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二話:渡る世界と旅路の始まり。

異世界編スタート。

とゆうか前話はプロローグだな、もはや。


とりあえず有名なアレと遭遇。

しかし戦闘力はすこぶる高い。




「……知らない天井だ」


 どっからどうみても青空です。

 本当にありがとうございました。


 淡い水色のシーツに同色の毛布。僕が横たわる布団の色を抜き取ってしまったような青空が、僕の視界を覆っていた。

 流れる雲は、見れば見るほど甘そうで、距離間の一切を感じさせぬその光景に、僕はただ見入ってしまう。

 草々の香りがする。昨日……かは定かではないが、予期せぬアクシデントによって、着替えも入浴も済ませなかった全身の汗の匂いとともに鼻孔をくすぐる自然の香り。

 ふと横を向けば、ピリオドを感じさせない草原が地平線まで続いていた。いや、遠くに街のようなものが見える。街道とも呼べる土色もかすかに映えた。


 草原に布団という、端から見れば若干シュールなその光景も、僕にとっては盲目だった。

 誰かが眠っていた温もりが残留している空白に、左手を重ねて息を吐く。吸う。目一杯吸い込んで、珈琲コーヒーの味がする舌を口内に浮かした。


「どこじゃ此処ぉおおおお!」


 声帯が震える。

 僕は身の振り構わず起きあがって、しわが寄った眉間と視線を縦横無尽に振り乱す。

 と、草原への放置プレイを押しつけられた高校生は、神様と友達になった挙げ句、旅先の決定権を授与したことを思い出す。

 自業自得ですかいな。

 といっても納得できませんがね。


 まさかの旅先は草原サバイバル生活なのか。草と布団だけでどう生きろと……。

 草食えってか? これはフェイクで本当の旅を始めるためには道草食えってか? バーロー、大してうまいこといえてないでござるよ。にんにん。


 寅の印を描いて瞳を瞑る僕。そのせいか、遮断された五感の一つが余りの四に活動力を受け渡し、三半規管の効果を上昇させた。

 背後で、ガサガサと草波を掻き分ける音が響いている。音の幅から考えて、接着面はおよそ二メートル弱。確実に人の足のサイズではない。


 短く息を飲んで振り返る。


 赤い球体。元々なのか、カモフラージュなのかいまいち判定が難しいが、半透明の液体が視界に浮かび上がっていた。と言っても、地面から文字どおり浮かび上がっているのではなく。液体のように見える物体が容器なくして高さを得ていた。


「……スライム?」


 知識の棚から取り出した言葉。


 サイズ云々は腰ほどの高さのものしか思い出せなかったが、これの大きさは偏見を取り除いてくれる。

 僕の勘を外して、底面は直径で三メートル。付着した滴を連想させる頂点の位置は四メートルほどだろうか。中央に佇む赤い球体が心臓のように鼓動している。とにかく大きい。


 今度は短く息を吸って、ついさっきまでの思考を停滞させると、僕はスライムをめつけた。

 これでも一応演劇部部長である。気持ちの切り替えには定評があった。

 動揺と眠気に負けてこんな事態におちいったアホでは説得力はないが……。


 まずは、視線逸らさずに後退する。熊を始めとした獣と遭遇した場合の対処法であるが、これがどれほど有効的であるかは分からない。

 一歩、一歩と、焦らずに踏み込んでいく。


 そして、また一歩。方足がかすかに宙へと上がった瞬間。僕の体が浮かび上がった。


「え?」


 まるで引っ張られるかのように、地面が天井へと移り変わる。スライムは動いていない。ただ、少しだけ小さくなっていて、すぐに理解した。

 弾くように膝に目を配ると、緑色の太い糸が何重にもなって巻き付いている。そこからつながる草原と、僕を囲むように立った光に反射する緑の壁。

 地面から数メートル浮かされた僕の目には、街がとても大きく見えた。

 つまり、だ。


 僕が地平線と思っていた緑はスライムの体の一部で、街は一キロも離れていない所にあった。街の上半分、四分の一も見ていなかったのだ。僕は。


 変わり映えしない景色を見続けると、脳が単純な働きしかしないようになる。という話を聞いたことがある。ましてや寝起きだ。コイツにマークされていたことすら気付けなかった。くそ。


 思わず噛みしめた唇が血で滲む。


 くそ。

 あの子と友達になったのはそんなに悪いことだったのか! 確かに動揺していたかもしれないが、あの悲しそうな顔を笑顔に変えたいと思うのは悪いことなのかよ!


 理不尽な状況に、沸いたのは恐怖ではなく怒りだった。

 純粋な怒りだった。


『有為現象の“発現”』


 怒りの熱が上がっていくと、突然、脳内を満たしたその言葉。熱を冷ますように、誰かが語りかけているような、不思議な感覚。

 同時に、体の内から沸き上がる何か。


 滲んだ血を嘗めとる。

 肉薄したスライムを見つめる。


 僕は、自分でも聞き取れるか定かではないささやきを、誰に伝えるでもなく大気に運んだ。




◇◆◇◆◇◆




「おい! 起きろ!」


 頬を何かにはたかれる。ペシペシと小気味のいい音を響かせて、段々とリズムをとるように一定の感覚で音が鳴る。

 意識が覚醒した。


「まったく、先に送ったと思ったらまた寝て。私が来るまで起きてても良かったじゃないか」


 ふてくされたと言わんばかりに頬を膨らます黒髪の少女。きっちりと整えてきたのか、以前にも増して柔らかそうな髪が風になびく。

 金と青の瞳は、少しばかり疲れを表していた。

 それを見て、僕は辺りを見渡す。


「ここは……」


 草原、だな。

 布団もあるし。

 とゆうか毛布かけられてるし、僕。


 寝るなとか言っている割には心配してくれているんじゃないか。笑みがこぼれる。


「笑うなぁ! 私がどれだけ忙しい思いをしたとーー」

「僕も忙しかったんだよ、夢だけど」

「そりゃ、寝てたからな」


 生憎ここは夢じゃないんだなぁ。

 ちょっとは否定してほしかったのかもしれない。


 痣一つない左足を。

 狭くなった街道を。


 とりあえず、怪我とかなくて良かった。

 後が残っていたら、イヤだしね。


「まぁまぁ、旅するんでしょ? 出来ることならすぐ帰りたいけど」

「四ヶ月は帰れないと思え、次元を飛び越えるにはかなり神力が必要なんだ」

「……いいけどさ、別に」


 起きあがると。何事もなかったかのように、僕らは歩きだした。街は予想以上に近い。唇も突っかかりなく滑っている。


「そうだ」

「今度はなんだ? 寝杉」


 寝杉って……。どうだろう。

 けど、からかい半分の罵倒が少し心地いい。なんだかんだで、性別に関係なく、ファンタジーな世界は心踊るものだし。平穏を求める演劇好きなんて柄じゃないし。

 まっ、二度とゼリーは見たくないけどな。


 水っ気のある草の、太陽光の反射に目を細めながら、僕は口にした。


「毛布ありがと」

「……いや、友達だからな」


 気持ちの整理に必要な時間はゼロだった。

 気苦労は重なると思うけれど、できることならやっぱり温泉に行きたかったけれど、来ちゃったものは仕方がない。


 今は小さな友達と遊ぼうか。




「なんでパジャマ?」

「静紅もだろうが」


 とりあえず着替えたい。

 布団よ、また会う日までさようなら。

お読み頂きありがとうございます。


スライムぱねぇw

主人公が何をしたかは今後露わになる。予定。


神力とか人外れた魂とかの説明要素必要なものは、次話を中心にちょこちょこ書いていく。


ふへぇ、急展開。

切り替えの早さは演劇スキル。


演劇楽しいですよ演劇。

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