〔バレンタインデー閑話〕カノンは…… 恋愛の生き神様!?
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「うん…… そこ♪」
「あぅ!?」
身を隠して隙を狙っていたカノンが、シロに抱き締められた。
「また簡単に……」
「シロお姉ちゃん凄い! カノン兄の場所が正確に解るなんて!」
「お姉ちゃんには…… 下の子の場所が解る♪」
「くっ…… 恐るべし、お姉ちゃんの感覚……」
「カノンは何で…… 直ぐに隠れたがるの?」
「ああ、そう言えば……」
「もうすぐだよね……」
「もうすぐ?」
「「「バレンタインデーが……」」」
「ばれんたいんでー?」
首を傾げるシロを、カノンとカンナにツグミが遠い目で見ながら思い出す……
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~ 2年前の六道神鳴流道場にて…… ~
「あれ? あの子……」
バレンタインデーが間近に迫っていた時期に、カノンは道場を覗いている女の子を見た。
「迷子かな?」
気になったカノンは、女の子に声をかける事にした。
「君、どうしたの?」
「きゃ!?」
カノンの声に驚いてしゃがんだ女の子が、涙組む目でカノンを見上げた。
「え~と…… ごめんね。びっくりさせて……」
「ううん…… 違うの…… たかちゃんが……」
「たかちゃん? たかちゃんがどうしたの?」
女の子は…… 道場に通う幼馴染みのたかちゃんと言う男の子が好きで、お母さんと焼いたクッキーを持って来たらしいが……
逢う前に、クッキーが上手に出来たか不安になってしまったらしく。
そこに、カノンが声をかけたから、さらなる不安が一気に押し寄せて来た様だ。
「う~ん…… じゃあ、クッキーを1枚ちょうだい?」
「えっ…… 1枚だけなら……」
「ありがとう。うん! 美味しい♪ これなら、たかちゃんも喜んでくれるね♪」
「ほんとう?」
「うん、甘くて美味しいよ。チョコレート味だね♪」
「うん! 何枚も焦げちゃったけど…… やっと、上手に焼けたの♪」
「じゃあ、大丈夫だね」
「うん、ありがとう♪」
その日の帰り道で、仲良く歩く女の子と男の子を見たカノンは……
「良かったね♪」
「お兄ちゃん?」
「何が?」
「ううん、何でも無いよ」
一緒にいたカンナとツグミに聞かれ呟きを、誤魔化しながら帰ったのだが……
次の日……
「お願い! 私が作ったチョコレートも食べて!」
女の子とカノンのやり取りを見ていた女子の間で……
バレンタインデーのチョコをカノンに味見して貰うと、初恋が叶うと噂になり……
バレンタインデーの時期になると、カノンは身に付けた六道神鳴流の全ての技を使って……
道場の恋する女子達の手作り御菓子の味見役(毒味役)から、逃げ回る事になったのだった。
そして、数年後には……
「今年も無事に逃げ切らないとね……」
「年々…… 女の子達が手強くなっていて大変なんだけど…… 僕を捕まえるよりも、料理の練習すれば良いのにね? 後、せめて…… 自分達で味見してからにして欲しいよ」
「明らかに…… チョコレートどころか、食べ物じゃあない物体が混じってるよねぇ…… 毎年、事件に発展しそうでハラハラするわ」
「この歳で服毒死はごめんだから、なんとか逃げ切るよ」
今年のバレンタインデーも、全力で逃げ回るカノンの姿見たカンナは……
(この時期だけ…… 休むか時間をずらせば良いのに……)
そう思いながらも…… 明らかにカノンが本命の女子も参戦して激化する鬼ごっこに、珍しく必死な様子の兄の姿を見て楽しそうに、母やツグミ達とチョコレートの用意をするカンナだった。
次は、初めてのダンジョン探索中のモナ…… かな?
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後……
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