表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

八話:戦う力と被害の縮小。

このサイトで小説を書き始めて十日。

早いものだなと作者は思う。


ぐーだらだった十日前。

たくさん寝たなと思い出す。


友人宅に泊まりに行ってオールして、気力でようやく書き連ねた。


もう、寝ていいよ……ね?




「触れるな」


 標準、固定。

 対象、決定。

 迎撃、開始。


 自分の意識を二酸化炭素とともに吐き出して、深く、深く、僕という存在を根本から閉じこめる。振り下ろされる巨木を瞼の奥で見つめて、小さく足踏みした。

 切り替えろ、切り替える、切り替えた……。


 大地が鼓動する。

 地面が抉れる。

 土魂が隆起する。


「『地割れ』」


 自然現象の発現。

 地割れとは、日照りによる乾燥や、地震によって歯の根が噛み合わなくなった大地に起こる現象である。主に被災地、収穫を終えたたんぼで見ることが可能な割れ目。

 それが、何の脈絡も我関せず、唐突に現れた。


 イノシシの短い片足が規則を準じない湾曲率を披露する。体重を利用する筈だったその一撃は、突然のバランス悪化の名のもと、僕の真横の痩けた腐木へとお見合いした。


「後何匹だ」


 月明かりに照らされた自然の檻を見渡しながら、舌打ちする。

 僕の背中で横たわる彼女の怪我が悪化しないうちに、早急にも奴等の包囲網から離脱すべきだ。




 金髪の少女。

 二度目の逃亡途中フェリが見つけた。

 泥水を全身に浴び、金色の刺繍で味付けされたローブに身を包んだ彼女は、闇に汚染された景色でも分かるほどに傷ついていた。枝や草による細かい切り傷、そして背中に残る大きな爪痕。真っ赤な生命力がとめどめなく溢れていた。


「『氷結』」


 眼前に迫っていた一撃を、空気中の水素と酸素を結合させ凍らせる。イノシシの顔面と僕の間に不格好な氷の柱ができた。細かい説明は知識の幅から考えて省くが、要はひょうと似通ったものを発現させたと考えてもらってほぼ遜色ない。

 おかげで辺り一面ほぼ無酸素状態だが……。


「静紅!」


 遠くからフェリの声が聞こえる。

 洞窟を抜け出した際に頼んでおいた、森を抜ける最短ルートを見つけてくれたのだろうか。


「見つかっーー」

「変なのが近付いてきてる! すぐにそこから離れろ!」


 警告。

 氷のレンズから覗く熊の姿が消失した。


 同時。

 鈍い音が森を形作る。

 透明の柱が、鮮血に塗られた。


「っ!?」


 視界が沈んだ。

 重力が増大したという錯覚を覚える。

 左足首が短い悲鳴をあげ、血の気が波引くように抵抗なく下流へ滑った。


「『発火現象』発現!」


 僕の足元に円を描くように、枯渇した酸素に止めを刺す。地面から伸びた細長い何かの表面を微かに焦がした。

 パイロキネシスは予想以上に威力が低い。


 刺された。

 アキレス腱とすねをつなぐ穴が形成された。最悪だ。


 炎による衝撃で引っ込められた何かがでた地割れの痕を、ずるびくように一瞥して金髪の少女を背負い込む。早く逃げなきゃ。いくら連続戦闘と生存本能によって『有為現象の“発現”』を猫のひたい程度の技量へと昇華させたと言っても、経験を積んだわけにはならない。


 棒となった左足を杖代わりに歩行を開始する。

 痛くない。痛くない。

 僕は無傷だ。


 健康体の僕の役だ。


 歩みを阻む泥と草に気後れしつつ、背後の警戒を強める。

 フェリは、すぐそこだ。


「この子お願い」

「分かった、すぐに退くぞ」


 返答せずに、フェリの背に少女を渡す。

 彼女は、さすがに神というだけのことはあるのか、見た目に似合わず怪力だ。おそらく金髪の少女を背負っても、あの熊共から逃げるには十分すぎる。

 おまけに気配察知に優れているため、餌食になる可能性は更に減ると思う。


「おい! 逃げるぞ!」


 動く素振そぶりを見せない僕を見て痺れを切らしたのか、フェリは声を張り上げた。

 僕は、そんな彼女に背を向ける。


「先に行って! 時間を稼ぐから!」

「そんな必要ないだろう! 全力で走れば足の遅いあいつらなんて振り切れる!」


 全力がだせないんだよ。

 とは返答しない。

 フェリと脱出捜索、及び森を抜け次第草原で待機しているギルド員に応援を要請する役割をちなんだ職員さんを道案内してくれ、と半ば無理矢理押し通した。

 この暗さだからごまかせるものを、怪我のことが知られたらフェリが心配する。それが分かっていた。そして、それがタイムロスになることも。


「フェリ!」




 ◇◆◇◆◇◆




「静紅!」


 二人の少女を先頭に、屈強そうな男達が列を築く。

 湿気と土の臭いが充満した森が、不気味なほどに静まり返っていた。

 虫も獣も音を発さず、ただ聞こえるのは友を呼ぶ焦り声。


 本来、イノシシ一体に致命打を与えればピリオドを打つ筈だったこの件。


 この時期には到底起こり得ない、群れの出現のという予期せぬアクシデントが事態を圧迫した。この事には、狩りに関して熟練した男達も驚きを隠せない。


 なぜ?


 そんな疑問もすぐに消し飛ぶ。

 肉と草が焼ける臭いと血の臭いが空気に混ざり始めたからだ。

 しかし、その臭いに顔をしかめることもせず、友を探す一人の少女ーーフェリシアは叫びを上げる。

 その瞬間。


〈イビャビャビャビャ!〉


 しゃがれたイノシシの鳴き声が沈黙制止の肩代わりをした。


 瞬時に声の方向へと走り出すフェリシア。

 警戒がなっていないと舌打ちするでもなく、男達も後に続く。


 再び音が止んだ。

 発信地は近い。

 足に力を込めて、草を掻き分ける。


 そして、視界に飛び込んだソレを見て、皆が息を飲んだ中、フェリシアは涙をこぼした。


「静紅!」


 緑がない森。

 荒れ地となったソコに、大量の死体に溺れる血塗ちまみれの友人がいた。




 ◇◆◇◆◇◆




「扱い酷くない?」


 無料で入手した自然栽培杖(木の枝ともいう)を活用しながら歩く僕は、目の前で不機嫌になっている神様へ問いかけた。アキレス腱切れてるのに歩かせるとか酷いよ。

 ちなみに、誰かに肩を貸してやろう発言をされたが、丁重にお断りした。僕はフェリにおぶってもらいたいのです。無理だろうけどね、いつの間にか治療されてる金髪の子背負ってるし……。


「フェリ」


 呼ぶ。


「フェリ」


 呼ぶ。

 しかし無言のフェリ。

 こうなったらアレしかないか。


 僕はゆっくりと息を吸い込んで、変態さんの声を真似てみた。


「フェ~リ~シ~ア~ちゃん」

「ひぅ!?」


 面白いほど、棒の形になる神様。

 首をぶんぶんと振って、意中の相手を探すも発見できず、最終的に僕を見つめて「あはははは」と笑ってみせた。目が笑っていないからなんか恐い。


 苦笑する僕。

 そして。


「う、ん……」


 フェリの背中で、目覚めの声が聞こえた。


「此処は何処?」


 生暖かい風が素肌を濡らす。

 雨は、すっかり止んでいた。

誤字脱字は少しずつ直していきます。

そろそろ物語が軌道に乗るかな? かな?


PV5100。突破。

ユニーク960。突破。

おおぅ! パゥワァがぁ! 力がぁ!


読者の皆様、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ