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機動兵器・レッグベース  作者: ベルベル
本編
2/53

初依頼

豆知識

この世界には、火薬がほとんど存在しない。その為、実弾は全てレールガンである。

推進器はプラズマジェットであり、ミサイルは着弾時にプラズマを撒き散らすか、運動エネルギーを利用した物が多い。

LBは現時点では無敵の機動兵器だ。並の兵器では傷一つつけられない頑強な装甲、地上、空中を問わない機動力、火力においても専用の強力な兵装を持てる。


今日の依頼はピース・シティで発生した暴動を鎮圧する、という緊急の依頼。相手はLM五機、LBの敵では無い。まぁ、LBに乗り換えて初の依頼だ。ちょうどいいくらいか。

しかし、ピース・シティで暴動か、珍しいな。


「ノマさん、進行ルートから予想して敵の目的地は恐らくピース・シティ資源貯蓄エリアです。」

『了解、急いで準備しよう。』


建物が密集している場所では、高火力の兵装は持てない。敵もろとも周囲の建造物を破壊してしまうからだ。

なので、近接格闘兵装が役に立つ。交戦距離が近くなるのは避けられない事だ。

まぁ、今持っている兵装も、実体剣一本とマシンガンのみ。選びようが無いのだが。


『弾丸はちゃんと入ってる、OK、急行しよう』

「行ってらっしゃいませ」




敵の予想進行ルート上に先回りして待機。できれば銃は使わずに終わらせたい。

フィエスタには留守番をしてもらう。タンク型LMは接近戦は苦手だ。小回りが効かないのだ。


『来たか…』


ガリガリと音をたてながらLM五機が一列に並んで接近してくる。

高機動高防御型のLMか、戦場の主流になっている機体だ。

しかし、LBの足元にも及ばない。ビビるだけ無駄だ。


ビルの陰から飛び出し、コックピットを突いた。

さすがLBだ。一切のブレなく狙い通りに突いた。


『次!』


高機動高防御型LMは、地面を滑って移動ができる。しかし、急停止が出来ない為、今のように奇襲に対応しにくいのが弱点だ。そして後ろ側の装甲も薄く、そこも弱点。


突いた敵機を切り払い、逃げようとする一機を蹴り飛ばし、更に一機足を止めた。

そこに飛び掛かっての突き。これで三機。


敵がバトルライフルで応戦してきた。

しかし、LBの装甲が全て弾いた。跳弾がビルに当たり少し被害が出てしまったが。


「引き撃ちだ!逃げながら応戦しろ!」

「クソッ!なんでLBが出てくるんだ…聞いてないぞ…!」


確かに、この程度でLBか…言われてみれば不思議ではある。

中立地域とは言え、防衛用のLMくらいはあるはずだ。


まぁ、今はそんな事を考えている時間は無い。さっさと片付けよう。


左隣の道に逸れ、全速力でブースト移動する。


「畜生、傷一つつかない!」

「打撃だ、パイロットにダメージを与える!」


LB対策として、打撃でパイロットにダメージを与える、という物がある。それは対LB戦の基本であり、唯一の手段だ。


敵が左に曲がった。どうやら戦うつもりらしい。

地面を踏みしめ、回し蹴りを放ってきた。

一瞬の判断で後ろにブーストした。蹴りは外れ、ビルに直撃した。

いくらLBと言えど、パイロットが気絶してはただの金属の塊。打撃には注意しなければ。


「しまった!」


上がった右脚の下に潜り込み隙を突き、斬り払った。あと一機。


『…!!』


すでに間合いを詰められていた。蹴りの衝撃で機体がビルにめり込んだ。

コックピットに衝撃吸収機構があるにしてもかなりの衝撃だ。何度も食らいたくはない。


『くっ…サイドブースタを…』


反対のビルに衝突してしまった。機動力を制御出来てない。


「素人か…?」


立ち上がるにも妨害されてしまう。銃を持つ腕を下敷きにしてしまい使用できない。なんとか状況を打開しなければ。

蹴りを払い相手の体勢を崩した。

ブースタを低出力にし、姿勢を立て直した。


『やってくれたなぁ…』


相手の銃を叩き斬り、関節を狙い両腕を切断した。

更に膝を破壊し、膝をつかせた。


「ここまでか…あとは任せた…」

『任せた…?』


倉庫群から警報が聞こえた。それと同時に煙が上がるのを見つけた。

フィエスタが駆けつけた。


「ノマさん、緊急事態です!倉庫から試作兵器が強奪されました!急いで追いかけましょう!」

『試作兵器?聞いてないぞ!』


別働隊がいたらしく、LM部隊は陽動だったらしい。

LMにトドメをさし、倉庫群に急いだ。




防衛部隊が展開している。なるほど、こっちに戦力を配置してたのか。

盾と実体剣を装備した防衛型LB一機にLM三機…街の警備には充分だ。あのLBは…ピース・シティの人気者、「アイギス」か。


「援軍か?、助かる…」

「敵機確認!LBでしょうか…?超大型の銃にパイルバンカーらしき物を装備しています!」

『どう見ても危険そうだ…被弾はしたくないな。』


破壊された倉庫の中に、白い機体が佇んでいる。直線的で鋭い形状。跳弾しやすいよう工夫されているのだろうか。


「無駄な抵抗はするな!今すぐ機体から降りて投降しろ!」

「…」

「動いたら容赦はしない…!」


白い奴が一歩前に出る。

それを見た警備隊が突撃を開始した。


『待て!』


アイギスが斬りかかった。その瞬間、白い奴の姿が消えた。


「なっ…!?」


あの一瞬でLMが一機、パイルバンカーで仕留められた。

アイギスが振り向く間にまた一機仕留められた。瞬間移動とでも言えばいいのか、あのスピードは。パイロットはただではすまないだろうか。


あっという間にLMが全滅。目を疑ったが、残念ながら現実だ。

 

「化け物め…!」

「あの一瞬で…三機も…」


アイギスが、斬りかかった。当然のように奴は回避し、後ろをとった。

それを読んでいたアイギスはサイドブースタで回避し、振り向きながら回し蹴りを叩き込んだ。

奴は銃を鈍器のように振るい、それを避けたアイギスにパイルバンカーを放った。

しかし、それをシールドでパリングし、膝蹴りから更に前蹴りを入れた。


介入する所が無い…これが、LBの戦闘なのか… 


「何している!はやく加勢してくれ!」

『り、了解!』


ホバー移動で接近し、突いた。奴は後ろに回った。

サイドブースタを起動したが、それを読まれ銃で殴りつけられた。

地面に両手をついて倒れた。

さっきのLMの蹴りとは比べ物にならない衝撃だ。脳が震え、一瞬めまいがした。

そこに追撃を入れようとする白い奴。アイギスがそれを飛び蹴りで防いでくれた。


「同じ手を何度も食らうわけがないだろ!」

『クソッ…!』


LBに慣れていないにしても、ここまでやられるとは…露骨に技量の差が出るのか。


立ち上がり、もう一度相手を確認すると、かなりダメージが溜まっている様子だ。少しずつ鈍くなってきた。


そこに、更に救援のLBが飛んで来た。ストレイだろうか。


「こちら増援のLB「ピンチ・ヒッター」だ。状況は!」

「加勢か?三対一なら…」

『…まずいっ!』


奴が銃を構え、発射体勢になった。そこにパンチを入れ、銃口を逸らした。


『増援のLB!回避を!』


強い衝撃と共に閃光が放たれ、増援のLBの左腕に直撃した。


「うぁ…ァ…ッ!」

『大丈夫か!?』

「電…障…いが…生!つ…信が…乱れ……す!」


激しい電波障害が発生し、通信が乱れる。


『フィエスタ!ピンチ・ヒッターの状況は!』

「通信状況が回復!ピンチ・ヒッター、左腕部大破!」


左腕部が大破…!?LBを破壊する威力なのか…?そんな話、聞いたことがないぞ?


「ひ、左腕で良かった…」

「パイロットは無事のようです。」


フシューッフシューッと排熱する銃。一撃に全てを振り切った武装なのか。


「実戦テスト完了…帰還する。」

「なっ…!待てっ!」


ハイ・ブースタを起動し、超高速で飛び去っていった。


『作戦…失敗なのか?』

「問い合わせています…LM五機、討伐分の報酬はしっかり払ってもらえるみたいです。ピンチ・ヒッターには…何もないようですが。」


失敗では無いにしても、不完全燃焼というか…達成した感じがしないが…生きているだけラッキーなのか。




「あぁ、君、先程はありがとう。注意がなければ死んでいたかもしれない。」

『いや、冷静な判断をする余裕があったのも、警備隊長のお陰だ。すまない、脚を引っ張って』

「気にするな。ところで、君は今回が初のLB戦だったのか?」

『ああ…ストレイとしては長いんだが、昨日LBを受け取ったばかりでな。』


作戦終了後、街で人気の「ガレージ・サイド・カフェ」で一息つく。メカ好きにはたまらない、ガレージを眺めながら食事を出来るカフェだ。

フィエスタが「任せてください!」と張り切って報酬受け取りの手続きをしに行ってくれたので、ゆっくりとしている。


「…二人とも、耳を貸してくれ」

「え?あ、おう」 

「今日のあの「白い奴」の情報を手に入れたら、私に知らせてくれないか?君たちはストレイ、自由に旅できるだろう?」

『あいつ…ピース・シティ資源貯蓄エリアから出てきたが、ピース・シティが兵器開発なんてしていたのか?』

「そこなんだ。対LB兵器なんて、東西南北に展開しているどこの勢力も作れない。そんな物をよりによってピース・シティが。今の町長は平和主義者のはずだったが。」

「分かった、俺らで情報を共有しよう。」


最近は各地で戦闘も多くなってきている。ストレイとしては稼げるから良いが、物騒なのは良い話ではない。きっと、何かが始まるのだろう。


「おっと、こんな時間か。じゃ、俺は失礼するよ」

「そうだな、そろそろお開きにしよう。」

「ピンチ・ヒッターと俺、ラックはどこにでも現れる。きっとまた戦場であうだろうから、そんときは敵でも味方でもよろしくな」

『ああ。またどこかで。』




帰った俺は、ベッドに横になった。

初戦からボロボロにやられた。ただのLMにすら押された。

悔しいが、自分に力が無かったからだ。

明日は反省だ、次に生かすための。

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