17.決戦前
魔物の姿を作っていた間に、黒狼の遣いと、それによって呼ばれた魔物たちが村に集まった。
また、ここ数日の騒動を聞き付けた魔物たちの姿もあった。
そこで俺は、光の都との決戦には俺一人で行きたいということを提案した。
正確には俺と、闇の根源にいた魔物たちだけで、ということだ。
これから戦いは、きっとこれまで以上に激しいものになる。俺が用意した闇の根源由来の戦力は、幸いもう死んだ魔物たちだ。こう言ってはなんだが、戦闘に投入しても死傷者は発生しない。
多少の反対意見はあったが、生きている魔物は、村や弱い魔物たちを守ってほしいと言って納得してもらった。
決戦は日が沈んでから行うことにした。少しでも光が弱まるようにするためだ。
日暮れ間近の丘の上から光の都を見下ろす。都は日が沈んでも光が失われることは無いが、内実はどうなっているのだろう。少なくとも兵士は全て光の頂にいる雄二に操られている。
ようやくここまで来た。今夜きっと、俺は雄二との決着をつける。
「ねえタイチ、本当にやるの?」
見送りに来たラウラが問う。俺は首を縦に振った。俺がやらなければならない。いや、これは俺の戦いなのだ。
この戦いはきっと、徹頭徹尾俺と雄二の戦いだったのだ。俺と雄二は今それぞれ闇と光の極致にいるため、光と闇の戦争のようになってはいるが、要約してしまえば全ては俺と雄二の一対一の戦いだ。
闇の根源から連れ出した意識を、魔力で再現した肉体にあてがっていく。
出来上がった闇の軍勢に、手を挙げて合図をする。
この中にはきっと光の勢力への恨み辛みがあるのだがものもいるのだろう。そういった気持ちでこの戦いに臨んだとしても、俺は頓着しない。俺も昔はそうだった。あまりとやかくは言えない。
今日が終われば、きっとこの世界は良い方向に向かってくれる。少なくとも俺はそう信じている。
だから行こう。明日を手に入れるために。