リランド村4 ~聖騎士団
セシルとゴルドにとっては待望の、グリッドにレクルが同行することが決まり、ソロ生活が解消された。
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~~~トゥース暦494年1の月34番の日
アガンチュード王国・ロンド領
グリッドは昨夜合流を果たしたレクルと共にロンド領都に向かっていた。今は歩きながらレクルと現状の再確認をしている。
「生存者の話では、アマリというシスターが来た数日後に盗賊が街を襲い、アマリ(と娘たち数名)を攫い何かの書類を探していたんだよね?」
「アマリは孤児院のシスターだし、孤児院か教会の書類と考えるのが普通かな。で手に入れた書類を持ちだして故郷の村に逃げた。」
「そして誰かが盗賊を雇ってまで書類と彼女を連れ戻すほどだから・・・」
「孤児院じゃそんな金無いし、たぶん孤児院の上部組織、ロンドの教会か同じくらい金がありそうな領主あたりが絡んでんじゃねぇかな」
「あとは、奴隷商とか。数人の若い娘も攫ってるから裏取引で奴隷商に流れてる可能性もあるよね」
昨日の夜から秘密も共有しギルドカード使い方も教えてもらい、セシルにレクルと合流できた旨の報告をしてみたりと、少し打ち解けてきたグリッドも割と早いうちから気軽な言葉遣いができていた。
しかし、グリッドはバグナスがシキリを通じて依頼してきた事と敵討ちの話はしていない。それはレクルと合流する前に受けた内容であったし、話を聞いたレクルに今更反対されても困ると考えたためだ。
なのでレクルには”通りかかった村で偶々生存者に遭遇し攫われた人の奪還の依頼を受けた”とだけ話している。
「盗賊団もアマリも領都に行った可能性が高いって事ね?」
「そう。行って孤児院と教会とロイド子爵、あと奴隷商の情報収集かな」
「わかった、そうと決まれば急ぎましょう!」
グリッドとレクルは話をまとめると領とロンドへの歩を速めた。
***
グリッドたちがロンドまであと数時間というところで2人の探知に引っ掛かる気配があった。
レクルもグリッドほどではないが、≪気配探知≫と≪気配遮断≫が使える。昨日グリッドがレクルの気配を読み取れたのは、グリッドの方がスキル使いに慣れているから探知できたという事らしい。
「あれは・・・聖騎士?」
騎乗しこちらに近づく4名の男達のうち3人は白銀の鎧を身に着け、その胸にはトゥース教会聖騎士団の紋章”天秤に槍と剣が斜めに交差”している紋章が見て取れる。残りの一人は同じくトゥース教会の白い神官服を着ていた。
グリッドとレクルはそのままやり過ごそうと首を垂れ、視線を落としたまま聖騎士たちの邪魔にならぬよう道の端を歩く。
しかし、聖騎士たちは不意に馬の歩みを止めると、今すれ違ったばかりのグリッドたち2人を背後から呼び止めた。
「そこの者!止まれ!」
2人は何事かと振り向くと、騎士のうち最も若そうな一人が、グリッドの方に馬を寄せ馬上から話しかけてきた。
「お前たちは何処から来たのだ?どこへ向かう?」
「私達はエルコンドからロンドに向かう途中の冒険者です」
表情を変えずに威厳を保っていた騎士の顔が一度ピクリと反応する。
「お前たち、ここに来る途中にリランドという村に寄ってはいないか?」
リランドの名前を出され今度はグリッドがピクリと反応する。
<確かゴルドさんの話では、ロンド近くにいた聖騎士が子爵に協力を申し出たとか・・・それがこいつらか?ゴルドさんも子爵の代理人の言い分が胡散臭いようなこと気にしてたからな・・・両方から情報を入手してみればいいか>
「どうした?寄っていないのか?」
再び問い直す若い騎士。
その会話を離れてみていた他の騎士達も近づいてきた。グリッドも極力動揺を見せないよう気を遣いながら丁寧な物言いに努めた。
「あ、あぁいえ・・・寄って来ました。その件でこれからロンドに向かう所でした」
聖騎士の様子が変わり顔を見合わせると、聖騎士の責任者らしき人物が馬から降りてグリッドたちの正面に立つ。
「先ほどは馬上から失礼した。私はトゥース教会聖騎士団・教区監査隊・隊長のダン=ラクモンドという。ロンド子爵から依頼を受けた者か?」
ダンと名乗った隊長は聖騎士というよりも武人という印象で、騎士や貴族にありがちな傲慢さを感じさせない男だった。
グリッドが答える。
「はい、そんなところです」
「そうか。できれば話を聞きたいのだが構わないか?」
「隊長、お言葉ですが冒険者などの話を聞くより実際に現地を調べたほうがいいのではないですか?」
最初に声をかけてきた一番若手の男がグリッドとダンの会話に口を挟む。と、間髪入れず別の男が釘を刺してきた。
「おいモンド、お前は隊長が彼らに声をかけてこいと指示を出した意味を理解できていないようだな。同じ現場も見る者によっては見え方も変わってくることもある。それにもし彼らが重要な情報を持っていたら、情報交換もできるだろう。違うか?」
「は、はぁ・・・確かにヤクト様の仰る通りです。失礼いたしました」
ヤクトに諭されたモンドという若い騎士が、すごすごと引き下がる。
なるほどヤクトの言葉に付け足すなら、もしここで必要な情報が揃うのならば、彼らはわざわざ現地に行く手間も調べる手間も省けるわけだ。
隊長もそうだがこのヤクトという聖騎士もなかなかの人物のようだ。とグリッドは心の中で感心する。
<この聖騎士達はそこまで警戒する必要はないかもしれない。ならば情報交換からしてみるか・・・>
グリッドはレクルと目で合図を交わし、彼らと話しをしてみることにした。
***
グリッドと聖騎士団一行は、街道から外れ大きな木が一本立っている草むらに場所を変え、腰を下ろして話している。
彼らはトゥース教総本部直轄の監査をする部門の人達で、聖騎士姿の隊長ダンと隊員のヤクトとモンド、それと神官服姿のラークの4人で一緒に周っている。
今回は抜打ちでロンド領の南にあるオウカ領に出向き、仕事を終えてその帰り道なのだそうだ。そして道すがら商人の情報でリランド村の事件を聞きつけ、近くに居るのでロンド子爵に協力を申し出たらしい。
彼らの言う事が本当であればロンド子爵の言い分が杞憂だという事になる。
こちらからもレクルが今まで調べた状況説明をした。
ギルドを通した直接依頼の事と、”通りかかった村で偶々生存者に遭遇し攫われた人の奪還の依頼を受けた”と話し、アマリ・孤児院・証拠書類・盗賊団と、その黒幕を子爵・司教・奴隷商のいずれかではないかという予想まで話した。
「なるほど。それでお前たちは領都に向かっていた訳か」
「はい。なのでもし宜しければ皆様のお力を貸していただけませんか?」
グリッドはここの交渉をレクルに任せ、後ろで頷く事に専念している。この瞬間だけでもレクルの存在が有難い。
・・・
少し目を閉じ黙考すること数秒。目を開いてダン隊長が答える。
「いいだろう協力しよう。私達は教会のザッコ司教に抜打ち監査と称して探りを入れてみよう」
「ありがとうございます隊長。では私たちはロンド子爵と孤児院の方に行ってみます」
レクルは聖騎士たちの協力を得られた事に安堵し大きくため息をつきながら肩の力を抜いて微笑む。
その後、一行は情報交換を終えそれぞれに別れて領都に向かうことにした。
***
~~聖騎士サイド
「ダン隊長、会ったばかりの冒険者の言を信用して宜しいのでしょうか?」
一行の先頭を進んでいたモンドは、ダンの馬に自らの馬を寄せると、話し合い中に口にできなかった心配を漏らした。
「何が心配なのだ?」
「相手は騎士でも貴族でもないただの平民です。他人を騙す事も厭わない奴らですよ?私たちや司教、ロンド子爵を貶めようとしててもおかしくありません」
モンドの言葉を隣で聞いていたヤクトは溜息をついて言葉を反す。
「モンド。お前は何故教会に監査役があると思う?各地の司教や聖職者が不正を働いてないか監視監督する為だろう?つまりは聖職者であろうが欲に塗れて私腹を肥やす輩が居るから我々監査役が居るのだ」
ヤクトはさらに続ける。
「平民はこそこそと隠れる手段が無いから目立つ。が、多少悪知恵の働くものが多い聖職者や貴族は、見つからないよう隠れるのが上手いだけで、やってる事は平民と変わらん。ただ平民だからと決めつけるのは危ない考えだぞ」
「そ、それは・・・そうですが・・・」
返答に困るモンドに、ここまで黙って二人の話を聞いていたラークがさらに追い打ちをかけた。
「モンド、それだけではないよ。さっき男のほうが”エルコンドの冒険者グリッド”と名乗っただろう?」
「先日エルコンドから来た商人の会話を聞いたんだが、冒険者狩りのパーティーとレッドオークが率いるオークの集団、合わせて10体以上を単独で倒した者が確かグリッドと言っていたはずだ」
「えっ?じゃあ今のが・・・」
モンドは一瞬ギョッと驚きを隠せずにラークを見る。
「噂なんて尾ひれがつくからどこまで本当かは判らんけどね。知己になっても損はないと思うよ?」
それに付け足すように今度はダンが口を開く。
「まぁ、盗賊の件は子爵にも協力すると言ったしな。もし彼らの言う通りなら子爵にも恩が売れ監査の仕事もできるし、ダメならば盗賊退治と彼らを偽証罪で捕えればいい。こちらの腹は大して痛くないからな。乗ってやっても問題ないだろうよ」
ヤクトとラークはダンの言葉にうんうんと頷き、モンドはバツが悪そうに「そうですね・・・」と顔を掻きながら答える。
「とにかく、今はまずロンド領都に向かうぞ」
「「「はっ!」」」
一行は隊列を元に戻して、領都へ歩を進める。
***
~アガンチュード王国・領都ロンド・トゥース教会
街中に教会の7つ目(14時)の鐘が鳴り終える頃、ダン隊長以下聖騎士団一行は教会の門を潜った。
聖騎士団の”天秤に槍と剣が斜めに交差”している紋章を付けた騎士の来訪を知り、この教会を担当している司教ザッコが無駄に肉が付いた腹を揺らしながら慌てて走ってきた。
「フゥ・・・よ、ようこそ・・・ハァ・・・いらっしゃいました皆様・・・私がこの教会の司教ザッコでございます」
明らかに運動不足と酒でたるみきったザッコを見て、聖騎士団の4人は感じた不愉快さを表情に出さず、ダンが用件だけはなす。
「うむ、ご苦労。トゥース教会総本部監査局上級監査員のダン=ラクモンドだ。今日は抜打ちの監査に来た。明日から数日ザッコ殿の業務と会計状態を監査させてもらう。よろしく頼む」
「は、はい!承知いたしました。よろしくお願いいたします」
「ふむ。今日は宿で休み明日早朝から作業に入るいいな?」
「は、はい!承知いたしました」
ダンは不愉快な男から早く離れたいという感情を押し殺しながら、早々にその場を後にしようと他の3人に声を掛ける。
「よし、では行くぞ」
「「「はっ」」」
頭を下げたままダン一行を見送ったザッコは、冷や汗をかきながらも頭の中で必死に考えをめぐらせる。
<たしかリランド村の調査に協力すると言っていたはずだが、何故急にこちらの監査に入ったのだ?まさかロンド子爵が裏切ったわけではあるまいな・・・クソッ!とりあえずまずい書類はどこかに隠しておくか>




