ホップ・ステップ・ジャンプ
ノマ・ルージュアル(Norma Lusual)
最近LB乗りになったストレイ(放浪傭兵)。
ピース・シティにある貧乏な孤児院の育ちで、五年前にストレイとして生きることを決意。
突出した才能も無く、苦悩している。
二足歩行の最大の利点は地形を選ばない汎用性だろう。非効率的ではあるが、無限軌道やホバー走行の兵器では活動しにくい複雑な地形でも自由に活動できる。
今回はそんな複雑な地形での戦闘となる。
敵は最近ピース・シティ付近の低い山岳地帯で旅人や貿易商を襲っている盗賊だ。LM四機小隊で行動しているらしい。
LM相手とはいえ、やはり油断は禁物だ。太陽エンジンを搭載し、強力な武器を持った改造機も稀にいるからだ。
それに、通常機でも足を止められれば袋叩きに遭う。それでパイロットが気絶し、機体をハッキングされればLBを奪われる事になる。パイロットは人身売買か、サンドバッグか…いい事は無いだろう。
「まもなく作戦エリアですよ」
『レーダーに反応…情報より一機多い五機かな。』
今回もフィエスタは留守番だ。実戦経験も積んでほしいが、タンク型の性質上今回は難しい。
「上空からドローンでスキャン中…AM社のAM-2LM-PAWN四機、もう一機は…同型の改造機のようです。」
『了解、作戦を開始しよう』
こういった地形では、ジャンプが基本となる。空中戦が可能ならもちろんそっちが良いが。
三次元戦闘はニガテだがいい練習になるだろう。
「敵が気づきました、警戒を!」
『まず一機落とす!』
大きく飛び上がった。
二連装レールマシンガンの照準を合わせ、二門同時発射する。
バッテリーを撃ち抜き、敵は機能を停止した。
「三番機がやられた!くそ、LBか!」
「左右に動けば簡単には当たらない、足を止めるな!」
改造機は…ジャンプ性能を強化しているのか?増加ブースタを各部に増設している。
真横にジャンプした。僕から見て最も早く見える角度だ。
体を改造機に向けた瞬間、他のLMが発砲してきた。
「ノマさん、前後左右に動きをつけて!」
中々それが思いつかない。LBの利点を活かしきれていないのだ。
射線から外れつつ発砲してきたLMを向き、ハイ・ブーストで回り込みながら接近する。
「思ったより速いな…散弾を用意!」
足を止める気か。持ち替える瞬間を狙って一機倒したい。
と、早速持ち替えようとする一機。直線移動で接近しながら射撃する。
「しまっ…」
「五番機!バカがっ!」
後ろからの射撃。
改造機が急速接近し、激しい打撃を食らった。
『うっ…』
速度の乗った打撃はLB並だ。
高度を下げ、追撃の蹴りを避ける。
「その調子です!」
散弾を用意されたが、この改造機と取っ組み合っていれば撃ってこない。改造機の相手をしつつ、隙を狙って他のを落とそう。
それにしても、この改造機、他の機体とで挟み込むような位置取りをしてくる。何が狙いだろうか。
段々距離を詰めてきた。格闘戦を挑む気か?
突然散弾を発砲してきた。
『味方ごと撃つ気か!?』
改造機は、僕を盾に散弾を回避した。
この衝撃…衝撃弾か?機体が体勢を崩し、その隙に蹴りを入れられる。
機体は急降下したが、なんとか着地した。
回避行動を取りながら敵が近づいてくる。ショットガンでこちらの動きを止めつつ、距離を詰めてくる。
ハイ・ブーストで無理矢理詰めるか、それ以外無いか。
「て、敵がっ!」
「回避行動を続けろ!」
ハイ・ブーストで突撃すると、相手が焦って一瞬足が止まった。そこにマシンガンを叩き込みながら突撃する。
更に、援護に来た一機も移動方向の延長線上に立ち、撃破した。
「バカ共が…」
『あとは一機…さっきはよくもやってくれたな…?』
ハイ・ブースタを起動し、ジグザグ移動をしながら一気に距離を詰める。
相手は引き撃ちに徹したが、LBに射撃はほぼ無駄な抵抗だ。先程のように衝撃力に特化した銃でもない限りは。
山の斜面を蹴り、更に加速しながら距離を詰める。相手も同様の事をしているので、射撃が当てづらい。やはり、山に着いた瞬間を狙うか。
『…そこっ!』
「脚部が…!?まずいっ!」
右脚を破壊され、敵は斜面を転がり落ちた。
『トドメっ!』
敵の真上からマシンガンを撃ち下ろした。
銃を向けた腕が倒れ、機能が停止した。
「敵機の反応は無いです、作戦終了です!」
『終わった…けど、またLM相手に手こずったか…』
作戦中は依頼主に監視される。違反を防ぐためだ。多くの依頼は戦闘の撮影に同意する事が求められる。
その映像は依頼主が依頼履歴と共に保存するのだが、とある動画配信サービス会社が高値で買い取りをしており、大体は依頼主がそこに売りつける。そして、その映像は各地で使えるネットワーク・サービスで誰でも見ることができる。
最近これは、LB乗り、LM乗り、傭兵、ストレイ…様々な者の評価の主流となっており、場合によっては仕事が来なくなる。
初心者とはいえ、LBがLM相手に手こずるようでは評価の上昇はあまり見込めない。
「ノマさん、作戦終了ですよ?帰還してください」
『あぁ、ごめん、帰還するよ』