攻略に失敗しました♪
「アンジェリーナ、マリアにこれまでの非道を詫びろ!」
「は?」
冒頭から失礼致します。わたくし、公爵家令嬢でアンジェリーナと申します。少々、信じられない現場を拝見しまして、かなり困惑しております。
わたくしの前には、キラキラ輝いている我が国の王子と、その隣には桃色の髪に金色の目の可憐な少女が。その王子の方が、険しい眼差しでわたくしを見ているのですが、意味が分かりません。
何故なら本日は、王子の婚約披露パーティーなのです。名目上ではありますが。
「俺は知っているぞ! 僕の婚約者だからと、横暴に振る舞っているのを! さらにマリアにまで陰険な苛めをしていたそうじゃないか! お前との婚約も今日限りで破棄だ!」
これには周りも唖然としています。そんな周りを気にもとめず、二人は自分達の世界を作り上げています。前からバカだ、バカだとは思っていましたが、ここまでとは……………。
「はあ〜…………殿下、婚約破棄も何も、一年前に既に我々は婚約を解消していますわ」
「っ!? ど、どういう事だ!?」
二人揃って目を白黒させてますが、これは紛れもない事実です。
「それに、わたくし、隣国の王家に嫁ぎますの…………今更、殿下の為に使う時間などありませんわ」
「確かにそうだ、わが息子よ………我もここまで愚かとは思わなかったぞ」
いつの間にか、わたくしの隣に来ていた陛下に、淑女の礼をします。
「アンジェリーナ嬢、すまなかったね、うちのバカ息子が」
「いいえ、陛下、勿体ないお言葉でございます」
わたくしが礼をしたまま答えると、更に陛下の顔は優しいものになりました。が、その優しい視線は直ぐに、陛下自身がバカと認めた王子へと向きました。険しい視線に変えて。
「っ………父上…っ!」
「こんの大馬鹿者がっ! せっかくアンジェリーナ嬢が貴様とマリア嬢の婚約披露パーティーを企画し、そなた達の為に時間を費やしてくれたのだぞ? 既に婚約破棄された状態だというのにだ! だというのに、貴様というやつはっ!!」
……………自分で潰したんです。この王子様は。せっかく騒ぎすら起こさなければ、そのまま皇太子に立候補できたのに。本当に哀れな方。
「お前には5年間、イーグノス地方に向かわせる、そこで無能と判断した場合は、そのまま王席を破棄させる! こんの馬鹿者がっ、辺境で頭でも冷やしてこい!」
イーグノス地方とは辺境の地と言われる場所です。人口も少なく、これらを何とかしようとすれば、死に物狂いで頑張らないといけません。殿下、自業自得です。頑張ってくださいね。
結局、このパーティーで二人は婚約する事が出来ませんでした。
殿下、大変ですわね…………。わたくしには関係ありませんけど。
『第一のルート、攻略を失敗しました。』
◇◇◇◇◇
「ユリアナ、お前との婚約もこれまでだ、この婚約は破棄する、俺はお前より素晴らしいマリアと結婚する!」
「はぁ?」
あら、失礼。思わず自がでちゃったわ。わたくし、伯爵令嬢のユリアナと申します。冒頭から驚かれたでしょう? まさか彼が理解してなかったなんて思いませんでしたわ。
「クライツ副騎士団長様? 3年も前に貴方様との婚約は解消されてますわ、失礼ですけど、軽々しく話し掛けないで頂けます? わたくし、公爵家の方と婚約してますの、失礼しますわ」
「はあ!? 3年前だと!? しかしマリアは君に意地悪されたと…………」
全く、話し掛けないでと言ったのに! わたくし、公爵家の方に恋をしてますの(*/ω\*) こんな奴に使う時間が勿体ないですわ。
「何で赤の他人に嫌がらせしなければなりませんの? そんな下らない事の為にわざわざ時間を使うだなんて…………もう会う事も無いでしょう、ごきげんよう」
わたくしが去った後、最近の今までの勤務態度を上司である騎士団長様より叱責され、地方に左遷されたようですけれど、わたくしには関係ありませんわね。
サヨウナラ、わたくしの黒歴史たる副騎士団長様。わたくしは、公爵家の方と幸せになりますわ。
『第二のルート、攻略を失敗しました』
◇◇◇◇◇
「ミリアーナ、すまない…………私との婚約を解消して下さい」
「え…………?」
皆様、初めまして。わたくし、侯爵令嬢のミリアーナと申します。今現在、わたくしがいるのは、外にある薔薇園です。勿論、人目もございます。そんな中で、非常識にも婚約解消を願い出たのは、眼鏡の似合うイケメンの青年と、その方に寄り添う、桃色の髪に金色の目の可憐な美少女。二人はわたくしに向けて、申し訳ないとでも言うように、どこまでも丁寧に願うのですが。
「あの、どちらさまでしょう?」
はて、困りました。わたくし、此方の方なんて知りません。名前を知っているので、どこかで会ったようですが。全く記憶にないんです。
「えっ!? ミ、ミリアーナ、僕だよ! 婚約者のアルガートだよ!」
「?? わたくしの婚約者は侯爵家のルジェント様ですわ、誰かとお間違いでは?」
「っ―――――!?」
何やら唖然としたような姿の青年ですが、赤の他人様に構っている時間などありません。だって、わたくしはルジェント様と、ここで待ち合わせをしているのですから。
「あ、ルジェント様!」
「やあ、ミリー! ん? 知り合いかい?」
「いいえ、初めてお会いする方なのですが、わたくしが彼の婚約者だというのです、わたくしの婚約者はルジェント様だというのに」
ルジェント様の眉がピクッと動きました。これはお怒りの印です!
「君、誰だい? 僕と彼女は、陛下にも認められた公認の婚約者だよ?」
「っ!? しかし父上には、ミリアーナの婚約者は僕だと………」
「それは何年前の話しだい? ミリアーナと僕の婚約は、3年前に決まってるんだけど?」
「さ、3年前に!? 父上が僕に言ったのも3年前………」
何やら愕然としてますが、そろそろいいでしょうか? デートの時間が無くなってしまいます。
「もう僕達の前に現れないでよね、行こうか、ミリアーナ」
「はい、ルジェント様♪」
こうしてわたくし達は、デートへと向かうのでした。
この後、彼がどうなったのかは知りません。知りたいとも思いませんし。
『攻略第三ルート、失敗しました』
◇◇◇◇◇
「ねぇー、いい加減、僕らに付き纏うのは止めてくれない? レディ・ローズマリー」
「あらまあ、誰かと思いましたわ、シリウス様」
ごきげんよう、皆様。わたくし、子爵令嬢のローズマリーと申しますの。冒頭で、被害者顔しているのが、一時期、仲が良かったシリウス様ですわ。この方、浮き名を欲しいままにされている、尻軽男ですわ。あ、わたくし、純血は守り通しましたので、疑うのは止めて下さいませね?
「僕は真実の愛を見つけたんだ! だからもう君とは会えない…………僕の隣にいるのはマリアだけなんだ」
「そうですの、どうぞお幸せに、では」
「もう二度と付き纏わないで欲しいんだ! 約束してくれ!」
では、と申しましたでしょ!? 人の話も聞かないなんて、非常識ですわ!! この会場は、王宮ですわよ? 恐らく招待されたのでしょうが、失礼ながら、わたくし、本当に全く興味ないのですわ。
「えぇ、約束致しますわ…………わたくしも願ったり叶ったりですもの」
「え? それはどういう………」
「わたくし、婚約致しましたの、お相手は伯爵家の嫡男の方と」
「なっ!?」
「同じ子爵家で、更に浮気癖のある男なんて、お断りですもの…………あら、噂をしたら」
「やあ、マリー!………こちらは?」
「昔、仲の良かった知り合いですわ、恋人が出来たそうで紹介して頂いていたのですわ」
「そうなんだ? 初めまして、僕はクリケント伯爵家の嫡男、ジークフリートと言うんだ、君は?」
「子爵家の三男で、シリウスと申します」
「男爵家のマリアと申します………」
二人が礼儀通りの礼をする様を、ジークフリート様は冷やかに見ていました。
「あぁ、君が噂のシリウス君か…………マリア嬢も最近は随分と噂が流れていますね?」
「「!?」」
「シリウス君は騎士団長殿の奥様と随分と仲がいいらしいじゃないですか?」
「え? シリウス様!?」
「マリア違うんだ!」
「マリア嬢は、確か…………元王子殿下と元副騎士団長と、更にアルガート君だったかな? アルガート君は可哀想に、失意のまま格下の家に婿入りするそうですよ? 随分と仲のいい殿方が多いですね? マリア嬢」
「え!? マリア!?」
何やら痴話喧嘩が始まりそうで、忙しそうですし、わたくしは彼と参りましょう。
『第四ルート、攻略失敗しました、全てのルートを攻略失敗したため、ゲームオーバーとなりました、以降の攻略の一切が終了します』
◇◇◇◇◇
なんで? 間違いなくゲーム通りに攻略していったわ! なのに悪役令嬢が誰一人として、動き出さないじゃない! と言うより、姿すら見えないのは何で!? ようやく見つけて、彼と別れてと言ったら、まさかの既に破棄していたり、解消していたり、知らないとまで言われる始末。私が気に入っていた順番で攻略していったけど、誰一人として上手くいかない。王子は辺境に行っちゃうし、副騎士団長は左遷され地方へ、アルガート様は実家に問いただしたら、格下の家との婚約が既に決まっていたり、チャラ男たるシリウス様なんて、既婚者と浮気…………。一体全体どうなってるのよ!?
「マリア、喜びなさい! 婚約者が決まったよ〜♪」
目の前には両親がニコニコと嬉しそうに笑っていた。内心、それどころじゃないけど、両親には逆らえないし、大人しく話を聞いた。
「相手は父さんの知り合いの息子さんでなぁ、跡取りなんだ、マリアを是非にと言ってくれてね?」
ゲームオーバーになった私は、結局、両親が決めたお相手との婚約が決りました。
はぁ、上手く攻略できたら、贅沢三昧出来たのにぃ―――――!!
◇◇◇◇◇
ふう、疲れましたわ。ため息はいけませんわね? 皆様、ごきげんよう。わたくし、王様の妻で王妃のジャスティーヌと申します。あ、あのバカ王子は側室の方の息子ですので、わたくしを責めないで下さいませね? うちの息子は立派ですから。
さて、わたくし、結婚したその日に、記憶を思い出しましたの。陛下の顔を見た瞬間に一気に記憶が戻って一時期大変でしたわ………。落ち着いてからは、未来を考えて、愕然としました。あれ? もしや国の宝と言える子達がダメになる!? わたくしは王妃という権力をフルに使い、国中の貴族の子供達の為の規律の厳しい学園を作ったり、子供同伴のパーティーやお茶会を開いたりして、少しでも未来を変えようとしました。が、攻略対象達は無理でした。ゲーム補正や、直接干渉が出来ない所為でしょうね。なので悪役に成らないように、令嬢達に縁談を持ち込みまくりました。勿論、王様にも認められた状態にしてありますわ! お陰様でゲームのルートは潰せるわ、学校を作った為に国中で優秀な人材が育つわ、更にわたくしに福縁の王妃というあだ名がつきましたわ(*´∇`) 恥ずかしいですけれど、嬉しい誤算もありましたわ。学園が出来て、優秀な人材が増えましたから、国が傾くなんて事にはなりませんもの。勿論、邪魔な皆さんには、引退して
頂きましたし♪
さあ、また新たな縁談でもまとめようかしら? ゲームは終わったけれど、素敵な縁談をまとめないとね☆
攻略、失敗ですわ☆
END
お久し振りな方も、初めてな方も。
秋月煉と申しますm(__)m
本日は短編を読んで頂き、感謝感激です☆
ちょっと最近色々ありましたので、無事に更新出来て良かったです。
さて、本日のコンセプトは、イケメンの攻略者様は振られちゃえ☆ です♪ 勿論、ゲーム脳のヒロイン様は幸せですよ? 男爵家なので、貧乏ですけどね?
他の皆様も、やり直して幸せになるはずですから、ご安心下さいね?
感想、ご意見、誤字脱字、ご質問も受け付けております。なお、秋月はメンタルが弱いため、甘口でお願いしますね。