サポロイドの苦悩
フィエスタローズ(FiestaRose)
新興企業ユニオン社の初のLB。
各分野のエキスパートを参考に開発した超高性能汎用型二脚LB。カメラはホークアイ社、コンピュータはMoC社、装甲はオオサカ重工、通信機器はTCC、ブースタはソニックブーム社、本体はAM社を参考にしている。
サポロイドの仕事は所持者のサポート。家事や事務処理、なんでも引き受けるのが役目。
とても人間に近い構造は、脳以外を完璧に再現しているから、もちろん体を使った癒やしも提供できる。
だけど所詮はアンドロイド、成熟した状態で産まれ、親の愛情を知らない。特に、私のような人間関係の経験が無いサポロイドは
日常のやり取りすらも難しい。
人の精神はマニュアル通りにはならず、時々心のケアのやり方が分からなくなる時がある。
悲しい時、落ち込んだ時、どう声をかければいいのか。
「ノマさん、きっと落ち込んでるだろうな…」
ソーシャルネットワーキングサービスで、ちょっとした騒ぎがあった。
先日のピース・シティの騒ぎのあと、ピンチ・ヒッターのラックさんがこんな投稿をした。
「倉庫から出てきたあの白い機体、ヤバかった。正直アブなかった。これじゃあピンチ・ヒッターというかピンチニ・ナッターだな」
左腕を失ったピンチ・ヒッターの画像と共に投稿したこれは、投稿後に一瞬で消された。
その投稿が消された直後、ピース・シティ町長から
「先程のピース・シティ資源貯蓄エリアにて発生した暴動は、アイギスとフィエスタローズ、そして救援に来てくれたピンチ・ヒッターの三機によって鎮圧されました。」
「突如出現した白い機体は、現在消息不明となっております。」
と投稿された。
この一件が記事となり、寝起きの私たちは、ついさっきそれを見てこの騒動を知った。
そしてその関連記事に「絶好調のピンチ・ヒッター」「我らがヒーロー「アイギス」、ピース・シティの守り神」そして、「バラ色の新星、その正体とは」とあった。
私はその記事を一緒に見ていた。すると、とあるコメントを見つけたのだ。
「昨日の作戦も酷かったな」
「Fiesta Lose」
「トゲなしのバラ」
コメントをする人なんて大体こういう人ばかり。そう言う人は、大体何もできない人だ。
しかし、思い詰めている人には大きなダメージになってしまう。
そして、少し風に当たってくる、そう言って出ていったきり中々帰ってこない。
母親ならどうするだろう、友達ならどうするだろう、恋人ならどうするだろう。
マニュアルには励ます言葉をかけましょうとあった。私はそれをやったがダメだった。
「うーん…うむむむむ…」
モニターで外を見てみると、ノマさんは日陰の中でフィエスタローズを見つめている。
「何かしてあげたい…うーん…」
少し前にどこかで聞いた。自分がされて嬉しい事を相手にしなさい、と。
ハッチを開け、ノマさんの方へ歩くとこちらを向いた。
『どうかした?』
「あ、あのっ」
いざやろうとしたら気付いた。私って何されたら嬉しいんだろう?
『…?』
「いやー、そのーっ…今、私にできる事はありますか?」
聞くのが一番早い。そう思ったので聞くことにした。
『あぁ、心配してくれてるの?ありがとう、気持ちだけで充分嬉しいよ』
ポンポンッと頭に手を置かれた。
嬉しい、幸せな感情が湧き出てくる。
「なるほど…ちょっと屈んでください」
『ん?いいよ』
ポンッと頭に手を置いた。
「嬉しい、ですか?」
『お、う、うん、ありがとう』
「やった!これで立ち直れましたね!」
『う、うん?そうだね』
ノマさんが立ち直ってくれたなら、それで私も嬉しい。
なんだか、私の方が嬉しい思いをしたのかもしれない。
「ところでノマさん、実はお腹が減っちゃって…申し訳ないんですけど、ご飯にしませんか?」
『ほんと、食いしん坊だね』