魔法国王家の御家事情
「ウム…… セーフティーエリアで魔力反応か…… このところ多いな? 我が子孫は何をしているのか……」
魔法国の地下100階層で、ローブを纏った骨格標本の様な人体骨格が呟く……
この人体骨格こそが、魔法国作った眷族神と対等の戦いをし神々に認められた大魔法使いだった者である。
多くの反逆した眷族神を撃退した功績から、魔と地の最高神に褒美を貰い。
先ずは、地の最高神の褒美で荒れた故郷周辺を豊穣の大地に変えた後……
魔の最高神の褒美のダンジョンコアを使い、自分の生まれ故郷をダンジョン化して、その上をセーフティーエリアに設定し国を作ったのだ。
英雄となった大魔法使いは、美しく魔力の強い姫を王妃に迎えて多くの子供をもうけて、王妃が亡くなった時に1番優秀な子に国を託して姿を消した。
実は……
大魔法使いは…… 死を恐れてダンジョンコアを使て、自らをダンジョンマスターのモンスターに変えたのだ。
長い年月の中で、彼は人だった時の姿を捨て不死王になっていた。
「マリオン…… 今日は、上が騒がしいな?」
「はい、マスター……」
【エルダーリッチ】…… 太古の英雄の大魔法使いはエルダーリッチの姿で、人の頃に最も愛した若き日の妻を模した魔導人形とダンジョンの奥地で静かに佇むのであった……
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「「「「「ずびばぜんでじだぁ!!」」」」」
せっちゃんの説得(物理的に)で、土下座する男達……
どうやら…… 魔法国の地下階層は、魔法が使えない人達の吹き溜まりだったみたいだ。
「つまり…… 貴方達は、魔法が使えなくて逃げて来た人達?」
「はい、そうです」
「この街は、地上から上は王族と貴族に魔力に優れた者達が住み。地下3階層までは魔力を持った住民街、その下の地下6階層までは職人街の更に下が此処、スラム街です」
「此処は地下9階層…… スラム街の最深部で、荒くれ者の溜まり場です」
「最深部? 地下10階層から下は?」
「そこからは学園と各ギルドがダンジョンを目指す者の街を作ってます」
「地上からの直通魔導昇降機で行き来してますよ」
せっちゃんの説得を受けた人達が、丁寧に案内してくれる。
「ここからは行けないの?」
「昔、無謀な貴族がダンジョンの魔導機を怒らせて…… 地下10階層まで引き連れたまま逃げて来たそうです」
「その時に地下9階層と地下10階層を繋ぐ道を壊して、魔導機を止めたそうで」
「それ以来、地下10階層に降りる道が無くなりました…… ほれ、彼処に見えるのが地下10階層です」
崩れ落ちたのかな? 大きな縦穴から下に地下10階層が見える…… 薄暗いスラム街と違い明るい?
「地下なのに明るいでしょう? 冒険者と学園の生徒が行き来するので栄えてるんですよ」
「あっちにいかないの?」
「警備が厳しんですよ。学園の生徒は貴族が多いので……」
「違う! 私のせいなの」
「「「「マリー様!?」」」」
「おじいさん達は、私を庇ってここにいるの」
「どう言う事?」
「あんた達は、この国を出るんだよな?」
「できれば……」
「直ぐに出たいけど?」
「この子…… マリー様を頼めないか?」
「おじいさん!?」「おい!」「貴様! どう言うつもりだ!」
「聞けぇ! わし達じゃあ、どうしても護れん…… マリー様を生かすには、この国を出るしかないのだ」
「くっ……」「確かに……」「俺達の命をいくらあっても…… なぁ?」
「とりあえず…… 訳を聞かせてくれる?」
「ああ…… このマリー様は…… 先代の王の弟…… 公爵様の孫娘なのだ」
マリー様は、7歳のハニーブロンドの長い髪に青い瞳の女の子……
彼女は…… 先の王弟アルティオ公爵の孫娘で、そんな彼女がスラムにいる理由は…… 彼女の両親が暗殺されたからだ。
彼女がおじいさんと呼ぶ人は、公爵家の騎士だった人で先代の公爵に使えていた人物だ。
魔力が在るが魔法が苦手だった彼は、魔法剣を鍛え上げ冒険者になった。そんな彼を騎士雇ったのが先代の公爵様だったそうで、先代公爵様に恩義を感じてるらしい。
「先代様は立派な方で、魔法が使えない者や魔力が乏しい者を世話して下さった」
「それが…… 息子のセルティオ様が公爵を継いだら、公爵家は変わってしまった」
「セルティオ様は…… 貴族の悪い処ばかりを学んでしまわれた…… あの方は権力に取り付かれてしまった」
「アルティオ様は…… 気付かれていたのだ…… だから、マリー様のお母上…… マリアネ様が嫁ぐ時に、わしをマリアネ様付きの守護騎士にしたのだ」
「俺達は、みんなアルティオ様に世話になった人間だ。あの方はスラムの住民にも優しい方だった……」
「マリアネ様は、アルティオ様と同じ様に俺達にも優しいお方だった……」
「ああ…… とても優しく美しくお方だった…… あの方の結婚が決まった時は、みんな嬉しくってちょっと寂しい気持ちになった…… でも、あの嬉しそうな笑顔に、俺達も嬉しくなったものだ」
「お相手のジュリオ様もいい男だった…… 伯爵家の三男坊で、とても優秀で優しく魔法が得意な美男…… それなのに!」
「今から2年前だ…… お二人とマリー様が住んでいた男爵家の屋敷に賊が入った。魔力が多く、魔法がお得意なお二人が賊ごときに遅れを取るはずがない…… 屋敷の誰もが思っていた…… しかし! 魔法が…… 屋敷の者達だけが! 魔法を使えなくなっていた…… わしは、まだ幼いマリー様を託されて逃げた…… お二人を護れず! 不甲斐ないわしは…… マリー様を逃がす事すら満足にできずにいる……」
「おじいさん……」
なるほど…… これは、初代様に責任とって貰うしかないよねぇ?
「よし! マリー様、ダンジョンに行こうか?」
「えっ…… だ、ダンジョンですか!?」
「そう、ご先祖様に会いに…… ね♪」
さあ、伝説の英雄…… 大魔法使いに会いに行こうか♪
次は… 何故か? 幼女連れでダンジョンアタック?
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後…
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