リランド村3 ~追跡者
生存者からの依頼を聞いたグリッド。
思う所もあり受けることにした。
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~~~トゥース暦494年1の月33番の日
翌早朝グリッドは、バグナスに依頼を受けると伝えた。
リンが「身体で払う」という話はバグナスも渋々承知していたらしいのだが、リンは汚されることなく返され、さらに報酬は”奪われた金目の物を取り返したら、その2割をもらい受ける”と提案した。
ちなみにバグナスは、シキリ婆から
「しゃべりはからっきしだが腕はいいから大丈夫だの」とか
「依頼内容と報酬の話も直接その男にしてみるとえぇの。ひゃひゃひゃ!」
と言われていたらしい。
あの婆さんにしてみれば、グリッドが生存者の話を聞いて断らない事も、報酬もぼったくらないだろうと予め解っていたのだろう。
断われるはずもない。元加害者に与していてその被害者の苦しみを目の前に見せつけられたのだ。
しかも今グリッドには、セシルや少ないながらも大切にしたい人たちがいる。
<全てはあの婆さんの掌の上かよ。いつかギャフンと言わせてやる・・・>
***
グリッドはその日の夕方頃にリランド村に着いた。
盗賊の襲撃後そのまま放置されていた村は、広場に向かうにつれ腐敗臭と鉄が錆びたような臭いが強くなり、その中心には頭や腕・足であったと思われる肉片がばらばらに転がり、壁や地面至る所が真黒に変色していた。
血の臭いを嗅ぎつけた魔物達が食い散らかした様子は、戦場よりも凄惨である。まだ季節が春に変わって30日ほどとはいえ腐敗臭も酷く、また魔物が来る可能性を考えると夜は避けたほうがいいかもしれない。
「ここまで酷いと調べようがないな・・・」
時は夕方、もう少しすればあっという間に闇に包まれるだろう。今日の寝床を探すべく一度村から離れようとした時、常時展開している探知範囲内に微かな反応を感じる。
相手はどうやらスキル≪気配遮断≫を使っているようだが、グリッドの方が使い慣れているらしく、隠しきれていない漏れ出た気配をグリッドが拾ったようだ。
<この速さは・・・馬か?>
エルコンド側から単体でまっすぐこちらに向かってくるそれは、人間にしては異常な速さで動いていて、何かしらスキルを使って移動しているのかもしれない。
グリッドはスキル≪隠蔽≫を使い気配と魔力を遮断すると、気配が来る方向で見易い場所に移動し様子を窺う。
相手の気配がだんだんと近づきグリッドの視界に入った。シルエットや髪形からどうやら女性らしい。その彼女は何かを探すようにきょろきょろと見回しゆっくりと奥へと進んでいく。
見た所他に気配はなく単独で弓を担ぎ短剣を腰に佩いている。いわゆる狩人のように見えた。
<敵ではなさそうだけど・・・この村の関係者か?>
関係者であれば話を聞いてみたほうがいいか。念のため背後に周り距離を取ってから接触を試みた。
<・・・会話は戦闘だ、戦闘中だ>
自分に戦闘中と言い聞かせて、極力平静を装う。
「・・・お、おい」
「っ!?」
相手は不意に掛けられた声に驚き、振り返りざまに後ろに跳ぶと、腰に佩いた短剣に手を添えて警戒する。
「・・・何か探しているのか?」
「だ、誰?」
彼女は短剣から手を離さずに険しい視線をこちらに投げかけているようだが、周りはもう暗くなってきていて顔は良く見えなかった。
まずはこちらに戦意が無いことを示したほうがいいだろうか。グリッドは軽く両手を上げ自分から名乗った。
「・・・エルコンドの冒険者グリッドだ。あんたは?」
・・・
「・・・え?・・・グリッド?」
一瞬の間が空き、名前を聞き返してくる彼女。想定外の反応にグリッドも戸惑いが隠せずつい素が出てしまう。
「・・・え?・・・あ、あぁそうだ」
・・・
「グリッドォ~~!!」
グリッドの名前を聞いてわなわなと震えだすと、一歩二歩と前に出ると彼女はいきなり全速力でグリッドに向かって突進してきた。
「・・・え?」
グリッドはいきなり突進してきた彼女に面食らうも、身体が勝手に反応し伸びきった右腕を掴み引きながら、右足の前に自分の足をヒョイと出した。
すると、見事な出足払いが決まり、彼女は掴まれた腕を軸に綺麗な弧を描きながら、背中から地面に落ちる。
ガシッ
ドサッ!
・・・
「・・・え?」
間の抜けた声を上げ、天を仰いだまま目がテンになっている彼女は、自分に何が起きたかようやく理解が及んでくると、がばっと起き上がりグリッドを睨んだ。
「ちょっとグリッド!いきなり何すんのよ!」
会話は戦闘だ、と自分に言い聞かせれば上手く話せると刷り込んだせいか、咄嗟に反撃してしまった。我に返ったグリッドの顔が引き攣る。
「え・・・ご、ごめん。つい・・・」
「もー!感動の再会が台無しじゃない!」
「・・・え?」
<今、彼女は再会と言ったか?>
身長は自分より少し低いくらいで細身で茶髪ウェーブのかかったショートヘア。目鼻立ちはすっきりしていて、理知的ではあるが気持ち気が強そうな感じの女性。背中には弓を背負っている。
しかし、グリッドには目の前で怒る彼女に見覚えが無い。グリッドは正直に言った。
「誰だ?」
「私はレクルよ!」
彼女は体の埃を落としている間に落ち着きを取り戻したものの、グリッドの正面を向いた彼女の頬は少し不満そうに膨れていた。
<レクル・・・どっかで聞いた記憶があるけど思い出せない>
・・・
あ。
グリッドは10日近く前、ゴルドにレッドオークと冒険者狩りを退治した時の報告をしたときのことを思い出した。
<たしかついでに助けた女性の名前だったような・・・でもレクルって・・・>
「あれ?・・・レクルってエルフ・・・」
「あ~これ?ほら」
グリッドの疑問に納得したのか、レクルは左手小指にはめている指輪を見せてから、すっと抜いて見せると目の前にいた茶髪の女性の姿が金髪の女性に変化した。
その姿はエルフの特徴的な長耳・輝くような金髪ロングストレートに茶色の目・透き通るような白い肌。まさに見覚えのある女性が目の前に現れると、グリッドも驚いたように声を上げてしまった。
「あ!・・・レクル・・・だ」
「変化の指輪の効果よ。やっと理解してもらえた?」
覚えてもらっていたことが嬉しかったのか、レクルは一瞬相好を崩すが、投げ飛ばされたことを思い出し呆れたように愚痴をこぼす。
「やっと追いついて感動の再会がこれとか信じらんない」
「人間の時の姿見たことなかったからな」
グリッドも悪いとは思いつつも、見ず知らずの者に飛び掛かられたらしょうがないだろう。と軽く開き直り言葉を続ける。
「・・・そもそも何で追っかけて来た?」
そもそもそれが一番肝心な用件だったと思い出し、レクルは指輪をはめ直しながら気恥ずかしそうに俯いた。
「助けてもらったお礼を言いたかったのと・・・その・・・グリッドとパーティー組んで欲しくて・・・」
・・・
「・・・は?・・・なんで?」
グリッドと彼女は初対面なのだ、礼はともかくソロで通している男にいきなりパーティー組んで欲しいとか意味が解らない。するとレクルはスイッチが入ったかのように喋り出した。
「私が居たパーティーが、この前の冒険者狩りのせいで全滅しちゃったの。で、また誰かと組まないといけないのだけど、グリッドの事はギルドで何度か見た事もあったし、私の正体の事ももうばれてるし、恩人だし・・・ずっとソロなのも知ってったんだけど、どうせならグリッドと組みたい!って思って・・・」
「病院を出てからあちこち探してもすれ違いだし、周りの冒険者とギルド職員には”諦めろ”って言われたんだけど、諦めきれなくてグリッドの彼女のセシルさんに直談判しに行ったの」
「そしたらセシルさんにギルドマスターの執務室に連れていかれて、ゴルドさんともお話ししてセシルさんが『レクルさんならいいんじゃないかな?』って言ってくれて。セシルさんが折れたらギルドマスターもセシルが言うなら・・・って折れてくれて」
「『本当は他人の依頼の話をばらすのは良くないんだけど』って釘を刺されて、グリッドが今ロンド領の依頼を受けに行ってるから手伝ってあげて欲しいって言われて、すぐ追っかけてきたのよ・・・」
一気にまくしたてるように話されたせいでグリッドは一瞬怯むが、要はレクルの置かれた状況と熱意に、以前から”グリッドには誰かと組んで欲しい”と心配していたセシルとゴルドが乗っかったという事らしい。
「あ、そう言えばセシルさんが、グリッドには私から連絡しておくからって。あれ?聞いてない?」
「え?」
<連絡とる手段なんてあったっけ・・・あ!?>
すっかり忘れていたが、ギルドカードを新しくした際にセシルが『カードで連絡できるんだよ~』と連絡先を登録していたこと思い出し、慌ててギルドカードをアイテムポーチから取り出した。
カードを取り出すと見た事のない部分がチカチカ光っていて、レクルに使い方を聞きながらメッセージを読んでみる。
『レクルって子がグリッドとパーティー組みたいって。私と叔父さんは了承したから話を聞いてあげてね。セシル』
・・・来てた。
ハァ~・・・
グリッドは項垂れると大きく肩を落とし大きな溜息をついた。
「外堀埋められた感じだよな・・・」
レクルとセシルにとってお互いに渡りに船という事か。セシルが認めたという事は実力も性格的にもレクルなら大丈夫と判断したんだろう。
しかし、迷惑というよりは、そこまで理解して気遣ってくれる気持の方がありがたいと思える。ちょっと気恥ずかしかった。
「あ、あの・・・それで、どう?だめ・・・かな?」
レクルが申し訳なさそうな上目遣いでこちらに問いかけるが、グリッドはこれだけは聞いておかないといけない事を尋ねた。
「えと・・・それで、俺の事はどこまで聞いてる?」
「あ~えっと、過去の事とか人と話すのが苦手とかも一通りセシルさんから・・・」
「そうか・・・」
「私はそれでもいいからグリッドと一緒に行きたい!って思って・・・私の秘密も知ってるしおあいこだよね」
「そうか・・・」
ここまでお膳立てされて、それでもいいって言ってくれてるのに、断る理由がグリッドには思いつかなかった。
グリッドはレクルと視線を合わせずに頭を軽くかきながら答えた。
「わかった・・・よろしく・・・頼む」
「やった~!」
グリッドは大喜びするレクルを宥めて、とりあえず野営する場所を探しにリランドの村を後にすることにした。
***
~~~アガンチュード王国・ロンド領某所
男が敷地の中にある建物の一室に入る。
そこには日頃滅多に使われない様々な家具や道具が積まれ、埃避けの布が被せられていた。
通い慣れている男は、迷うことなく目的の重厚な机の前に立ちどまりその机を押すと
ズズズズズ・・・
見た目に似合わない程の軽さでずれた机の下には、まるで地獄に誘うかのように地下に伸びる階段が暗い口を開いていた。
男は躊躇う事無く階段を降り、横に伸びる通路を進む。すると暗がりで見えにくいが、階段の上から僅かに差し込んできた月明かりが当たり、正面に重厚な扉を浮き上がらせる。
勝手を知る男が扉に手を掛け力を入れて押し開くと、ろうそくの明かりが隙間から漏れてくる。
「よう旦那。いらっしゃい」
その部屋では、どう見ても真っ当には見えない数人の男達が、木製の粗末なテーブルを囲みカードゲームをしながら酒を煽っていた。
旦那と呼ばれた男は、部屋に籠る男達の酒臭さ汗臭さに顔を顰めつつ尋ねる。
「どうだ?そろそろ吐きそうか?」
「俺たちゃここの空気が湿っぽくて吐きそうなんですけどねぇ」
「ヒヘヘヘッ!」
と引き攣る様な笑い声をあげるリーダーらしき男。
「フンッ」
旦那と呼ばれた男は、鼻を鳴らし奥の牢屋が並ぶ通路に進む。
6室あるうちの一番奥の一室で足をとめると、牢の鉄柵越しに中にいる者を睥睨した。
そこには壁を背に座り両手を鎖につり上げられた女性が一人下を向いていた。
彼女は拷問を受けたのだろう。白かった服は引き裂かれ土と埃に塗れ、鎖で繋がれた手首は金属が当たり血が滲み、顔だけでなく体中に痣と切り傷が付いている。
「こいつも大人しく吐けばすぐ楽になれるものを・・・強情な奴だ」
男達の元に戻りその男は指示を出す。
「最近うろちょろ嗅ぎまわってる鼠が増えたらしい。せいぜい見つからないようにしてくれよ?」
懐から金貨を一枚出し、リーダーに投げるとその部屋を後にした。
次回投稿は5/21日17時予定です




