16.闇の根源(6)
俺が魔王のところに戻ると、戦闘は終わっていた。魔王は立っていて、兵士は倒れている。
「遅かったな」
魔王がこちらに気付いた。目があるのかはわからないけれど、多分こちらが見えてはいるのだろう。
「助かったよ」
「随分丸くなったものだな」
魔王はつまらなさそうに言った。15年前に俺が魔王に初めて会いに行ったときには、魔王軍副官の首を手土産にしていたのだった。その頃と比べれば丸くなっていないと流石におかしい。
「それはしょうがないさ。それよりお前、これどうやってるんだ?」
魔王は15年前に死んでいる。その意識は闇の根源にあったはずなのだが、今魔王らしきものが目の前にいる。体は実体化した魔力で再現されているが、色までは再現できていないようで、顔はほとんどのっぺらぼうだ。
「そんなに難しいことではない。単に魂に魔力で肉付けしただけだ」
軽く言うが、そう簡単とは思えなかった。恐らく魔王個人の能力の高さが無いと無理なのだろう。
しかし、魔王のこの姿を見た瞬間から一つの可能性を感じていた。
「逆のことは出来ないか? 魔力で肉体を再現して、そこに意識をあてがうっていうのは」
俺の提案に、魔王は一瞬考えて口を開いた。
「可能だろうな。お前の労力がどの程度かは知らんが」
これは起死回生の一手になるかもしれない。闇の根源にいる魔物たちを連れ出すことが出来れば、充分な戦力を確保できる。
村に戻ると、早速俺は作業に取りかかった。
魔力を固めて魔物の姿を再現する。しかし形だけでは駄目だ。生前のように動けるようにしなければならない。主に苦労したのは関節の構造だったのだが、これは肉体を作る魔力自体に流動性を持たせることで解決した。
一旦コツを掴んでしまえば後は簡単だった。なにせ俺は自身の肉体を闇に融かしてその後復元するという作業を何度も行ってきたのだった。
二日間かけて、俺は3000体分の魔物の戦力を確保した。