表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ガイドブック  作者: 石亜
3/6

ガイド項目3 魔物

 見渡す限りの草原を風が吹きわたっていく。

「ふあー、気持ちいいー」

 風に吹かれながらレイリア・ホールは全身で伸びをした。

 レイリアとしての記憶がない私としては初めての外出。屋敷以外の外の景色に興奮しています。ここはマーナの郊外にある草原で街よりも若干涼しい場所になるようです。

「姉さん、あの丘まで走ろ!」

 弟のキアールが楽しそうに声を掛けてくる。ホール家の中では二番目に若い私。多分、大丈夫だと思い頷いた。

「気を付けてね」

 グレース母様が馬車から降りつつ声をかける。

「「はーい」」

 私達は共に走り出した。

 最初は競っていた私達だが途中にあった花や昆虫? などを見つけては足の速度を緩めて進み丘を目指した。私達の後をひとりの男性がついてくるがこの人は護衛の方で、今日の3人のお出かけには4人の護衛とメイドがひとりがついて来てきていた。そんな危険はなさそうなのにと思ってしますが、この世界の事は把握できていないので何とも言えませんね。

「「到着~」」

 キアと私の声が重なる。ここの姉兄、妹弟はよく息が合うな・・・。

 草原の中に所々に森が点在している中に小さな集落も見えた。

「ここはまだマーナなのですか?」

 後ろに立っていた護衛の方に聞いてみる。

「はい、ここから見える範囲はまだマーナですね」

「どの位進めば他の市に行けます?」

「そうですね。ここから一番近い市のカタルまで馬でひたすら走り続けて・・・1週間ってところですか」

「・・・」

「レイリア様?」

 お馬さん休ませてあげて下さい。お願いします。

「姉さん、見て」

 キアが手の平を広げその中身を見せる。そこにはピンポン玉位のフアフアした塊があった。

「アゴラ見つけた」

 よく見れば毛に埋まってはいるが顔がある。ウサギみたいかな。

「アゴラ・・・」

「この辺りに生息している小型の魔物です。おとなしい性質の為、家庭で飼われていることもあります」

 魔物がいたんだこの世界。

「普通に捕まえられるものなのかしら」

 私は辺りを見渡した。

「うーん、どうでしょうね。アゴラはおとなしいですが警戒心が強く、人の気配がある場合姿を見せないのですけど」

「キア、このこどこに居たの」

「そこ」

 視線を小さな岩場に向ける。他のアゴラの姿は見当たらない。

「もしかしたら親とはぐれたのかもしれませんね」

「この子、子供?」

「そうですね。まあ親になってもこれより二回り位大きくなるくらいですけど」

 野球ボールぐらいか。

「この子連れて帰ってもいい?」

「親が探しにくるかもしれないわ」

「多分、こないです」

 私はなぜという風に首を傾げた。

「簡単に捕まえられたと言う事は結構衰弱している感じですし、その時点で親とはぐれて時が経っていると思われます。それに人の香りがついてしまってはもう」

 警戒心の強いアゴラは人の香りがする子アゴラに近付かないと言う事らしい。

「お母様に伺いましょう」

 木々の木陰で椅子とテーブルを置き、お茶の用意の整った席でくつろいでいるグレース。

「「お母様ー」」

 レイリアとキアーロはふたりそろってグレースの側に駆け寄った。

「お帰りなさい」

「母様、アゴラ連れて帰ってもいい」

 さっそくキアが手の中のその子を見せた。

 グレースは護衛の男性に視線を向ける。

「子供のアゴラで親と離れたようで衰弱しております」

「そうなの。でも、野生の魔物を家に連れ変える事は出来ない決まり。一旦保護してルガナに後で施設に届けてもらいましょう」

 家で飼われているアゴラは野生ではないということ? 魔物のペットショップ的な所があるのかな。ちなみにルガナとは私達姉弟についていた護衛の方の名前だと気がついた。

「施設に行ったあとはどうなるのですか」

「元気になり大人になったら野生に戻すの」

「戻せるのですか」

「その為の施設だもの」

「他の魔物もそこに?」

「余りランクが上の物だと討伐対象になるから、比較的自然に帰しても問題がないレベルの魔物とか生き物ね」

 ふむふむ・・・討伐には騎士の方々がなさるのだろうか。

「ルガナ」

 母の声にルガナさんがキア君から子アゴラを引き取る。キア君がしょぼくれた。

「さあ、お茶にしましょう」

「「はい」」

 私はキア君の背中をそっと撫でた。


 私達はお茶とお菓子を頂きながらそこから見える景色を眺めていた。

「お母様」

 グレースはレイルアを見る。

「魔物を討伐するのは騎士の方ですか」

「そうね。カルムが通う騎士学園を出た方もいれば、討伐専門の方もいるわ。どちらも依頼があって動くのが普通ね」

「討伐専門と冒険者と言われる方々は同じ?」

「んーそうね。レベル上げに若干の違いが生じると思うけど基本同じだと言えるのかしら」

「魔法では倒さないですよね」

 この間の姉兄の話だと魔力はこの世界の為に注がれているらしいので他で使う事はないと思うが聞いてみた。

「ここだけの話、魔法でしか倒せない魔物もいるの」

「えっ、どうするのですか」

「この世界の為に使う魔力とは別に、魔物を倒すため魔力をためたあるものが討伐に使われているわ」

「あるもの?」

 母は少し離れた場所にいたルガナさんとは違う護衛を手招きした。

「お呼びですか」

「サル―、なんでもいいわ魔球を出して見せてくれる」

 サルーさんと呼ばれた方は腰に着けた鞄から水色の玉を取りだして見せてくれる。

「魔力を込めた球ね。これは水の魔力が込めらているもの。他にも火や風とかねいろいろね。剣で手こずる魔物は属性を考えて弱点となる魔球を使って弱らせてから倒すことになる」

「この魔球は一般的に使われているのですか」

 私はサルーさんに訊ねた。

「魔球は込められた魔力のレベルより値段が違ってきます。魔法師のレベルが高いほど効果が高く値段も高いのです。私がここに所持しているのはホール家所有の魔球でして最高レベルの品になります」

 という事は魔力レベルによって魔球もピンからキリまだあるということ。低すぎる魔球を持って高ランクの魔物に遭遇した場合、命の危険が生じると言う話。

「しかし人が開拓しているような場所にはそんな高ランクの魔物は出ません。討伐目的や魔物が生息するような場所を通る時とかに必要なぐらいです」

 んっ、ここはもしかしてそういう場所なのでしょうか? 私は心配になり辺りを見渡した。 

「大丈夫ですよ。今回は万が一の為の常備なので」

「そう、この間はここキングガダが出たけど、ルガナ達が倒して魔球は使わなかったしね」

 お菓子を頬張りながらキア君のプチ情報を教えてくれた。

 それは多分本来なら魔球を使うレベルの魔物がでたけど、護衛の方々が強くて剣で倒してしまったと言う話かな・・・いやいや、そんな自慢はいいので早く戻りませんか。それとキングガタってどんな魔物なの?

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ