表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

5.力

 俺が闇の勢力を作って行くのと同時に、雄二もまた、光の都での地位を築き上げていた。

 俺がこの世界に来て5年が経った頃、雄二は姓をラインハルトに変えていた。

 『家』の力が強い光の都で権力を手にいれるために、有力者の家に婿入りしたのだった。


 その頃から、ルクセントは闇への反発を強め始めた。

 狙われたのは、ルクセントに比較的近い場所を縄張りにしていた、弱い魔物の群れだった。それまでは取るに足らないと思われていたところを、無視できないと判断されたのだ。


 ある時、そのような群れの一つ、ケットシーの一族が標的にされた。ユージ・ラインハルト率いる聖光騎士団が、わずか33人でこの群れを討伐しに行くという発表があった。

 元々この世界に連れてこられたのが36人、俺が抜けて、俺が2人殺したから残りは33人。計算は合っていると思っていたのだが、実状は俺が考えていたのとは少々異なっていた。


 狙われているケットシーとは協力関係を結んでいたため、騎士団の襲撃に対して俺は救援に向かった。


 ケットシーの住処に到着したのは俺と騎士団でほぼ同時だった。

 騎士団の隊列に見知らぬ顔があった。

 団員は33人で変わっていない。脱退も人員の補充も公表されていない。


「なあ、誰が死んだ?」

 俺は隊列の先頭にいた雄二に尋ねた。

 聖光騎士団は平和の象徴。だから揺らいではいけない。無敵でなければならない。だから、死人を公表せず、こっそり補充して死人が出たことを隠していたのだろう。


「葛西だよ。魔物の奇襲にあってね。痛ましい出来事だった」

 葛西は周りが見えなくなることの多いやつだった。混乱した戦場で不意打ちを食らっても不思議ではなさそうだった。


「出世するのは大変そうだな」

 ルクセントでの地位を築くためには、無敵の騎士団の団長という立場は、どうしても手放せなかったのだろう。


「人々が安心して暮らすためだよ」

「ここを襲うのも、『人々が安心して暮らすため』か? 魔物が死ぬことよりも、人々の安心とやらが大事か?」


 雄二は残念そうな顔でため息をついた。

「魔物の心配をするなんて、本当に魔物の側についてしまったんだな」

 あたかも俺を連れ戻したいと思っていたかのような口調だった。


「お前のせいでそうなったんだ。……無駄話に付き合ってくれてありがとう。もう帰る時間だ」

 辺りからケットシーの気配が消えた。戦闘にすらならずに目的を果たすことができたのは僥幸だった。


「逃がすとでも?」

 雄二が剣を構えた。

「逃げるさ」


 騎士団の足下に地割れが発生した。

 俺は闇だけでなく、闇を纏った物体も自在に扱えるようになっていた。

 雄二は地割れを回避したが、剣が俺に届くよりも先に、俺の肉体は闇に融けた。


 この場合は俺が間に合ったから助かったものの、全体として闇の勢力は徐々に数を削られていった。

 その一方で、光の驚異を重く見た闇の勢力は団結し、光に対抗する雰囲気が形成され始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ