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5年の月日

区切りが難しくて、短めです。

あの時すぐに解消されると思ったけれど、その予想に反して婚約してからまもなく5年の月日が経とうとしていた。

解消の宣言がされなかったため、私は王子妃教育まで受けさせていただいている。

王家の機密事項みたいなことは、さすがに知るべきではない。

それに私が王家の一員になる日は来ないのに、時間をかけてもらっていいのだろうかと恐縮もした。

けれど、こちらからはそんなことを言い出せるわけもない。

学ぶ内容が家臣が知っていても差し支えるようなものではなかったことが、せめてもの救いだった。

もしかしたら、対外的に“王子妃教育“という名称にしているだけなのかもしれない。


予想外と言えばもう1つ。

セドリック様とは、あれきりお会いすることはないだろうと思っていた。

けれど実際には、この5年間ほとんど毎週お会いしている。

私が王宮へ王子妃教育を受けるために通う日には、必ず2人でお茶をすることになっているためだ。

セドリック様はお忙しいので、私のために時間を作っていただくのが申し訳ない。

一度、「毎回でなくてもいいのでは?」と聞いてみたことがあるのだけれど、セドリック様はきっぱりと「王子妃教育の度に会うのは決まりだから」と仰った。

この発言から推察すると、陛下或いは王妃様の発案なのだろうと思う。


決まりとは言っても、顔を合わせてお茶をすることが決められているのみなので、特別なことは何もしていない。

ただお茶を飲み、お菓子を食べ。

花の綺麗な季節には中庭へと行き、本を読みたければ図書室へと行ったりする。

そんな風に過ごすだけ。


それらの合間にセドリック様が今学んでいることであるとか、ご自分の友人達との話などをしてくれて、私はそれを聞いている。

ご友人達とは幼い頃からの仲なのだそうで、偶然にも私があのお茶会の時にお話をした方達だった。

意外と世間は狭いものなのだなと感じた。

私がそんな風にセドリック様のお話を聞かせてもらう一方で、セドリック様が私に何かを尋ねてくることはあまりなかった。

好きでもない相手のことには興味が湧かないだろうから、特に知りたくもないのだろう。

その気持ちは容易に想像できる。


この5年。

私はセドリック様のことをたくさん知ることができた。

そして、知れば知るほどに尊敬の念が強くなっていく。

セドリック様は内面の美しさも兼ね備えた方だ。

その人柄を知って、私との婚約をすぐに解消しなかったのは“他者への思いやりの心“故のことなのだと理解できた。

結んですぐの解消だと私のイメージが悪くなり、次の婚約相手を探すのが難しくなる。

だから時期を見極めてくださっているのだ。

セドリック様は、好いた相手ではない私の将来さえも気遣えるほど、器の大きな方だ。

だからこそ、幸せになってほしいと思ってしまう。

あのお茶会の時、本当に見初めた令嬢とはその後ちゃんと連絡を取れているだろうか。

私が例えば友人になるなどして、うまく結びつけることができたらよかったのに…。

お役に立ちたいとは思っていても、そんな役割を私は求めてられていない。

せめて、私がいることで2人の邪魔になっていなければいいと願っている。


もしもあの時。

気持ちを聞いていなければ、私はセドリック様を男性として好きになってしまっていただろう。

気持ちに歯止めをかけることができて、本当に良かったと思う。


セドリック様は並外れた美形なので、そんな人に毎週お会いできたことは幸せなことだった。

美しい金色の髪に、よく晴れた空を思わせる青い瞳。

初めて見た時、あまりのかっこよさに言葉を失い見惚れてしまったことが懐かしい。

あの時の衝撃は今でも薄れてはいないけれど、好いていない相手から見つめられても嬉しくないだろうから、今は一応挨拶を交わす時くらいしか見ないように気を付けている。


お茶やお菓子も毎回私の好みのものを出していただいた。

中庭に咲く花も私の好きなものが多いので見飽きることがないし、図書室の本だって貴重なものがたくさんあるから時間を忘れて過ごすほどだ。

私が楽しく過ごせるよう、取り計らってくれていたことが分かる。

きっと王妃様が助言してくれているのではないかと思う。

王妃様とは王子妃教育の時にお会いしていて、いつもとても良くしてくださるのだ。

気さくに色々なお話をしてくださり、私の話も聞いてくださる。


こうやって改めて振り返ってみると。

間違えられた婚約者の私は、十分すぎるほど大切にしていただいたと思う。

そのご恩をお返しする準備が整った。

きっと喜んでくださる。

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