表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悪(ワル)

作者: 家紋 武範

それは私が会社の帰り道、国道を走っていたときのことだった。

時間もちょうどどの方も就業時間だったためか、国道はそれなりの渋滞だった。


誰しもが早く家に帰りくつろぎたいと思っていたに違いない。


その国道は田舎ながら三車線あり、私は一番左側。

三台が並列しながら進んでいったその先だった。


パリラパリラパリラ

ヴンヴンヴヴン


我々の目の前にはオートバイの集団。

いわゆる「族」と言うヤツだ。


三車線をふさぎ、殿(しんがり)を努めるものは左に右にオートバイを揺さぶって後続車を集団内に近づけまいとしていた。


誰しもが


「ああ何だよ」

「早く帰りたいのに」

「パトカーでも来てくれりゃいいのに」


そう思ったに違いない。


そんな考えを余所に、その集団はパリラパリラと自分たちの走りを誇示していた。


その時だった。


ピーポーピーポー

ピーポーピーポー


警察車両ではなかった。

救急車だ。


その緊急車両は、我々の渋滞の真ん中を抜けようとしていた。

我々は仕方なく、車両を右や左に寄せ合った。


救急車は、ゆっくりではあるが渋滞を抜け、先頭に躍り出た。

だがその先にはオートバイの集団がいたのだ。


しかし、その自分の走りを思うままにしていた集団は我々と同じように右に左に車両を寄せ合い、救急車を先に行かせたのだ。


救急車が行った後、また元通りに国道を塞いで殿(しんがり)は右に左に動いていた。


さっきと同じだ。


だが私の心にはなぜか最初ほどのイライラはなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 題名に釣られてやってきました。 救急車を先に行かせる族に「ほっこり」しました。 族の方の身内に救急車にお世話になった人が居たのかな? とか勝手に妄想したりして。 [一言]  私が子供の頃は…
[一言] おもしろいですね。 特段いいことをしたてわけでなくても、「悪」でも自分たちと同じ血が通った人間なんだとわかると、許したくなるのかも^_^ 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』で、御釈迦様がお情けをかけ…
[良い点] 迷惑をかけることに変わりはないんだろうけど筋を通すところはあるんだなとほっこりしました。 [一言] 最近はたまに爆音が聞こえる程度で集団で走っているのは見かけないかな。時代の流れを感じます…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ