表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

転移ー天意

 俺は待ちに待ったVRMMOの人気タイトル「ハートコネクト・オンライン」の発売日、高校の授業が終わるとダッシュでゲームショップへ行った。予約はしておいたので、お金を払って家に帰り、さっそく起動した。

 体が浮くような感覚の後、僕の意識は宇宙の中で目覚めた。足元には白くてのっぺりとした円形の床があり、見渡す限り真っ暗で星が瞬いているのが見える。

 そして俺の目の前には一台のアンドロイドがいた。美少女を模して造られているけれど、わかりやすいように目のところに縦に線が入り、口もロボっぽい感じだ。似すぎると不気味に感じるっていうからね...俺はそうでもないけど。

「ハートコネクト・オンラインの世界へようこそ! 私は案内役のミーシャです! って疲れるな」

 そういうとロボっぽかったミーシャの姿は光に包まれた。その光が収まった時にそこにいたのは10歳くらいのかわいいつるぺた童女だった。

「やあ!ボクは女神アーク! 君はこのゲームを始めようとしてたんだよね?」

 つるぺた童女ははきはきと聞いてくる。こんなのは事前情報にもβ版にもなかった。どういうこと?あっけにとられている俺にかまわずつるぺた童女ーー本人曰く、女神アークは説明を続ける。

「でも君にはね、別の世界に飛んでほしいんだ。君がプレイしようとしていたハートコネクト・オンラインとそっくりの世界なんだけどね。で、そこの世界を救ってほしい。そこには五人の魔王がいる。そいつらのせいでその世界の人類は滅亡寸前だ」

「えっ、ちょっと待ってくださいよ! これはゲームなんですよね?そういう設定なんですよね?」

「ううん。君にはちゃんと痛覚もその他の感覚もある世界に転移してもらう。死んだら死ぬよ。まあ、君たちの世界のゲームっぽいところがあるから、君にはやりやすいと思う。あっ、ちなみに君はこっちに来てもらったわけなんだけど、同時に君の魂の一部を使ってね、もう一人の君を創ったんだ! それでもう一人の君は、今は多分ミーシャの案内で外見設定したり、初期武器を選んだりしてるよ。それでゲームを楽しんで、適当なところで切り上げて、晩御飯を食べに行くと思う。本当の君がそうするはずだったようにね。だから両親が悲しむとか、向こうの世界のことは特に心配しなくていい。どうかな?」

 どうかなもこうかなもない。俺は今かなり混乱していた。混乱が収まると俺は答えた。

「言っていることは分かった。でもその証拠は? とりあえず、もう一人の俺が今ゲームを楽しんでいるっていう証拠を見せてほしい」

 そういうとセレナはパチっと指を鳴らした。すると空中に画面が出てきて、今この場所で座り込んで目の前に浮かんだタッチパネルでなにやら設定をしている俺のーーもう一人の俺のーー姿があった。その前には本物のミーシャが立っていて、もう一人の俺の設定が終わるのを待っている。

「このとおりもう一人の君はこれから始まる冒険にわくわくどきどきしながら、設定してるよ。髪型で悩んでるみたいだね」

「どうでもいいよ...それで断ったらどうなるんだ?」

「ん? そこまで考えてなかったけどそうだね。んー」

 少し考えてアークは無邪気な笑顔でこう言った。

「初期武器初期金なしでその世界に放り出すかな!」

 ふざけんな!と怒鳴りたかった。しかしそうしても俺の立場が悪くなるばかりだ。こうなったらいっそ...

「じゃあそれを受けたら、何かチートな能力をくれるのか?成長率100倍とかそういうやつ」

「あー、ごめん。そういうのもないかな。最近突然、天界にそういうのはなしっていうお触れが出てさあ。本当はボクもそうするつもりだったんだけど……。でも軽微な補助なら許されるみたいだから、そうだね、とりあえず、君の能力値も好きに設定していいよ。本当は今の君の身体能力値のままで行ってもらうはずだったんだけど、それくらいなら許されると思う。でも全部マックスとかはちょっとだめそうだから、平均値の合計分をあげる。うまく割り振ってみてよ!」

「ちなみに俺のもともとの能力値は大体どれくらいなんだ?」

「うん、君の世界と同じでほとんど平均値以下だよ」

 がくっ。いや、なんとなくそうだろうなとは思っていたけど。

 でもゲームはかなり得意だ。このゲームを始める前からやっていたVRMOBA-ーヴァーチャル・リアリティ・マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナーーでは世界ランク上位に入っていた。VRMMOもその賞金でかなりの額を使えてこともあって世界ランクに入っているゲームがいくつかある。その辺りが俺が選ばれた理由なんだろう。

「ん?ほとんどが平均値以下ってことは平均値以上のものもあったのか?」

「あったよ。INT、つまり知能値だね。君、学校の成績は悪いみたいだけど、それは知識がないからだけであって、もともとの頭は結構いいみたい」

 へー。まあ自分でもINTは結構あるだろうとは思ってた。

「じゃあ、そういうことで!転移して魔王を倒してくれるっていうことでいいね?」

「他に選択肢はないんだろ?」

「ありがとう!君のおかげで多くの人々が救われるよ!」

 白々しい。

「じゃあ色々設定してね。ハートコネクト・オンラインとほとんど同じだからよろしく!」

「よくそんなそっくりな世界があったな」

「まあ私が開発者の頭に色々吹き込んだからね! もともといい成績を出した人を転移させるつもりでさ! 君がβ版でよく頑張ってたから、君を選んだんだ!」

「なるほどね。まあ徹夜でゲームして学校で寝る生活を結構続けたね」

 そのおかげもあってレベルランキング一位、コロシアムでの勝率も一位、最後にコロシアムで魔王チームを倒したのも俺である。まあβ版だからって弱めにしてたらしいけど。

 じゃあ設定か。外見はどうしようかな。プライベートとかそんなに気にしなくてもよさそうだし、そのままで行くか。むしろ俺の外見でだれかわかるやつに会ってみたい。そいつらは現実世界での知り合いってことだからな。

 で、初期武器。片手に一つずつ武器を持てる。両手で持てる大剣とかもあるけど。これはもう始める前から決めていた。でも一応事前情報にない武器があるかどうか画面をスクロールする...ないな。よし、予定通りこれで行くか。

 俺はハンドガン×2を装備した。

 ハンドガンの射程は7メートルで、そこまで弾丸が飛ぶと自動消滅するっていう仕様だった。その代わり実弾を装填する必要もなく自動生成される。この射程距離以上は飛ばないっていうのと弾が自動生成されるっていうのはハートコネクト・オンラインではほとんどの銃器の仕様になっている。

 でもハンドガンは射程がそこまで長くもなく、上級者の間では射線を見切られて躱されることも多く、β版では不遇の武器扱いだった。

 でも俺は考え出した...ハンドガンの活かし方を。β版の最後のほうに少し試してみたら結構有効だったから、俺が転移する世界でも有効だろう。

 武器を選んだことで自動的に最初のスキルジュエルがもらえる。これを使うとスキルを習得できて、習得したスキルを4つあるスキルスロットのどれかにセットすることで、初めて戦いで使えるようになる。ちなみにスキルスロットの変更はいつでもできるけど、使った後にはクールダウンの時間が必要で、その間は変更できない。だからスキルを使った直後にスロットのスキルを入れ替えてCD関係なく連続で使うってことはできない。

 俺がもらえたスキルジュエルは【マジックショット】【クイックリロード】【フルオート】がそれぞれ2つずつだった。ハンドガンを選ぶともらえる。説明はこうなっている。

【マジックショット】MPを20消費して攻撃力200%の弾丸を発射する。CD5秒。

【クイックリロード】6発分の弾丸の自動生成時間を1/2にする。CD20秒。

【フルオート】自動生成時間を1/4して10発の弾丸を自動発射する。CD60秒。

 ちなみにもともとのハンドガンの弾丸自動生成時間は1秒だ。結構長い。ナイフ系統なら1秒で5回攻撃できたりするので、その辺もハンドガンが不遇と言われる理由だ。

 俺はスキルスロットにそのうち4つをセットしようとして、思いついた。

「大したことじゃなければいいっていうことだったから、スキルジュエルをいくつかくれないか?そっちの世界内でも売ってるだろうし、そのくらいはいいだろ?」

「ううーん、上級以下ならいいよ。4つまでね。それからエクストラスキルのはいったスキルジュエルもあげるよ。これも上級以下ね」

 スキルジュエルは下級、中級、上級、超級、神級とランク付けされている。そして、野生の魔物から手に入ったり、ランクに応じた値段で売られたりしている。あと鉱山で出たりもする。超級以上になると発見されただけで大騒ぎになるレベルなので、上級までくらいがセレナが支援できる範囲内なのだろう。それくらいなら、入手に大金が必要になるが、持っていてもおかしくはない。

「OK。助かる」

 上級でも十分だ。僕は考えた結果、次の4つのスキルジュエルをもらった。

【ショートワープ】5メートル以内にワープ。CD10秒。

【ショートワープ】5メートル以内にワープ。CD10秒。

【スキルCD3/4】スキルのクールダウンが3/4になる。常時発動。重複不可。

【獲得経験値増加】

 最後のは転生物でよくある成長補正だ。これがあるといろいろと便利だ。……それにしても自分が本当に異世界に転移するとは思ってもいなかった……。

「あー、なるほど。ワープしながら撃ちまくる近距離ガンナーがやりたかったんだね。でもそれなら【瞬歩】でよくなかった?あっちの方がCD短いし」

「ワープだと麻痺とかスタン状態でも使えるからな。瞬歩とか動作系だと一応体動かす系だから使えないだろ?」

「あー、なるほどね。ガンナーだと柔らかいからスタンで動けなくさせられたら終わり、みたいなところあるもんね。なるほどなるほど」

 さて、じゃあ、あとは能力値の割り振りか。HP、ATK、DEF、MAG、MDF、INT、SPD。MDFはマジックディフェンス、特防だな。あれ、INTは固定されてるな。

「INTは固定値なのか?」

「頭の中いじられたい?」

「まあ、それは確かに嫌だな。そういうことならこのままでいい。別に知識が増えるってこともないんだろ?」

「そうだね」

「じゃあこのままでいいよ」

 銃器を使うときは使用者のATKは関係ない。銃自体のATKが適用される。剣とかだと使用者のATKと剣のATKを合わせた値が攻撃力になる。銃自体特にATKが高いわけでもないので、使用者のATKが含まれない分、総合的な攻撃力はどうしても接近武器には劣る。その辺も人気がない理由になっている。

 まあ、僕が考えている型には関係ない。そういうわけで、ガンナーにATKは必要ないからSPDにまわして、MAGもいらないかな?マジックガンナーもいるけど俺はいいか。とはいえ一応平均値の半分は残しておいて、残りをSPDにまわそう。それから物理攻撃は食らいにくいと思うから少しDEFからMDFにまわそう。

 あー、一応ATKも半分残しておくか。銃を失ったときのことも考えてな。

 ポイントをそれぞれ配分し、それぞれ決められた数の倍数で実数値が決まる。結果こうなった。平均値はそれぞれ17だ。

HP 340 (17×20)

ATK 32 (8×4)

DEF 26 (13×2)

MAG 32 (8×4)

MDF 42 (21×2)

SPD 105 (35×3)

「このSPD105っていうのはどれくらいなんだ?」

「えっと、100メートルを8秒台で走るくらいだね。瞬発力もかなり高い。数値だけで言えば魔王よりも若干上かな?」

「なるほどね。まあどうせ実際にはスキルでだいぶ変わってくると思うし、あんまり気にしないほうがいいよね」

「そうだね! こっちの世界の魔王はβ版の魔王よりもっとずっと強いしね!」

「そうだろうね」

「じゃあ、準備はこんなもんでいいかな。今からハートコネクトの世界へ転送するよ! 誰にも見つからないように路地裏に転送するね! 基本的にあまりハートコネクト・オンラインと変わらないけど、詳しくは街の人たちに聞いてね!」

 そういうと俺の体が淡い光に包まれ始めた。光がだんだん強くなってきたところで俺はふと思いついた。

「あ、待て。せめて最初の一か月分くらいの生活費とか、道具を買うためのお金とかくれよ。それくらいなら別に過干渉にもあたらないだろ」

「あっ、忘れてた! 最初からそのつもりだったのに! えっとゴールド、どのくらいかな、このくらいあればいいかな」

 慌ててそういうとセレナの手に麻袋が出現した。その中には何かがずっしりと入っている。セレナはその袋を俺に渡そうとした。しかし俺が手を伸ばすよりも早く、俺の体はひときわ強い虹色の光に包まれ、その場から掻き消えた。




 




☆☆☆

末長いおつきあいになれれば幸いです。

誤字脱字、誤用、わかりにくいなどありましたら、該当箇所をご指摘いただけると本当に助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ