悪(ワル)
それは私が会社の帰り道、国道を走っていたときのことだった。
時間もちょうどどの方も就業時間だったためか、国道はそれなりの渋滞だった。
誰しもが早く家に帰りくつろぎたいと思っていたに違いない。
その国道は田舎ながら三車線あり、私は一番左側。
三台が並列しながら進んでいったその先だった。
パリラパリラパリラ
ヴンヴンヴヴン
我々の目の前にはオートバイの集団。
いわゆる「族」と言うヤツだ。
三車線をふさぎ、殿を努めるものは左に右にオートバイを揺さぶって後続車を集団内に近づけまいとしていた。
誰しもが
「ああ何だよ」
「早く帰りたいのに」
「パトカーでも来てくれりゃいいのに」
そう思ったに違いない。
そんな考えを余所に、その集団はパリラパリラと自分たちの走りを誇示していた。
その時だった。
ピーポーピーポー
ピーポーピーポー
警察車両ではなかった。
救急車だ。
その緊急車両は、我々の渋滞の真ん中を抜けようとしていた。
我々は仕方なく、車両を右や左に寄せ合った。
救急車は、ゆっくりではあるが渋滞を抜け、先頭に躍り出た。
だがその先にはオートバイの集団がいたのだ。
しかし、その自分の走りを思うままにしていた集団は我々と同じように右に左に車両を寄せ合い、救急車を先に行かせたのだ。
救急車が行った後、また元通りに国道を塞いで殿は右に左に動いていた。
さっきと同じだ。
だが私の心にはなぜか最初ほどのイライラはなくなっていた。