は昼過ぎ…シルフギルドで、アズが魔法を教えている時間である。
せめてアズにこのとこが伝わればいいのだが……、そんな手段も僕には用意されていない。
カイヤの命を救うために僕は、アズが異変に気付くことを祈るしかできないのか。アズは感が良い奴だから何かに気付く可能性は十分にある。
ここは一先ずアズを信じて、このグリフォンを捕縛するのに集中するか……くそっ。
頼むアズ……、カイヤを守ってくれ!
「さてさて、無駄話もこのくらいにしようかね。その資料を見た時点で君たちを生きて返すことはできない。潔くここで死んでもらうとしよう。白金等級冒険者に金等級と銀等級が一人ずつ、どうやら私だけでもどうにかなりそうだな。」
「おいおい、何かの冗談か?シルフギルド副ギルドマスターである私も舐められたものだな。」
「ははっ、確かに戦いの技術や経験は私の方が劣るかもしれないが、これがあるのでな。」
グリフォンがそう言った瞬間、彼の体からおぞましい程の闇属性の魔力が溢れ出てきた。反射的に戦闘態勢をとってしまうほどに、圧倒的な迫力。
それはまるで、カイヤから感じる魔力のようであった。
「その資料を注意深く見てもらえば分かることだと思うが、魔族因子適応実験の適合成功体一番は私のことだ。ギルドマスターになる前の名前が書かれているから、気づかなかったとは思うが。魔族因子が刻まれたことで発現した、この膨大な魔力量。存分に使わせてもらう。」
グリフォンはそう言って愉快そうに笑って見せた。
カイヤはこの魔力量を使いこなせてはいなかったが、使いこなせるとなればかなりの脅威だ。
だが……彼は大きく誤解していることがある。
白金等級冒険者とは数多いる冒険者の頂点であり、畏怖される存在。その実力を甘く見積もりすぎている。ましてや世界四大ギルドであるシルフギルド所属の僕とダイヤがいるのだ。
「ダイヤ、やれ!」
クリスタはグリフォンの莫大な魔力を見て、瞬間的に指示を飛ばす。
「はい!光束せよ、天の鎖!」
ダイヤがそう叫ぶと彼女の足元に何個もの魔方陣が展開され、光り輝く鎖がグリフォンに向けて勢いよく飛び出して行った。そしてグリフォンの体を、一瞬にして縛り上げる。
特殊属性の光属性魔法。それでいて魔法陣と呪文の複合魔法だ。
かなり高度な技術を要求される、強力な拘束魔法。
「ほう?光属性の複合魔法を使うとは驚きました。光属性は闇属性に相性が良いなんて論文も目にしたことがあります。ですが……この程度では私は拘束できませんよ!」
グリフォンはそう言うとダイヤの拘束魔法を無理やり引きちぎろうとする。
あの莫大な魔力に加え、鍛え抜かれた肉体。ダイヤの魔法がいかに高度な魔法と言えど、彼を拘束するのは難しいだろう。だが魔法が解除されるのを何もせずに傍観するほど、僕とクリスタは優しくはない。
クリスタの風魔法と、僕の風魔法がグリフォンに向けて放つ。
風魔法は瞬時に台風のような風の渦巻きを作り出し、グリフォンを包み込んだ。
ダイヤの光魔法と混ざり合うこで、ダイヤの拘束魔法は合成魔法へと変化を遂げグリフォンを力強く締め付ける。
「ぬうううう、何のこれしき……、くそ!解けん!これだけの魔力をもってして解こうとしているのに、どういうことだ!」
グリフォンは怒りを露わにして、僕らを鋭い目つきで睨みつける。
いきりちらしていた割にはあっけないものだ。
「君が牢屋にぶち込まれる前にアドバイスをしてやろう、私は君のように魔力量に恵まれ、才能があると言われた多くの冒険者を多く見てきた。ただそいつらのほとんどは、私よりも先に死んでいった。何故か分かるか?自分の力を過信しすぎたからだ。」
「ぐぐっ…私が力を過信していると言いたいのか!」
「そうだ。君みたいな奴らは皆、魔法は魔力量のみでどうにでもなると思いがちだ。だがそれは全く違う。魔法とは魔力だけでなく、魔方陣の形や組み合わせ…そして複合魔法に合成魔法と無限の可能性を秘めている。日々精進して慢心せず、魔法に対して研究を欠かさない者だけが強くなり、生き残っていけるのだ。そうでない自分自身を顧みて、恥を知れ。この戯けが。」
「クソがあああああああああっ!!」
グリフォンが絶叫ともとれるような大声を張り上げた。
クリスタの言うことは最もなのだが……正直僕にもその言葉は刺さる。研究をサボってぐうたら生きてきてすいません。
「さて、負け犬の遠吠えは聞き逃すとして、この資料を持ってギルドに帰還するとするか。これがあればこの施設の違法性は十分に証明できるだろう。こんな気味の悪い場所、さっさと出て……、」
クリスタがそう言いかけたとき、
ガチャっと再び、ドアの開く音が聞こえた。
その瞬間、部屋の中の空気が一変した。
クリスタを含め、僕ら三人が反射的に戦闘態勢になる。
気配で感じるのだ、
これはヤバい……。
「あ!?資料取ってきてって言ったのにいつまで経っても帰って来ないと思ってたら、このあほんだらぁ!なーに捕まっちゃってくれちゃってるのよ、べらんめえ。」
入って来たのは、中学生にも見えるような幼い少女だった。サイドテールの紫髪で、カシュクールワンピースを着ている。見た目だけならただの幼気な少女にしか見えない。
だが……この気配はただ物ではない。
身が震えるような禍々しい魔力に、圧倒されるほどの迫力。
その少女がいるだけで、グリフォンが霞んで見えてしまうほどの存在感。
どれをとっても、明らかに普通の研究員ではない。
その少女は魔弾を生成したかと思えば、グリフォンの拘束魔法を一瞬にして破壊した。
拘束から放たれたグリフォンはそのまま、少女に膝まづく。
「アメトリン様!申し訳ございません!私が実力不足なばっかりに、偉大なアメトリン様の手を煩わしてしまうとは……。」
「あーはいはい。もういいから頭を上げな。そう言う暑苦しいのあたいうんざりだから。」
少女はそう言ってグリフォンに煙たい様子を見せると、僕らに体を向き直した。
「へー、白金等級。中々の大物がこんな場所にいるとはね、おったまげた。おめえは何て名前だ?」
「シルフギルド白金等級冒険者、クリスタだ。君こそ何者だ?明らかに、そこらの輩とは格が違う。」
「格?へえ、やっぱ分かっちまうもんか。あたいの名前はアメトリン。ダークフェアリー族の族長にして、魔王軍幹部12人が一人だ。」
少女はそう言って、ニヤッと微笑んで見せた。
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