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第十八話 魔力について⑦

天気は曇り。朝だというのにどんよりとしていて、雨でも降ってきそうな天気だ。

何だか気分が乗らない天気ではあるが、僕は嫌いではない。

晴れていれば暑すぎるし、雨であれば体が濡れて体温が下がる。その中間である曇りは暑すぎもせず寒すぎもしない、人間が活動する上でこれ以上にないほど完璧な環境を作ってくれるのだ。


竜車から降りて、グーっと体を伸ばす。

目の前に広がるのは、山深くにある大きな建物。

これほどの大きさだというのに外目から見れば、木々に遮られ建物があることにさえ気づかない立地環境。今までにこの施設が見つかって無かったのも納得できる。


僕に加えてクリスタ、ダイヤ、エメラルド、ガーネットの5人が研究施設の門の前に並ぶようにして立つ。


昨日は夜深くまで、クリスタの王様ゲームに付き合わされた。本当に大変だった、2度とやりたくない。だが苦労した分ダイヤやエメラルド、そしてガーネットとも一層仲良くなれたように感じる。まさにクリスタの思い通りと言ったところか。


「フォスさん、どうです?昨日の疲れとか残ってますか?」


「いや、それが不思議と疲れが全くないんだよね。」


「あ、そうですよね!私もそう思ってたんですよ!あの王様ゲームは、その…色々疲れたはずだったのですが……。」


「フォスっちとダイヤっちもそう思う?うちもマジで疲労皆無なんだよね!やっぱこれ、ベッドのおかげっしょ!」


確かに、竜車の椅子兼ベットはめちゃくちゃふかふかで寝心地が良かった。朝起きたときにクリスタに抱き着かれていたのだが、気づかないぐらいには熟睡していたのだ。

やっぱ竜車って最高。馬車に比べて高額な訳はある。


「ガハハハッ、3人とも竜車で寝泊まりするのは初めてなんか?そら、ビックリするわな。」


「竜車のベッドは特別だからな。さて…、全員元気なようだし、さっそく調査突入としゃれこむか。」


「せやな。ほら、3人とも行くで~。」


クリスタとガーネットに続くようにして、僕らは研究所の門をくぐる。

さっそく建物の中に入り玄関を通過すると、禿げている50歳後半くらいの男性が奥の方からこちらに向かって走ってくるのが見えた。


「ちょっと!冒険者様方!」

彼はそう言いながら激しく息を乱している様子であった。中に入っていこうとする僕らに追いつき、遮るように前に立つ。


「はぁはぁ、冒険者様方お待ちください……。」


「騒がしいな。君は誰だ?」


「わ、私はこの闇属性魔術研究所所長カルと申します!」


「ほう、君がこの施設の所長か。それで、用件はなんだ?調査時間は限られているのだ。手早く頼むぞ。」


「い、いえ用件と言うか、その…日時を間違えておられませんか?調査依頼の申し込みは来週の手はずになっているはずなのですが……?」


日時を間違えた……?クリスタやギルドマスターがそんな初歩的なミスをしたとは考えにくい。

それに竜車で見せてもらった依頼の紙には確かに、今日だと書いてあったような気がする。


「日時を間違える?何を言っているんだ。この調査書を見ろ、今日の日付になっているだろ?」

クリスタは動揺する様子も見せずに依頼書を男に見せる。


「なっ!?おかしいですね……私たちがもらった調査書には、確かに来週だと…。」


「もしかしたら連絡ミスがあったんかもしれんな。けどこの依頼書にあるように今日が調査日や。」


「そ、そんな…こちらにも日程と言うものが……。」


「なんや?今日調査されたら、まずいことでもあるんか?あかん実験の証拠を隠してないんとかな。」

ガーネットは脅すような声色で、その男に迫る。


クリスタやガーネットがさぞ当たり前のように対応している状況から察するに、これは意図的に伝える日程をずらしたっぽいな。

学校での抜き打ち持ち物検査…みたいなやつだろう。ギルドマスターが急ぎで僕らを行かせたのも、情報が盛れるのを防ぐためだったと納得が行く。

しかし…この作戦を提案したのがクリスタかギルドマスターかは分からないが、考えたやつは中々に人が悪い。


「い、いえ、そんなことは全くありません!……わ、分かりました。しかし、私が同伴と言う形にさせて下さい。


「同伴だと?」


「はい。この施設では最先端の研究をしています。情報漏洩の観点から、世間にまだ公表すべきでない研究も多くあるのです。もちろん調査を拒むつもりはありません。ですが、調査の報告書に書かれては困るものもある……ですので私が同伴と言う形で、公開していい情報か適宜伝えたいのですが、どうでしょうか?」


「……分かった。私たちが理解できない研究も多くあるだろうからな。その変わり、私たちの質問には全て偽りなく答えてもらうぞ。もし嘘をついたら…分かってるな?」


「は、はい!もちろんです!よろしくお願いします!」


カルと言う名の男はそう言って、僕らに頭を下げた。

施設の中を照らすの光が彼の禿げた頭に、反射して光っている。眩しい……、これが太陽拳か……。


こうしてこのカルに説明させながら、施設の調査が始まった。


調査と言うことで、施設のどこを調べてもいいということらしい。一つ一つの部屋を隅から隅まで、しっかりとおかしなことがないか調べる。

そこで、僕はこの研究施設に圧巻された。


最新の設備に見慣れない機械。闇属性魔法に関する大量の資料。多くの研究員がおり、皆が生き生きと研究に勤しんているのである。

おかげで午前の調査だけで、多くの闇属性魔法に関する知識を得ることができた。最新の闇属性魔法における魔法陣の形、組み合わせによって得られる効果などなど、どれもカイヤの修行に活かせそうなものばかりである。


想像以上の収穫と触れたことない多くの知識に触れ合った僕は、気付かないうちにかなり興奮してしまっていたらしい。おかげでガーネットに「フォス、ちとソワソワし過ぎやで!」と注意されてしまった。

ちょっと恥ずかしい。


あとはカイヤの魔力の発現理由さえ分かれば、僕の個人的な目的は完全に果たせたと言えるのだが、もちろん調査本来の目的も忘れてはいない。


だが……午前の調査では、残念ながら怪しい情報や証拠は一切手に入らなかった。

カルが何か隠すような仕草をするのかと思いきや、それも全くない。


騎士団が何度も調査しているのだからそれは当然と言えば当然なのだが、わざわざこんなにも豪華なメンバーで調査をしているのだ。それに調査を漕ぎ着けてくれたクリスタのためにも、何か一つくらいは証拠を掴みたいものだ。


結局、皆あまり浮かばれないような表情を浮かべながら、食堂で昼食をとることとなる。


「何も見つからないとか、うちめちゃショックなんだけど。確かに見つからないのが普通だけどさー、わざわざ施設隠蔽してたのに何もヤバいことやってないとかマジありえなくない?」


「そうですね。何も無いどころか、逆に私たちが勉強しに来たみたいになってしまってますね。」

ダイヤはエメラルドに返答し、小さくため息をつく。


「まー、まだ午前やしな。午後もあんま重く考えずに気張っていこうや。」


皆そんなことを言いながら、食堂の食事を口に運んでいる。食べ物の味は、良くも悪くも普通って感じだ。美味しいとも思わないけど、不味いわけでもない。

ただこの食事をこの研究所の研究者はずっと食べているのかと思うと、ちょっと勘弁して欲しい。


パパっと食べ終えてふと周りを見ると、クリスタと目が交わった。

どうやら既に食べ終えたようで、前の皿が空になっている。

クリスタは唐突に席を立つと、僕の傍にまで歩み寄って来た。


「ちょっと花摘みにでも行ってくるかな。フォス、一緒にどうだ?」


彼女はいきなりそんなことを、僕に言ってきた。

花摘みとはトイレの隠語である。

こいつはまだ食事をとっている人がいると言うのに、何を言い出しているのだろうか……


「えっと、何で僕ですか?と言うか男女で連れションって……。」


「おいおいせっかく濁して言ったのに、ダイレクトに言うなんてフォスは品がないな…全く。」


「いきなり花摘みを誘って来るクリスタに、そんなこと言われたくないですよ。」


「ほう?言ってくれるじゃないか。フォスはどうせ食べ終わって暇なんだろ?なら一緒に来てくれても良いじゃないか。」


彼女はそんなことを言いながら、僕の頭を撫でて催促してきた。何故頭を撫でてきているのかは分からないが、確かに言われてみると僕もトイレに行きたいかもしれない。

不本意だが、彼女の誘いに乗ることにしよう。


「はぁ、分かりました。」

僕はそう言って小さく息を吐くと、席を立つ。


「まさか…一緒に女子トイレに入るとか言わないだろうな?」


「言う訳ないじゃないですか!」


自然と少し大きな声が出てしまった。恥ずかしいのでさっさと食堂を出ようと、クリスタについていく。すると、不意に後ろから裾を引っ張られた。


クルっと振り向くと、目の前にダイヤの顔があった。

思いがけない距離の近さに、反射的にたじろいてしまう。


「あ、あの待って下さい。私も行きますから。」


彼女はそう言って、僕とクリスタの後を追いかけてきた。

まさかダイヤまで連れションをしようと言うとは、少し驚きなのだが……、


「御3人方、どうなされました?」

三人で食堂を出ると、ちょうど扉の前に立っていたカルと目が合った。


「お花摘みに行こうと思ってな。」


「なるほど、ご案内致しましょうか?」


「なーに、必要は無い。場所は分かっている。それに、まさか乙女の花摘みにまで着いてくるほどデリカシーに欠けている訳ではないだろう?」


「そ、それはもちろんでございます。」


頭を下げたカルの前を横切るようにして、僕らはトイレに向かうことになる。

長く人気の少ない廊下を歩いて進む。ちらほら研究員とすれ違うが、誰も僕らのことなど気にも留めていない様子だった。

こんな場所に冒険者が来るなんて珍しいことこの上ないと思うのだが…慣れているのだろうか?


食堂からもある程度離れた場所まで歩くと、ダイヤがで首を左右に回して周りを気にし始める。そして周りに人がいないことを確認すると、前を歩くクリスタに向けて話しかけた。


「あの、クリスタさん。わざわざトイレにフォスさんを誘うということは、何かお考えがあるのですか?少し不自然に感じましたので。」


「ん?別に特別なことは何も無い。ただトイレに行くだけとはいえ、一人で行動するのは良くないかと思ってな。」


「あっ、なるほど、そう言うことでしたか。少し先読みしすぎてしまいましたかね。」


ダイヤはそう言って、少ししょんぼりする。

なるほど。ダイヤは尿意があったから僕らについてきた来たのではなく、クリスタが何か策を考えての行為だと踏んで行動していたらしい。


「なーに、ダイヤの勘も悪いものではない。実際何か行動を起こしてもいいと考えていたところだ。常にあの男に監視され続ける中の調査というのは、気分が良くないからな。」


午前の調査はもちろんだが、カルの監視下の下で全て行われた。予想ではあるが騎士団での調査でも、同じ条件で行われていたことだろう。午後の調査でも同じと考えると、あの男の監視外で動けるのは今だけと言うことになる。


だが……本当にそうだろうか?

もし本当に怪しい研究をしていたとして、それを意図的に隠蔽していたのなら……カルは僕らがトイレに行くというちょっとした行動を、監視もつけずに許すだろうか?

僕がカルなら…、それは絶対否だ。

となると……、


そう思い、後ろに気配がないかを気を巡らす。

すると、ちょっとした違和感を感じた。目では何も捉えられてはいないが、ほんの少しの魔力的な違和感のようなものを感じる。

意識しなければ感じられないようなうねり、だがその違和感は確かにある。


「なあ、クリスタ。監視の件について何だが……、」


僕はそう、小声でクリスタに話しかける。

すると彼女は、口角がニヤリと上がった笑みを浮かべた。

どうやら彼女も気づいていたらしい。早く気づいていたなら、僕らに伝えて欲しかったのだが……。


「ふふ…いい機会だし、やっぱりダイヤが言ったように事を起こすとするか。よし、ダイヤ、フォス走るぞ!」


クリスタが大きな声でそんなことを言ったかと思えば、いきなり走り出した。

それも魔力を足に流した、本格的な踏み出し。


「ちょっ、クリスタ!」

「え!?ま、待ってください!」


僕もダイヤも、動揺を隠せないまま彼女を追いかける。

狭い廊下での全力疾走、周りに人がいなくて本当に良かった。衝突でもすればただの怪我では収まらなくなる。


ただ90度の曲がり角を走りながら曲がるのは、足への負担が大きい。やっぱり、こんな場所で走るべきではないのだ。小学生が学校に入学して最初に言われることは、『廊下は走るな』だ、全くもってその通りである。


必死で壁にぶつかるのを避けながら走ると、何度目かの角で急にクリスタが急停止した。


「危な!?」

僕は何とかクリスタを避けるも、スピードを抑えきれず地面を転がるように前転して受け身をとり、何とか止まる。急疾走からの停止。前にアズとの山でもあったような光景である。


こんな最悪なデジャブ、本当にやめてください。

案の定、ダイヤは止まることが出来ず、床に寝そべっていた僕にダイブしてくる。


「す、すいません!」


ダイヤがそう言葉を出したころには、僕の胸の中にいた。ダイヤの透き通ったような髪が顔にかかり、柔らかい感触が体を包む。変な場所を触らなかったのが、唯一の救いだ。いや、ここは悲しむべきところだろうか?


「本当にすいません!お怪我はありませんでしたか?」


ダイヤは僕の浮ついた思考とは全くの逆のことを考えていたようで、僕の顔を心配そうに除いてくる。抱き合ってる状態なこともあり、今までとは比べものにならないほどに顔が近い。


「だ、大丈夫だよ。ダイヤは怪我はない?」


「は、はい。私はもちろん大丈夫です。って……、あっ、すいません、ずっと抱き着いていてしまって!」


ダイヤはそう言って僕からバッと離れると、少し顔を赤めらせてうつむいた。

今まで顔が接近することは多々あったが、恥ずかしそうな様子は見せなかった。あの距離感はたまたまなのか、天然なのかは分からないが、流石に抱き合ったことは恥ずかしかったらしい。


「フォスもダイヤもこんな所で、イチャイチャするな。」


「それはクリスタが…」

「こ、これはクリスタさんが…」


丁度、再びダイヤと僕の声が重なって、反論を言いかける。

だが、そのときクリスタが人差し指を唇の前に立てていることに気付いた。

どうやら静かにしろ…と言うことらしい。

竜車の中でも、言葉が頭の中に思い起こされる。


『リーダーの命令は絶対』


今のパーティーのリーダーはクリスタだ。

しょうがないので、僕は口を閉じる。ダイヤも同様に言いかけた口を、手で塞いだ。


すると……、トントントンと足音が聞こえてくる。

その音は僕らが走ってきた道なりから聞こえて来ており、どんどんと音が大きくなっていくのだ。

明らかに僕らを追いかけて走ってくような、人の足音。


「さーて、ここかな?」


クリスタは小さな声でそう言うと、目の前の廊下の角から足を突き出した。

するとその瞬間に、ドンっと人が転ぶような音が廊下に響く。

そして何も無かったはずの目の前の空間から、突如人の姿が現れたのだ。


カルとは違い二十代ぐらいと思われる、白衣を着た青年。見事に曲がり角の廊下で倒れている姿が露わになった。

やはりカルは、僕らに追っ手を付けていたらしい。


「よーし、ビンゴだな。ほらトイレに連れ込むぞ。」


クリスタは乱暴にその青年を担ぎ上げる。

見ると僕らの前には、男女のトイレがあった。クリスタがどこに向かって走っていたのかと思っていたが、食堂の一番近くのトイレではなく、一区画離れた場所のトイレに向けて走っていたらしい。彼女が女子トイレにその男を連れ込むのを見て、ダイヤも素早く後追う。


こんな場面を誰かに見られては、すぐにカルに知られてしまうかもしれない。トイレであればある程度人の目から逃れられると言うことだろう。入るとこを誰かに見られても困るので、女子トイレとは言え気にせず、僕もクリスタの後を追ってトイレに入った。


運がいいことに、その女子トイレには誰も入っている人がいなかった。

クリスタは腰につけているポーチから、サッと紐を取り出すと白衣の青年を素早くグルグル巻きにして縛る。


「さーて、こんな所か。よし、青年知っていることを洗いざらい吐いてもらうよ。この施設の秘密、あるんだろ?言わないと……殺すぞ。」


「ひ、ひいいいいい」


クリスタの殺気に、青年はおびえるような悲鳴を上げた。

まあ、ああなるのは納得だ。クリスタのあの冗談ではないと訴えるような眼は、僕でも震え上がる。


「あの…フォスさん。これって大丈夫なんですか?」


「いや、多分アウトだね。」


「あはは……、そうですよね。」


ダイヤは乾いた笑みを浮かべる。

施設の調査とは言え、研究員を脅して尋問したなんてことがばれれば大問題になることだろう。


「あの…フォスさん。おトイレしたいようでしたら、今やっておくのがいいと思いますよ。入り口は私が見ておきますから。」


「え!?この状況で?」

ダイヤの予想だにしない言葉に、つい驚いてしまった。


「逆に、この状況ですから…。今しかトイレをする暇はないかと思いまして。」


「え、えと……、ま、まあそうだな。」


こんな状況でトイレをするのも恥ずかしいのだが、彼女の言っていることは一理ある。

ここは恥を捨てて尿意とおさらばすべきだろう。奥の個室に入り、用を足すことにした。


女子トイレである上に、女性二人がいる中でトイレをするというのは…何だか緊張する。

大きい方ではないとは言え、音が出てしまっては何だか恥ずかしい。こんなときに音姫の偉大さを痛感させられるのだ。しっかりコントロールしなければ……。


詰まるところ、僕は完璧なトイレをすることに成功した。人生で一度とないほどの無音の雉打ち…多分もう一回やってと言われても無理である。

個室から出ると、クリスタに拷問されていた男が身ぐるみはがされて下着だけの状態になっていた。完全に意気消沈しており、口が塞がれておとなしくなっている様子。果たして僕がトイレに気を配っている間に何がったのやら……。


「フォス、吐いたぞ。どうやらここには地下施設があるらしい。嘘言ってたら魔力の乱れから分かるだろうから、確実な情報だろう。」


「地下施設!?それで入り口は?」


「奥の噴水のあった広場らしい。覚えてるか?」


「ああ。けど、地下施設の入り口があったような怪しいところはなかったはずだけど……。」


「私も気づかなかったよ。よほど高度な隠蔽魔法が築かれていると言うことだろうな。流石、魔術の研究所なだけはある。」


クリスタはそう言いながら身ぐるみのはがされた男を、僕の入っていた個室に押し込んだ。

魔力で手を作り出し、外側から内側に鍵をかける。これで当分は見つからないだろう。

だが丁度そのとき、扉の方を見ていたダイヤがこちらに振り返った。


「クリスタさん。女性が二人ほどこのトイレに向かってきます。どうしますか?」


「入って来たら、これと同様に身ぐるみをはがすぞ。フォスはその服を着ておけ。」


「あー、もしかして研究員になりすます気なんですか?」


「そゆこと~。」


僕は青年が来ていた白衣を上から羽織るようにして着ることにした。首から下げている徽章は、服の中に隠して見えないようにする。


数分後にはカイヤとダイヤも同じように、白衣を着ている姿になった。彼女たちの姿はすでに、研究員にしか見えない。シスターであるダイヤも変装のために帽子を外しており、今まで見てきた印象からはちょっと変わったように感じる。


トイレにはさらに二人の女性の研究員が、青年と同じように拘束された状態で転がっていた。

彼女たちも同様に、個室に無理やり入れて鍵を閉める。


「さーて、バレないうちに行こうか。」


クリスタそう言って堂々と、トイレから出ていく。僕らも彼女の後を追った。

すぐに地下施設への入り口がある言われていた、広場に到着する。


真ん中に大きな噴水があり、周りに緑色の芝生が広がっている。ベンチなどがあり、研究員の休憩スペースといったところだろうか。

先ほどの施設調査でも、この場所を通った。だが、特に異常もなくただの中庭ということで無視していた場所である。


一目見ただけでは怪しいところは、本当に一つもない。

ただクリスタは迷うことなく、噴水に近づいて行った。

そして、噴水近くの芝生を触っている。


「なるほどな。これは分からない訳だ。」

クリスタはそう言って笑ったかと思えば、いきなり風属性で魔弾を作り出し、その芝生に魔弾をぶち込んだ。舞い上がる砂煙と、無数の葉。



すると……、その場所にいきなり扉が現れたのだ。


「おお、本当にあった……」

「全然気づきませんでした。」


扉を開けると、地下に続く階段が続いている。

人一人がギリギリ進めそうな小さな階段は、非常に長いらしく奥が見えない。

だが、小さな灯火のような光が階段の奥に見える。


どうやら、地下施設はガチであるようだ。


「では、行くか。暗いからって階段踏み外すなよ。」


クリスタはそう言葉を投げかけ、階段下に進んでいく。

僕も後に続き、ダイヤが最後に階段に足を進めると、扉を丁寧に閉める。

少し探検気分でテンションが上がっているのを身に感じながら、僕は奥へ奥へと歩みを進めるのであった。


ご愛読感謝申しあげます。

評価、感想いただけると幸いです。


王様ゲームの内容に関しては、希望や要望があれば執筆しようかと考えてます。

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