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異世界ガイドブック  作者: 石亜
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ガイド項目2 学園紹介

「く、苦しいです・・・シーラお」

 私ことレイリア・ホールが言い終わる前にパッコーンといい音が響いたのと同時に私を抱きしめていた腕が緩んだ。

「イタッーイ! カルム!」

 レイリアの姉であるシーラ・ホール17歳が頭を押さえて弟であるカルム・ホール15歳を振り返る。そんなシーラを退かしてカルムはレイリア優しく抱きしめた。

「ただいま、レイリア」

「お帰りなさい。カルムお兄様」

「レイリア~」

「シーラお姉様もお帰りなさい」

 2人してレイリアを抱きしめた。

「僕もー」

 弟のキアーロがそこに飛び込んでくる。

「「キア、ただいま」」

 姉と兄の声が重なった。

 とても和やかに対面は済んだが、私紺田巴菜としては初対面で心臓がドキドキしていた。

 姉であるシーラは明るい緑の髪に緑色の瞳。兄のカルムは濃い青色の髪に瞳も同じ。レイリア以外の姉兄弟は両親から受け継いだのだろう特徴が瞳や髪の色に出ていたが、彼女だけは深緑の髪に金色の瞳をしていた。

 先祖返りとかの類かもしれないし、今の私にも聞く勇気がないのでそっとしておくことにした。


 この国リベルタには五つの都市があり、その都市ごとに学校がある。姉シーラが通う法科は国内外の法律を勉強し卒業後は弁護士・商人、役人に就くことが多いとか。兄カルムはそのまま騎士になるための学校で国や市民を守る為に剣術の訓練、もしもの時もあるから戦術も勉強しているらしい。

「それは・・・戦とかのお話ですか」

 サロンでくつろぎながら姉兄の話を聞いていた私はカルムに尋ねた。

「そうだね。この100年位は他国との争いはないけど、絶対ないとは言えないのがホントのとこ」

 争いのない世界は存在しないのだろうか。どんな世界でも文明が発達し知能を持った者がいれば争いはあり得る話なのかもしれないが、そんな事のない世界がひとつぐらいあってもいいはずなのにと思ってしまう。

「争がなくてもいいよいうにするために私達は勉強しているのよ」

 そっか。今の平穏を守り継続していく為の努力、それが勉強。

「なるほどです」

 ふむふむと頷いているとシーラさんがじっと私を見つめた。

「どうしましたシーラお姉様」

「・・・本当に記憶がないのだなって」

 私は首を傾げる。

「姉さん」

「だって、以前のだったらお姉ちゃま、カルムの事もお兄ちゃまって呼んでくれていたのに」

 いや、泣き崩れられてもですね。って言うか12歳でその呼び方ってどうなのでしょう。確かにレイリア自身は可愛いので違和感はないんですけどね。

「気にすることはないですよリア」

 カルムさんそうはいってもですね。

「んっ? リアとは」

「えっ、ああ。レイリアの愛称ですよ。キアーロはキアでしょ」

「お2人には?」

 リーナとカルムは互いに見合わせてからないないと首を横に振る。

「「必要ない」」

 よく声がそろうなと感心する。確かに2人共名前がショートなので縮めるほどでもないけど、そんなことを言ったら下の妹弟もそうだと思う。

「リア?」

「シィ姉様、ルー兄様で、どうでしょう?」

「シー姉、ルー兄!」

 カルムの元で絵本を読んでいたキアが叫んだ。

 びっくりした表情から満面の笑みをリーナとカルムはレイリアに向ける。

「「それがいい」」

 気に入っていただけてありがとうございます。

「ところで他の学校はどんな事を学ぶのですか」

「ゴウドには植物や生き物を育てる学園があって、カタルにあるのは薬師や看護を学ぶとこ。看護は他の学園と同じ年数学ぶのだけど、薬師過程は学ぶ期間が長くて13歳から25歳までなんだ。」

 8年か。それが薬師の勉強として長いのか短いのかがわからない。そう言えば私がレイリアちゃんとして目を覚ました時、メイドさんが『薬師様を』とか言ってたね。あっちの世界でいう医師の事かな。

「リアは何か学びたいことはないのかしら」

「私ですか・・・」

 記憶を失くす前のレイリアちゃんはなにかあったのでしょうか。ほら、学校に入る歳ですしね。

「んー、今ですと魔法でしょうか」

「「魔法」」

 とても低音でおふたりハモりましたが、なにか問題でもあるのでしょうか。

「確かにサタタナに魔法学園はあるわ。でも・・・」

「でも?」

「誰でも入れるわけではないんだよ。魔力がないと入れない」

「まあ、それはそうですね」

「で、その魔力なのだけどうちの家系は持っていないの」

 シーナは側で寝てしまったキアをソファに寝かせるとブランケットを掛け、とんとんと彼の背中に優しく手を置く。

「調べたんですか」

「・・・どこの家でも生まれて1歳経ったら一応調べるの。魔力があるかないかね」

「どうして」

「魔力は守るのに必要だからだよ」

 カルムの言葉にキアの背中に置かれたシーラ手がピクリと止まる。

「魔力を持つ者・魔法師はその力を国に捧げるんだ」

 魔力を捧げる? 

「国はその力をどうするのですか」

「その力で世界を保っているのよ」

 シーラさんの言葉に私は首を傾げるしかなかった。なぜ、国から世界の話になるの?

「今のリアは記憶がないから理解しにくいかもしれないけど、この世界の誕生はひとりの魔導士が作り上げたものなんだよ」

 あっそう言えば書庫で世界の成り立ちというタイトルの本をちらりと見かけた気がする。残念、手には取らなかったけ。

「少し、リアには難しい話になるかもしれないけど大切な事だから言うね。各国で集められた魔法師の魔力は国ごとにこの世界に注がれている。魔力がこの世界を保っているんだ」

 えっ、ちょっと思考が追いつかない。

「ま、魔力が無くなったらこの世界は」

「「消えるね」」

 そんな怖い事をハモラないください!

「魔法師は自国から出る事を許されず、必要とならば魔力を最低減まで搾り取られてしまうんだ」

「個人の魔力が無くなることは?」

「世界の存続が掛かっているから枯渇するような事はしないよ。個々が回復できる所までしか引き出さないようにしているはず」

 私はほっと胸を撫で下ろす。

「でも、その魔力を次に繋ぐために彼らは色んな束縛を強いられているわ」

「そうさっきも言ったように国から出られず、家族にもあまり会えないし結婚も魔力持ち同士しか出来ない」

「それは魔力を持つ者同士を一緒にさせる事で力の強化と魔力を持つ者を残そうとしているからですか」

「「正解」」

 私は肩を落とした。

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