提灯
※お題「祭」「#Twitter300字ss」で書きました。
日の落ちた山門の前に町内の人々が集まっている。提灯を手に楽しげな子供たちに比べ、大人たちは不安そうな顔だ。子供たちは列を作り、次々と境内へ入っていく。
最後尾を歩いていた子供の提灯の火が風に揺らいで消えた。
「あっちへ行こう」
振り向けば、狐面に赤い着物姿の子供が立っている。指さすほうに灯りが見え、祭囃子が聞こえてきた。
「楽しいよ」
周囲を見回すが、誰もいない。戸惑っている子供の手を狐面が引っ張った。つられて踏み出しかけた耳に鈴の音が響く。
「この子は行かない」
柔らかな手の感触が、狐面から子供を遠ざけた。唐突に賑やかな話し声、足音が戻ってくる。
「……お母さん」
子供は、懐から鈴を取り出した。