6.心、思い、愛
俺とラウラは生活を共にしている。
ラウラが俺を匿っていることはかなり早い段階でルクセントにはばれてしまっており、襲撃を受けた。
それから俺たち2人は各地を転々とし、仮住まいを作っては引っ越しを繰り返していた。
「ラウラ、俺たち、しばらく離れて暮らした方がいいんじゃないかな」
こんな提案をしたことがある。
追われているのは俺だ。俺の近くにいなければ、ラウラももっと安定した生活ができるんじゃないかと考えてのことだった。
ラウラは首を横に振った。
「一緒にいさせて。でないとタイチ、手が届かないところに行っちゃう気がして……」
ラウラは俺の左しか残っていない手を取った。
俺も長い間一緒にいたせいか、それなりに情も芽生えていた。だから一緒に居たいという気持ちも、分からないではなかった。
「でも.俺のせいでラウラを危ない目に遭わせるわけにはいかない」
そもそも俺が戦いを始めた理由の一つがそれなのだった。
「危なくても、でも……、私、足手まといかもしれないけど……」
ラウラの手に力がこもる。
「そういうことじゃない。これからは、ただ巻き込まれるだけじゃなくて、お前自身も狙われるかも……」
人質にされるかもしれないし、俺を煽るために傷つけたり、あるいは殺そうとすらされるかもしれない。
「離れて暮らしたところで、その辺はあんまり変わらないよ、きっと。だから、私のこと大切に思ってくれるのなら、傍で私のこと守って。……お願い」
ラウラの主張は、おおよそ理屈も通っていた。それに、ここまで言われて離れてしまったら、甲斐性なしと言われかねない。
俺はラウラを抱き寄せた。
「負けたよ。だから絶対、俺から離れないで」