五話
やっと試験終わった…………….
「お帰りなさいませご主人様、お嬢様!」
元気一杯の挨拶をされた、が
今の気持ちは憂鬱と羞恥で半々だ
「………..おい、どういうことだよ?」
「おしゃれでしょぉ、ここのメイド喫茶」
俺は綾音にメイド喫茶に連れてこられていた
外観は洒落ているカフェかと思ったが、看板を見て察した
逃げようかと思ったがSランクに叶うはずもなく
「二名でよろしくぅ、それじゃあいきましょうかぁ、エル」
「おい待て、俺は一言も行くなんて言ってない…..って腕引っ張るな!」
〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜
視線が痛い、それはもうとてつもなく痛い
なぜなら、こっちには巫女服が普段着というちょっと人と感性がずれているやつがいるからだ
「うんうん、やっぱり2人の方が視線が分散して気にならないわぁ」
「俺はめっちゃ気になるんだけど…….」
俺の格好は普通の学ランだが隣に巫女服着ている奴がいるため、違和感が半端ない
正直、帰りたい
「私が巫女服着ているせいもあるけどぉ、あなただってかなり顔はいいからぁ、その視線もあるのよぉ?」
「嬉しくねぇなぁ、全く」
「スカートとか着ないのぉ?絶対似合うと思うんだけどぉ」
「俺はこの格好が落ち着くんだ、それより、何すんだよ?」
「何ってぇ?」
「メイド喫茶でお前は何をしたいんだと俺は聞いているんだ!」
俺の必死に問いかけに対し、綾音は笑みを浮かべながら
「もちろん、メイド喫茶を楽しみにきたというのもあるんだけどぉ、ちょっとやりたいことがあってぇ」
「は?お前なに言って…..」
唐突に後ろのメイドに腕を掴まれた
「おい、待て。俺をどこに連れて行くつもりだ!、まじで!やめろ!ちょっまわりの客も助けろよぉぉぉ!」
連れていかれる俺も見ながら綾音はニコニコと満面の笑みを浮かべていた
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「すごく似合っていてかわいいわよぉ、エルぅ」
「お前マジでぶん殴るぞ」
白いカチューシャに白がベースのシンプルなメイド服
20分前の俺はまさか人生でメイド服を着るなんて考えもしなかっただろう
うっとりした顔で俺を見つめてくる生徒会長様にガン飛ばしながら
「おい、俺にこのメイド服着せた奴、どうやって俺のスリーサイズ測ったんだよ」
俺の肩を掴んでバックヤードに拉致った張本人ーーー確か瑠奈ってやつーーーになぜサイズぴったしのメイド服を用意できたのかを聞いた
「いやぁ、あなた様のスリーサイズはもうすでに綾音様に教えてもらってたんで、あとはそれをオーダーメイドしただけっす」
相変わらず俺のことをニヤニヤしながら見つめてくる綾音に引き攣った笑みを見せながら
「てめえ、こりゃいったいどういうことだよ?」
綾音は満足したような表情をこちらに見せ
「いやぁねぇ、ここの店のメイド服って結構お気に入りでぇ、それをあなたに着せてみたらすごく似合うと思ったからぁ」
「そのためだけに俺のスリーサイズ調べたの?!」
「いいじゃないぃ、減るもんじゃないしぃ、なんなら私のスリーサイズ教えてあげよっかぁ?」
「いらねぇよそんな情報!!それより俺はもう帰る!!!おい、俺の服はどこだ!?」
すると綾音は俺の服をヒョイっとどこからか取り出し、ーー袖の中に仕舞った
「!?、何してんのお前?!」
「私の服はちょっと特殊なものでぇ、袖の中に色々仕舞えちゃうのよぉ、だ・か・ら」
俺の目の前にいきなり近づき、チョンと鼻を押され
「今からこのメイド喫茶が閉店するまで、ここのメイドになってもらおうかと思いますぅ」
「はぁ!?ふざけんなよ!!いいからさっさと俺の学ラン返せ!!!」
「ちゃんと終わったら返すわよぉ、ほらほらぁお客さんが来ちゃうわよぉ?」
「あああああもう!!!!!!クソが!!!!わかったよやってやるよおおおおおおお!!!!」
俺は半泣きになりながら今日だけここのメイドになった
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