格闘系勇者【タツミ】と伝説の緑人勇者【ザイール】
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「師匠?」
拳を構えた少女の前に、緑人の青年が出る。
「良いかい【タツミ】。一対多数の場合は…… こうするんだ!」
青年が構えると剣が光って、刀身が消えた!?
『ヌッ! 我の配下が一瞬で消された……』
青年の前にいたアンデッドモンスター達が消えた……
「弱点を的確に…… 一撃で、仕止めろ……」
「はっ…… はい! 師匠!」
青年の浄化を付与した光速剣で、アンデッドモンスター達のコアを確実に斬り捨て…… 少女に一対多数の戦い方を見せる。
『高位の浄化付与だと…… 貴様…… 何者だ……』
「初めまして、不死の魔王…… 我が名は、【ザイール】。あんた等の勇者だ」
『音に聞いた…… 勇者の一人か…… ならば、配下総出で…… もてなすと…… しよう……』
さらなるアンデッドモンスター達が涌き出てる中で、ザイールが少女を見る…… 少女の手足に光の粒子が集まっていた。
「そうだ…… そのまま〝勇者の闘法〟を極めて見せな!」
「はい、師匠!〝闘法の勇者〟の弟子、【タツミ】…… 参ります!!」
光の粒子を纏い、格闘系勇者少女タツミがアンデッドモンスター達を殴り飛ばした!
「師匠の編み出した……〝闘気〟と〝魔力〟を融合した…… この勇者の闘法で、私は拳を極める!」
タツミの光る手足から放たれた一撃が、アンデッドモンスター達を消滅させる。
その様子に、ザイールが満足そうに頷く。
「相変わらず…… あの戦い方は、凄いね……」
「新世界の伝説的勇者の弟子だからね……」
ザイールとタツミの活躍を見ながら、タツミのパーティーメンバー達が呟く……
ザイールは…… プレイヤー達が新世界に現れる前から、魔王を倒していた勇者の一人だった。
プレイヤー達が現れる以前の魔王達を倒し続けた…… 緑人達の生きる伝説の勇者達の一人……
そんな彼は…… 突然と、緑人達の前から消えた……
彼にとっては…… 魔王も魔物も〝同じ〟だった……
冒険者として一流だった彼には…… 魔王もただの依頼でしかない……
多くの依頼をこなして、魔王を倒す内に…… 彼は〝勇者〟と言う〝英雄〟になっていた。
「自由が…… 欲しい……」
英雄として…… 勇者として…… 自由を求めて冒険者になった彼は…… 自由を失っていた……
そして、彼は表舞台から姿を消した……
それは、新世界のテストプレイが始まる一年前だった。
世捨て人の様に秘境に隠った彼は…… 奇妙な者を見る。
「あれは……〝闘気〟か……」
人の訪れを拒む秘境で、幼さが残る少女が…… 格闘系職のスキルを使い魔物と戦っていた。
「おのが生命力を力にする…… 諸刃の闘法…… あんな技を少女が……」
格闘系職が生命力を削って使うスキルを…… 少女が使い、魔物を殴っている。
彼は…… まるで夢を見ている様な錯覚を感じた。
「凄い才能…… だが……」
少女の一撃が魔物を倒した…… だが、魔物を倒した少女も倒れた。
「生命力が尽きたか……」
冒険者として、才能ある若者が才能に潰される光景を見てきた彼は…… 少女が死んだと確信した。
「看取ったのも何かの縁か……」
倒れた少女の亡骸を埋葬しようと、彼は近付いた時……
「!? 消えた……」
少女の姿は、光になって消えた…… 蒼人の存在を知らないザイールは、霊系モンスターを見たのだと思う事にして、アンデッド化しない様に魔物を処理した。
「またか……」
その後も…… 時より現れては、魔物と闘う少女霊(?)を、ザイールは何度も目撃する様になる。
「余程…… 魔物に怨みがあるのか?」
魔物と闘い、光になって消える少女…… 何時しか、最低限の人との関係以外を断ったザイールの楽しみになっていた。
そして……
「君は…… 何者だ?」
何時もの様に魔物と闘う少女が…… 光になって消え…… 無かった。
「あなたは……〝緑人〟ですか? わたしは……〝蒼人〟の冒険者タツミです」
「蒼人…… 冒険者だと……」
蒼人の冒険者を名乗る少女タツミの話に…… ザイールが衝撃を受けた。
自分が去った後の新たな英雄達の物語と、時代の中で変わった新世界を……
「そうか…… 新たな英雄に新たな国か……」
ザイールの中に、冒険者だった時の探求心が甦る!
「ところで、ザイールさんは…… 此処で何を?」
「君こそ…… こんな秘境に何の用だい?」
「笑わないで下さい…… 見た事が無い場所と強さを求めて…… です!」
恥ずかしそうに笑う少女に…… ザイールは、少年の時の〝自分達〟を思い出した。
勇者と英雄と呼ばれた自分達が…… 無名だった頃に語り合った〝同じ想い〟を、目の前の少女が言葉にする……
まるで、少年の日の自分が…… 今の自分に問う様に……
「強さを求めると言ったか……」
「ザイールさん?」
「ならば、この〝闘法の勇者ザイール〟が鍛えてやろう」
「えっ! ザイールさんが…… 勇者!?」
「今日から俺は…… タツミの〝師匠〟だ! 良いな?」
「は…… はい! 師匠!」
こうして、伝説的緑人の勇者〝ザイール〟の弟子になったタツミは……
数々の試練をこなして、勇者職を得る事になる。
そして、舞台は現在へ……
「さあ、初めての魔王退治だ!」
「はい! 師匠! 頑張ります!」
師匠と弟子勇者による魔王退治が始まるのだった。
次は、カナエに動きが…… かな?
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後……
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