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伝承・御剣  作者: 九本麻有巣
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第十七章 その望み、届かぬ想いへ至るため...

 少年は――佐土布都建御は知っている。『自分は、強い』と。

 その数20を超える野党の群れを、雷の瀑布で一薙ぎにできる。流浪(なが)れてきた古代級(エンシェント)の『剣聖』の暴力を、己の暴力で一方的に鎮圧する事ができる。直径2[m]を越えようかと言う巨岩を、一撃の下に粉砕する事さえできる。

 これらは、自力を主観で過大評価しての予測では無い。過去に起こった事実をただ冷静に並べた客観。少なくても、彼は常人の目からは怪物(バケモノ)と揶揄される程度には、圧倒的な「強さ」を持ち合わせていた。そしてそれを重々承知していた。

 しかし――彼は知っている。『自分は、弱い』と。

 「強い、しかし弱い」と言うこの彼の認識は、小難しい哲学ではない。ごくごく初歩の算数の話。

 20を超える野党の群れを追い払おうと、100を超える骸人の圧倒的な数には抗いきれなかった。古代級(エンシェント)の『剣聖』との太刀合いを制しようと、神話級(ミシカル)の『剣聖』の前には太刀打ちできなかった。巨岩を砕き去ろうとも、腐肉の鎧を穿つには及ばなかった。

 自分は、常人に比べて途方も無く強い。しかし、その強さは決して充分に満足できるモノではなかった。

 知ってはいた。しかし、知っているだけで、理解はしていなかったのだと、否応なく理解に刻み込まれた。

 それは、先日の《大雷邪巳(おおいかずちかみ)》戦――ではなく、その後日。例の愛想無しの青年・尾羽張と、三津草自警団主力陣が会した日。八尺瓊が口にした言葉。

 思い出すのは、半日と少し前の情景。三津草自警団の面々と言う日常に、尾羽張萩利と言うたった一つの非日常を加味しただけの、他愛も無い日常の延長。

 記憶の中の情景――刻は昼前、所はその際に尾羽張居室となった空き部屋。否応なく刻まれた記憶を紐解くと、一言一句違える事無く言葉が脳裏に蘇る。


   私は先程言いましたよね?貴女を敵手から守る――と


 この半日で、何度と無く脳裏を反芻した会話だ。


   しかし実際の所、私達が叢雲君を敵手から守る事は、言葉にするよりも遥かに困難なんですよ。


 脳裏を()ぎる(たび)、自分に言い訳をしていたような気はしたが、現実を冷静に受け止めていた気もした。


   現実として叢雲君を守れるような戦力の心当たりと言っても、この街にはそう多くはありません。


 知っているつもりではいた。しかしやはり、全然理解できていなかったのだと思う。


   貴女の傷を癒す事が出来る私か、鉄壁の―逆月―を生成する事が出来る伽模君。

   あとは単純に戦闘力で擢ん出ている海泥麒君。

   この三人くらいでしょうか?


 皮肉も嫌味も入り込む余地が無い物言いは、ただ現実を淡々と語っただけ。しかし、語られざる言葉の中に、少年の自尊心(こころ)を抉る影刃が潜んでいた。

(僕は――強い――)

 今一度、確かめる。決めた意思を表明するため。

(僕は――弱い――)

 決めた意思を決意するため。

 そして、記憶に残った会話の主文を繰り返す。


   叢雲君を守れるような戦力

   私――伽模君

   海泥麒君

   この三人くらい


 挙げ連ねられた名には、刻まれていない名前。佐土布都建御と言う、この街で最も叢雲の少女を守りたいと願う少年の名前。

 語るでは無く、語らぬ事で告げられた、戦力外通知。

(――僕では……叢雲を護るに足る力は無い……)

 十数年――親の代から数えれば二十数年――も居を共有し、3年もの月日に渡り共に刃を並べたはずの自分よりも、どこの馬の骨とも知れぬ外来にその護りを頼まざるを得ない程に、自分に力が無かった。

 悔しかった。歯痒かった。情けなかった。不甲斐なかった。好きな女の一人も護れない自分が、男として許せなかった。

 だから――だから、こうして扉の前に立つ。男としての自尊も、戦士としての矜持も金繰(かなぐ)り捨てて。だが、それらを確実に取り返す力を得んが為に。

 少年は、立つ。昼間の会話が為された部屋の、扉の前に。

 少年は、()つ。自らを鍛える為に、少年はその選択肢を選んたのだった――


――――――――――――――――――――


「僕を、鍛えて欲しい」

 叩扉(ノック)の礼儀も御座なりに、開口一番の少年の言葉。部屋の中を確認も無く、だが確実に居ると思われる人物に向かっての一言。

 言葉を吐いてから、たった一部屋の尾羽張邸を見廻す。白色発光の室内灯は、町の中央にある発電施設から電力供給を受けて明るく室内を照らしていた。

 目的の人物は、確かに居た。安物の寝台(ベッド)の上に腰を落とし、ここ数回の面会で見慣れた気怠(けだる)さを持って迎える尾羽張萩利。その姿を確認し、少年は言葉を繋げた。

「何やってんだ?」

 本来言いたかった言葉とは全く関係ない質問が、口から零れた。

 問い掛けの言葉に、尾羽張の気怠げな瞳が佐土布都を映す。その瞳がいつもの――と言う程親交があるワケではなかったが――無気力感から来る気怠さとは異なり、疲労感から来る気怠(ソレ)だと気付くには、数秒の時間だけあれば充分に過ぎた。

「あら、佐土布都さん。今晩は」

 少年の名を呼ぶのは、八尺瓊から安静を言い渡されているはずの伊真と、

「あ、建御兄ちゃん」

 その伊真の監視役を言い付かっているはずの水無月だった。

 何故義母子(ふたり)がこの部屋に居るのか、何故義母子(ふたり)して尾羽張の無造作に長い髪を三ツ編みにしているのか、何故義母子(ふたり)に尾羽張がされるが侭なのか――色々な疑問が駆け廻りはしたものの、取り敢えず軽く手を挙げて無言の挨拶を交わすだけに留めた。

 義母子(ふたり)が「佐土布都さんもご一緒に如何(いかが)ですか?」「建御兄ちゃんも一緒にやろうよ♪三ツ編み♪」と誘いを掛けるが、丁重にお断りすると、二人は黙って三ツ編み作業へと戻る。

 部屋主の了解も得ず足を踏み入れると、部屋の隅に追い遣られた円筒造(パイプ)椅子を引っ張り出し、これまた了解も得ずに腰を掛けた。

「僕を、鍛えて欲しい」

 足を組み、膝を掌で抱え、軽く身を乗り出すと、真正面で気怠さの視線と向き合い、二度(ふたたび)同じ言葉を吐いた。

 空虚な威圧感に怖気(おじけ)付く事無く投げ掛けられた言葉に、尾羽張は瞼を落とした。その姿は、何かを深く自問する哲学者のようにも、全てを廃棄し放棄した遁世者のようにも見えた。

 伊真と水無月だけがせっせと尾羽張の髪を三ツ編む以外、空気が止まった時間を5[sec]程経て――尾羽張は重い瞼を上げた。

「何故……?」

「強く、なりたいから」

 咀嚼するような尾羽張の言葉を受けた少年の言葉。確かな決意を乗せた言葉だったが、尾羽張には届かなかったようだ。

「だから……何故、強くなりたい……?」

 佐土布都は、大きく息を吸うと――沈黙した。回答は決まりきっているのだが、それを言葉にするのはどうにも決まりが悪い。沈黙の理由は、ただそれだけの事。

「自警団々長の地位を、叢雲さんから奪う為、でしたよね?」

 その沈黙に割って入ったのは、尾羽張の髪を三つ編む手を休める事無い伊真。助け舟のはずが、佐土布都に憮然とした表情を取られてしまった。苦笑し、二人の会話を邪魔しないように無言の三ツ編み作業へと意識を没頭させる。

「そう言う事だ。解かったか」

 憮然としたまま、投げ遣りに佐土布都。

 解かったかと言われて解かるのならば、話は早いものだ。だが残念な事に、それだけの話で納得できるほどには、尾羽張の精神構造は単純ではなかったし、佐土布都と言う少年の内面を理解してもいなかった。

 軽く(すわ)りを直し、胡乱(うろん)な瞳に鈍く佐土布都の姿を映す。

 そして――またしてもの、沈黙。

 映された佐土布都の表情(かお)に戸惑いの感情(こころ)射影(うつ)し出されるのは、尾羽張の作り出した沈黙が持つ真意を掴みかねるが故。先刻までの人間らしさを剥ぎ取った、無気力だけを唯一の仮面に付ける彼の心の(うち)。それを読み取る事は、読心術者(テレパシスト)ならざる身には(およ)そ不可能なのではないだろう。

 尾羽張も、30[sec]の沈黙を守った後、(ようよ)う一つの解答を導き出す。即ち、「質問の意図を、『声』と言う形に成さねば、回答を得る事は(あた)わぬ」と。

 重く錠ぜられた唇を開け、その意図を形に成す。

「何故……その座を欲する?」

 その言葉は、尾羽張の舌が紡いた言葉(モノ)ではなかった。ただ間抜けに開けた唇をそのままに、少なからぬ驚愕の瞳を向けただけ。尾羽張の口調を()ね、一言一句違わぬ彼の言葉を代弁した伊真を。

 尾羽張の視線を、悪戯が成功した子供のような無邪気な、同時に静かな微笑で受け止めると、

「ですよ、ね?」

 と、肯定を言葉少なに求めた。勿論、尾羽張には否定する事などできようはずもない。

 その感情の表情も僅かに数秒の事。佐土布都に向き直った時には、瞳にはいつもの胡乱さが蘇っていた。

(何故、その座を、欲するのか……)

 問われた佐土布都少年は、思い出す。彼がその座を欲するに至った過去の出来事を。淡く芽生えた、小さな決意を。


――――――――――――――――――――


 その日は三年前、佐土布都少年がまだ13歳だった頃。春が終わり夏に入ろうかと言う日だった。夜明け間近の時間帯、大規模な暴力集団が街を襲った。理由は記憶に定かではないが、単純に略奪目的だろう。

 襲撃の報を受けた佐土布都少年は、父・建一郎(けんいちろう)に抱かれ地下に(しつら)えられた避難所へと街の非戦闘員として収容された。

「父さんは、自警団員として街を守ってくる。ちょっとだけ待っててくれよ」

 そう言って笑い、《建御雷神》を佩いて外へと飛び出した。武芸の達人とまでは行かずとも、日々の鍛錬を欠かさず肉体を鍛え、街でも随一の戦士として戦う父の背中を、建御も笑顔で見送った。そして、それが最期の父の笑顔となった。

 父の帰りを待つ事体感時間で2時間程度。唐突に体を――いや、魂を襲う苦痛。苦痛に体を掻き毟り、床を転げ回った少年の手に、父の背中と共に見送った『聖剣』《建御雷神》が握られていた。

 勘の鋭い住民たちの幾人かはその事実に気付いたが、少年は気付けなかった。

 父の死を知ったのは、それから更に1時間後。若くして自警団々長の座に就任した、自分と然して年齢も違わない少女・叢雲薙葉の口から聞かされた。左右に八尺瓊と八咫の二人を率いて、後悔と哀悼を共に語った。襲撃者達の頭領――後で詳しく聞いた話では、神代級(ミシカル)の『聖剣』《Vjaya(ヴィジャヤ)》を携えた『剣聖』だったらしい――を追い込みながらも、背中からの不意を討たれ倒れたらしい。

 叢雲の言葉と、魂に受け継がれた《建御雷神》で父の死を現実として受け止めた少年は、哀しみのままその場から逃げ出した。襲撃で多くの被害を受けた街並みを抜け、街から外れた大川原の(ほとり)で膝を抱えて泣いた。青々と茂る草の絨毯に座り、現実に打ち(ひし)がれて泣いた。

 襲撃時間から逆算すると、半日以上は泣き続けただろう。川面(かわも)が夕日の朱に染まる頃。少年の隣に人の気配が生まれた。フと視線を遣れば、そこには自警団々長の少女の姿。

 その姿を視界に収め、すぐに視線を川面に移す。沈黙の少年に、少女は語りかけた。

「……すまない……。私――オレが、もっと早く駆け付けれていれば……建一郎小父(オジ)さんを、助けれたハズだった……」

 その言葉に、佐土布都の視線が殺気を孕み、叢雲へと突き刺さる。流し尽くした涙に赤く腫れ上がる瞼の底から、射竦める。

「なんで――!」

 しかし、言葉はそれ以上形を成さない。解かっている、叢雲が悪いワケでは無い。父はただ自警団員としての責務を全うしただけ、叢雲が間に合わなかったのは単なる結果論。少年自身は少女の奮闘を見た事があるワケではないが、彼女が父を含めたあらゆる住民を見捨てるワケがない。彼女は建一郎を信頼し、他の団員を援護(カバー)しつつ己の責務を全うしていたにすぎない。

 それでも、彼女の事を罵倒出来れば気が楽になっただろう。だが、まだ子供であっても、愚かでは無かった少年は、少女の奮闘を否定する事は出来ず、哀しみと怒りの矛先を失った視線を川面へと再び投げ付けただけだった。

「……何も……言わないのか?」

 川面を見詰める少年に、横目で尋ねる。

 少年は川面を見詰めたまま、返す。

「薙葉が……悪いワケじゃない……。そんな事くらい、解かってるよ……」

「いや、オレは自警団々長として、街の皆を守る義務がある。その義務を全うするからこそ、この街で権力を持っているんだ。そして、『街の皆』の中には、当然――お前の父さんも含まれている。ただ手を下していないだけで、オレの責任だ」

「違うよ。薙葉は自警団々長として責任を果たす最大限の努力を怠っていない。難しい事は僕には解からないし、上手に説明も出来ないけど……それでも、薙葉は悪くない。父さんも、薙葉の事を恨んでなんかいない。父さんが……大事な()を、恨んだりするもんか」

 抱えた膝に、唇を埋める。亡き父の姿を、最期の笑顔を記憶から呼び覚まし、また涙が出て来た。

 膝頭に涙を押し付ける少年の頭を、剣術に明け暮れた少女の掌が優しく撫でる。涙に濡れたままの視線を少女に遣ると、少女の瞼が夕日の紅よりも少し赤く腫れていた。父が血の繋がりも無い少女を娘のように大事にしていたのと同じく、少女もまた父を血の繋がりが無くても父のように慕っていた事を思い出す。

「お前が赦してくれるなら、オレも少しは救われる。でも……それでもオレは、やはり三津草自警団々長なんだ。お前の父の死を忘れないし、建一郎小父(オジ)さん――建一郎父さんの死も忘れない。これ以上の犠牲を出さない為にも、強くなる、力を磨く。だから、オレがどこまで()れるか、お前が見張っていてくれ」

 夕日を真っ直ぐに見据えたまま、少女が言った。

 二人の血の繋がりの無い姉弟(きょうだい)が、沈む夕日を眺めた。風が抜け、水が流れ、時が経る。

 弟が沈黙を破り、優しく頭を撫でる姉の手を退()けた。数時間振りに脚で大地に立ち、固まった背筋を伸ばした。そして――夕日へ向けて腕を伸ばした。

 伸ばした右手を緩く拳に握ると、その周囲の景色が揺らぐ。

 右手に発生(うま)れる、紅色の星屑の乱舞。夕日の中で更にそれを塗り潰す鮮烈な紅の乱舞は、腕先から更に2[m]より伸びて行く。

 伸びた星屑が緩やかに棒状に結晶し、集束(むす)ばれる。

 散華(はじ)けた後には、鋼の刃紋の優雅な直刀。成長過渡期の少年には余りにも不釣り合いに長い直刃の『聖剣』《建御雷神》。

「綺麗な、紅の色だったよね」

 切っ先を夕日に向けたまま、少年。

「父さんが大好きな色だって。地に沈むまで、最期まで真っ赤に燃える夕日の色が、父さんが大好きな色だって。夕日を見る度言ってたっけ。耳に胼胝(タコ)が出来る程聞かされたよ。飽きるって、何度も笑いながら返答(かえ)したっけ。でも、飽きる事なんて無かった、この燃える夕日の火紅(あか)色は、いつの間にか僕の大好きな色にもなっていた」

 右腕を軽く持ち上げ、下へと振り下ろす。風を斬る音が、甲高く鳴った。

「僕も……父さんのように、強くなりたい……」

 夕陽の色を瞳で反射(かえ)し、少年が少女を見下ろす。

 少年の言葉に、少女も立ち上がる。少年より少し高い視線を、やはり同じように夕陽に向け、やはり同じように右手を夕陽へ向ける。

 そして――発生(うま)れ、集束(むす)び、散華(はじ)ける星屑。その色はしかし、少年の星屑(それ)とは異なる、若草の色。

「建御。お前が力を貸してくれるなら、大歓迎だ。オレが鍛えてやる。街の皆を守れるように。そして、建一郎父さんの分まで、お前を守り抜いてやる」

 同じく夕陽を瞳で反射(かえ)しながら、熱い夕陽を射抜き返す。

「オレは守る、この街を。建一郎父さんは言ってた。この街は、オレ達の――」

 そこで言葉を一度切り――小さく首を横に振り、言い直す。

「この街は、私達の街だ。私達のような若く未熟な、でも希望溢れる未来を生きる若草達の街だって。重吾(おとうさん)が守ってきたこの街は、お父さんが私達若草の為に守った街だって。だから私は、大好きなこの萌える若草(みどり)色の街を守りたいの。だから――さ」

 一人称を自警団々長としてではなく、一人の少女の言葉に戻した瞳で、少年の真摯の瞳を真っ向から受けて反射(かえ)す。そして、言った。

「建御に、手伝って欲しい。私を、守って欲しい」

 その穏やかな、しかしあまりに多くの責務を背負い疲弊した義姉(あね)表情(かお)に――

 佐土布都は、夕日に当てられて頬が熱くなったのが認識(わか)った。夕日に当てられて頬が赤く染まるのが予想(わか)った。

 その時はまだ、実は理解できていなかった。それが、淡く小さな恋心だったと言う事が。


――――――――――――――――――――


 物想いに耽っていた時間は一体どれ程か――伊真と水無月の二人の三ツ編み状態を見ると、実は数秒程度だったらしい。

 思考を現在に巻き戻し、佐土布都は改めて尾羽張へと向き直る。そして、答える。

「薙葉を、守りたいからだ。僕が薙葉より強くなれれば、薙葉を自警団々長の責務から解放してやれる。薙葉を自警団々長の責務から解放してやれれば、薙葉を一人の少女に戻してやれる。僕は――薙葉を守りたいから、薙葉の自警団々長の椅子が欲しい」

 一気に捲し立てた。

 あれから3年。少年は叢雲の指導の下、実力を上げていき、今では三津草自警団団員でも有数の実力者となった。しかし、まだまだ父にも義姉にも及ばない。だからこそ、強くなりたい。人並に成長した恋心と言う下心があっても、その決意は本物だった。

 尾羽張の返答を待つ佐土布都。後は、彼が首を縦に振るか、横に振るか。

 尾羽張が、小さく息を吸い、唇を返答の為に開けた。

「出来た~~~♪」

 響いたのは、黙々と三ツ編み作業を進めていた、水無月の快哉の声だった。――因みに、尾羽張が水無月と伊真に髪を三ツ編みにさせていたのは、尾羽張との第一印象が最悪だった水無月との友好関係(コミュニケーション)好化の為の行事(イベント)で、断った尾羽張の耳元で散々泣き言を零して折れさせただけだ。

 尾羽張は、ガックリと(こうべ)を落とした。

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