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20.光と闇

 辿り着いたのは俺一人だ。

 塔の天辺、光の頂。


 真っ白な広い部屋の中央に、透明な縦長の八面体が浮かんでいて、その中から光が溢れだしている。これがきっと光の頂だ。

(ちゃんと来てくれて嬉しいよ)

 音の無い声が頭に響く。

「じゃあ嬉しそうな顔しろよ。どこが目だ?」

 雄二は光の頂と同化している。この光の中に、雄二の意識があるのだろう。


(目とか顔とか、そんなものになんの意味がある? 全ては俺を縛る枷でしかない。現に俺はこうして完全な存在になった。光を統べる王、いや、神になったのさ)

「なんだろうな。お前のやり方も在り方も全く許容できないのに、矯正してやろうなんて気も全く起きないんだ」

(神に対して講釈垂れる気か?)

「お前を神だと言うならな」


 俺は闇の魔力を纏った。同時に雄二も戦闘体勢に入った。

 光の精霊が所狭しと現れた。精霊は頂の端末と言っていた。雄二には精霊を生み出すのは容易だというわけだ。

 精霊から放たれる魔力の光弾を掻い潜って光の頂に接近する。

 八面体を殴り付ける。硬いが、壊せない程ではない。何度も繰り返すうちに、八面体にヒビが入った。


 もう一発殴ると八面体が割れた。これで光の頂を破壊できる──。


 俺の拳は、光の頂をすり抜けた。避けられたとかそういうことではない。光の頂は、そもそも物質による実体を持たないのだった。


(お前なんぞに触れられると思っているのか? 俺に!)


 雄二を無視して考える。少しだけ予感はしていた。これは、力で破壊できるものではないのかもしれないと。

 しかし同時に、別の可能性も感じてはいた。

 闇の根源は闇が集まる場所。すなわち引き寄せる性質を持つものだ。

 そして光の頂は、光を与える存在。すなわち外部へ放出する性質を持つ。


 これら二つが触れたときにどうなるのか。


 光の頂に手を触れた。反発しないように、丁寧に。


(おい、何してる)

 身体中に痛みが走る。攻撃を受けたのではない。予想通りだ。光の頂が俺の中に引き寄せられてきたのだ。闇に馴染んだ俺の体が、光に対して拒絶反応を示している。

 でも止めない。多分止めようとしても止まらないだろう。

 闇と光の力が混ざることで対消滅でもしてくれないかという期待も少しはしていた。しかし、俺の中に入ってきた光の頂は、こちらに引き寄せられながら、闇と同化するまいとして抵抗している。

 俺の中の魔力が肉体の許容量を越えた。皮膚が裂け、全身から血が流れ出す。


 光の頂が、最後の一片まで俺の中に入ってきた。きっと雄二は様々に喚いていたことだろう。しかし力も肉体も持たない今、その声がこちらに届くことはなかった。


 俺がやったことが正しかったかどうかなんてことは、俺がどうこう言うことじゃない。なにせ、最初が憎しみから始まっていたのだ。

 未来の人々が、俺をいい人だと思ってくれるならそれはそれで嬉しいが、そうでなかったとしても文句は言うまい。なぜなら、俺の行動は全て、俺の気持ちから来ているのだから。


 朝焼けが、昇っている。

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