表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕は彼女に恋をした。

 馬鹿みたいに元気な奴が今日もうるさい「おはよー藤木くん!」「あ、おはよ」「元気?(アハハハ)」何が面白いんだろう。いつもこんな調子で職場の人全員にうるさい。変わった女だ。


 


 彼女は、いつも笑っている。彼女と上司との会話。「昨日の書類は終わったの?」と上司が怪訝な顔をして聞いている「終わってますよー」とニッコリとする彼女。「あのさ、だったら朝一で僕のところに持って来てよ」「あ、ごめんなさいっ次回から気をつけます」またニッコリ。これって、多分上司にしてみたらなにニコニコしてんだよってなると思うし実際に彼はそんな顔をしてた。彼女は次回からしっかり朝一に書類を提出するようになった。




 彼女が話す雑談の七割型彼女自身の感情論的な見解だ。「最悪なの! 」「あり得ないの! 」「素敵じゃない?」「良いと思うでしょ?」僕は「そうですね」と会話するしか無い、ふと僕は聞いてみたくなった。 「浅田っていつもニコニコしてますね。」僕は聞いてみた。「え?そう」とニッコリ。




 僕は「なんでですか」とは聞けなかった。その時の彼女の目は「きいてどうする?」と僕に無言のメッセージを伝えようとしていた。しっかり伝わったよ。その心を貫くような暖かくも拒絶的な目は、僕の心を揺らした。心って、こんな風にして揺れるんだ。




 夏が終わりかけていた頃、仲のいい会社の同僚に飲み会に誘われた。僕と彼女を入れて同僚たち五人で開かれた飲み会。男三人と女二人、彼女は、相変わらず彼女は誰よりも明るく誰よりもおしゃべりで誰よりも笑っていた。昨日と変わらない、先週と変わらない五人一緒に入社した一年前と変わらない。




 夜が更けてくるころ、会社の同僚の男一人が終電で帰宅し、彼女を除いた残りの二人は夜の新宿の街へ消えて行った。僕と彼女二人だけだ。「もう終電無くなっちゃったね。あなたとは一夜をともにしたりしないけどね(アハハハ)」「いや、別にそんな気ないし」「嘘ね、私の魅力に惚れ込んでるくせに」なんて女なんだコイツはと思わさせないのが浅田だ




僕は思い切って聞いてみた「てか、あのう、一度聞いてみたかったんですけど、浅田ってどうしていつもそんなにニコニコしてるの?」「え?そう?」彼女はあの時と同じ目で同じ言葉を僕に返して来た。ドキッとした。「うん無い、疲れないの?」「疲れるわよ」「え?」彼女はそれから、ビックリするぐらい簡潔な答えを僕に伝えた「でも笑うの。それだけよ。」




僕は彼女に恋をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ