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8 微笑み草を求めて……いるわけでもない

森林(1)っていえば、もろもろのクエストで使いまわされてる狭いステージだな。

思い出してきたぞ。


微笑み草採集のクエストは、素材クエのチュートリアルと言ってもいい簡単なもので、採集ポイントが2か所、あとは森林の雑魚敵が単体で1、2度出現し、1分半ほどで一周できるというものだった。


マップの配置を思い出し、頭に浮かぶ地図と目の前の森の風景を重ねてみる。


「これ、MFOのマップと同じだな。」


「つまり、我々の知識は活きる。そういうことですね。」


「ふっふっふ、これは勝つる! 勝つるよレイン君!」


微笑み草からは、街でほんのちょっと金を払って店で頼むだけで、薬草が作れる。

微笑み草の他に、レアドロ(ップ)として、癒しの葉という毒消しの素材も拾えるときがある。

森林にも、ポイズネークだのホーネッツだのという毒持ちのモンスターも出現するが、時間経過で勝手に消える微毒だから、最序盤、宿に泊まるのももったいない時期には癒しの葉は売却一択だ。


癒しの葉を売って得た金で薬草を作り、薬草で回復しながら周回して最低限のレベリングをするのが定番だった。


ああー、なつかしー。


「それじゃ、始めましょうかニャ。」

ミケが杖を掲げて声をあげる。


「ぐおー。」

大きな声で応じたのは、ガガーリンだった。


おのおの、剣や杖、弓などを振り回しながら走ったりジャンプしたり、動作の確認をしている。

魔術系のスキルは、視線でフォーカスした場所を中心に、術の名を口にすることで発動すると分かった。

ネェルは、「それが詠唱ですね!?」と言っていた。


「名前叫んでるだけだよな?」

「そうね。」


小さな声でベネッタが同意する。


武技は、少しモーションを溜めてから動きをイメージして動作すれば発動するらしい。

ただ、モーションは武技を発動させる部位で行う必要があるようで、剣を振っても盾を突き出しても、俺のスキルは発動できなかった。


「聖獣波って、あれ、何で攻撃してるんだろ?」

アウグストに振ってみる。


「え? ブレスじゃないですか、あれ。」


ブレス!?

半信半疑で試してみると、虎の吠えるような声と共に、口から白く輝く衝撃波が出た。

マジかよ。


聖獣波は、そこそこの物理打撃にノックバックとヘイト付与の効果が乗った扇状の範囲攻撃だ。

ゲームでの演出は、ビームでの薙ぎ払いで敵を弾き飛ばす感じで表現されていた。

盾や剣を動かしているような印象もあったが、ブレスの邪魔にならないように動かしているだけだったとは……。


「まるでゴジ〇だよ、レイン……。」

聖騎士パラディンって一体……」


MFOでのクエストと同様に、敵はほとんど湧かない様子だったので、俺をターゲットに、術や物理攻撃の練習もしてみた。


フレンドファイア自体は有効なようだったが、敵に攻撃した場合に比べると、ダメージはかなり低くなるようだ。

俺には仲間の攻撃はほとんど通らず、最大火力であるアウグストのダークフレイムでも、ちょっとだけ熱くて気持ち悪くなる感覚がある程度だった。


だが、ガガーリン以外の連中は、みなSTRもVITも高くない。

俺の聖獣波を直撃させたら、フレンドファイアの軽減があっても結構なダメージになってしまう。

気を付けないとな……


「ええーい!」

カキン。バコン。

戦闘に参加する予定の無いネェルも、ミケの言うとおりに杖を振り回して叩きつけてくる。


みなが生ぬるい目でそれを眺めている。

ダメージは無いが、何かが満たされている気分になって、ほっこりする。


さて、さっきからの試行錯誤によって、スキルの使いどころが不明なネェルはのぞいて、全員が一通りスキルの発動を確認できた。


「お次は、素材ね。」


「どうだ?」


「うん。採集スキルの効果で、採集対象がなんとなく光って見えてる。」

ベネッタが生えている微笑み草に触れた途端に、光の粒になって目の前から消えていく。


「あ、消えちゃった。」


「インベントリに入ってませんか?」

アウグストが言う。


「あ、ホントだ。今ので微笑み草三つ分だったみたい。」

ベネッタが、空中で指先をフラフラさせている。

脇から見ていると、GUIの操作はこんな感じに見えるのか。


「では、納品分は、確保できましたね。」


「いぇーい、微笑み草、ゲットだぜー。」

ベネッタが、ネェルとこぶしを突き合わせていた。


「となると、次は、戦闘か。」


「おう。」

ガガーリンが、巨大なこん棒を掲げていた。






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