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あるかもしれない未来で

灰色の夢

作者: 喪失少女

小学校高学年の時から、時々既視感を感じるようになった。

それが夢で見た光景で、予知夢だと気づくのにそう時間はかからなかったように思う。


中二病や妄想、なんと言ってくれても構わない。

理解してくれと言ったところで万人が理解してくれるはずも無いし、体験したことの無いことを理解するのは難しいだろうと容易に想像出来る。

一、二回程度ではただの偶然で片付けられるだろう。

だが、私が見たのは殆どが断片的であれど全て現実で起こって来たのだ。

いくら現実主義者であろうと、何十回と続けば'予知夢'という三文字に行き着くことは必然であると私は思う。


元々、年を重ねてゆくにつれ眠りも浅く、不眠症では無いのかと思えるほど眠れなくなって行った私だが、中学生になって暫くした時のことだった。

珍しく何時もよりは早く眠れた日のことだ。私は何処かの屋上にいた。

夢にしては灰色がかった変な夢だと思ったが、妙に現実味のある夢だと感じた。

暫くすると、背後から誰かに背中を押された。

私の身体は特に何の抵抗も無く、ゆっくりと傾いて建物から落ちていった。

落ちる途中、意外にも近かった屋上を見上げると人影が二つ見えた。

逆光のせいか顔や表情はわからなかったが、朧気だが確かに二人いたことは覚えている。

それすらも見えなくなって、ただ落ちてゆく浮遊感を感じながら私は空を見上げていた。

ずっと灰色だと思っていた夢の中の空は、月並みな表現だが目の覚めるような空色だった。

私は何故だかわからないが、そんな状況の中妙に清々しい気持ちで涙を流していた。

普通の者ならば、このままでは死んでしまうのではないかという恐怖で悲鳴を上げてしまうような状況の中であるのにだ。

そして私は、そんな中どこか安堵したような穏やかな気分の心の中で思ったのだ。





『あぁ、やっと、、、』と。





そう思った瞬間、急激に視界が暗くなり意識が覚醒していく感覚がした。

はっきりと意識が覚醒しても身体を動かすことが出来なかったが、暫くしてようやく身体を動かすことができた私は飛び起きた。


夢で思った言葉の続きは、考えるまでもなく浮かんで来てしまう。

それを理解した私は、ここまで自分が追い込まれているという自覚が無かったのだ。

そう頭で理解した時には笑ってしまった。本当に乾いた短い笑いだった。


それから数年、あの灰色の夢を見た日を境に既視感を感じる事も夢を見ることも極端に減った。

その代わりか、強い眠気を感じて気絶するように眠る日が増えていった。

それが良い事なのか私には良く分からない。


何故なら、あの夢がもし現実になったとしたら、私の人生がそこで終わるという事を自分で予知したことになるのだから…。




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― 新着の感想 ―
[一言] 予知夢はないですが、デジャヴならよくあります。 似たようなタイトルの小説を書いているのでびっくりして読まさせていただきました。 夢の中で一度死なれたのでしょう。それが良いのか悪いのか…
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