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7 いざ、初クエストへ出発する

「殺されちゃったお祖父ちゃんの声が、もう一度聞きたいです」


そんな願いからネェルに与えられた力が、ネクロマンサーというクラスらしい。


「ふーん、それじゃ、アビリティはどうなってるの?」


細身ながらセクシーな容姿のベネッタは、お姉さんらしい雰囲気を漂わせつつ、背後からネェルの肩に手を掛けている。


「アビリティ……? 付与された能のことでしょうか。ええと、利便の能という加護をいただいたようです。」


ユーティリティ、か。

探索や採集や偵察など、戦闘以外の場面で効果を発揮するスキルのためのアビリティだ。

前線で戦う性格でもなさそうだし、俺達と一緒に動くなら、その方が役に立ちそうだな。


「それで、どんなことができそうなのかな? 冒険者は、他人には自分の力を秘密にしておいた方がいい場合もあるけれど……。」


ベネッタが、一応ネェルの意思を尊重する形で打診している。


「はい。今の私には、一人で探索に行けるような力はありません。皆さんのご厚意に、従うまでです。」


ミケが、杖をかざしてネェルに祝福の光を贈ってみせる。

キラキラと光の粒が、ネェルの頭上を漂う。

特別な効果はないが、PC同士のやり取りのための、エモアクションの一つだ。

「安心するニャ。ワシの目の黒いうちは、ネェルを守ってみせるニャ。」


「ミケ、あんたの目は蜂蜜色だよ。」

それに、中身はおっさんぞ。

俺がミケに軽く突っ込みを入れると、ネェルが「ふふ」と声を上げて笑った。


「くっ。この犯罪者どもめ。」

ベネッタがネェルを抱きかかえて頬を寄せている。


「さ、おねぃさんだけに、お話ししてごらん……。パーティのみんなには、内緒ないしょだよ……。」


ゴツン、と音が聞こえるほどの拳骨を墜としたのは、ガガーリンだった。


おお、係長も、こんな突っ込み方、するんや!


この際だからということで、ネェルをミケネコ建設クランにも招待する。


この世界の情報源ということでは他の冒険者とつるんだ方が有益かもしれないが、俺達が何も知らなさすぎることを説明するのが面倒だし、ひょっとすると騒動の種にもなりかねないというのがアウグストの考えだった。


あと、ネェルには色々な意味で実験台という役割もあったりするのだが、そこは皆黙っている。

大人ってやつは!


さて、一応他の冒険者から距離を取り、本人から聞き取ったスキルは、改めて皆に首を傾げさせるものだった。


発動型アクティブスキルとして、「死者の声」。

常時発動型パッシブスキルとして、「死者の耳」。


「何でしょうね……。」

この中ではMFOを一番やりこんでいるはずの俺にも、周辺ネタにも詳しいはずのアウグストにも、該当するようなスキルは心当たりが無かった。


「字面からすると、死者と対話ができるってことなんだよな。」


なんというか、ストーリー上のNPCが持つ能力としてはありそうだけれど、通常のクエストでどう使うものかは想像がつかなかった。


「ま、他の武技や術と合わせて、クエストの中で試してみるしかないでしょう。」


「それもそーね。私達だって、スキルに関してはこの子と似たようなものなんだから。俺達のチュートリアルは、これからだ!ってね。」


アウグストとベネッタの楽観的なノリで、まずはクエストに出てみることになった。


いよいよ俺達はギルドのドアから外に出た。

一瞬視界が白い光に包まれ、目が慣れるとそこは森の入り口だった。


「おお、森林(1)ですね。」


「はー、リアルサイズだとこんなんかー。めちゃめちゃファンタジーだぁ。」


おいおい、ネェルに聞かれるぞ、と思いつつも、俺も興奮を抑えられない。


うおー、これって、剣と魔法の世界やんけーっ!!


ガンガンと、大盾を鳴らして両手を高く掲げるのだった。





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