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一話:募る眠気と離脱の前触れ。

次話から異世界に行くと思われ。

これぞじらし効果。


痛い! 殴らないで!




「それでな、ゼウスの叔父さんがな、お前はやれば出来る子だってーー」


 良い子も眠る丑三時。

 僕は重い瞼にサービス残業を申し込み、寝息をたてたがっている喉に過剰なカフェインを注入していた。

 なぜこんなスリープ状態を我慢しているのか。話は数刻前にさかのぼることもなく、友達宣言の受諾から延々と世話話をしていると言えばほとぼりは冷める。


 実際、逆上っているのは彼女の御花畑(エロい意味ではない)で、冷ますべきも彼女の桜戦線な脳内なのだが、いかんせん、喜々として語るキラキラスマイル神様にこんなことは言えるわけもなく。例え仏様に拷問されても口を割ることはないように思われた。自分の思考なのに客観的である。


 ゆるく鬱だ。ほがらかに鬱だ。

 言動がいまいち理解できん。


 お肌と髪のキューティクルのためにも早々に眠り就かなければと憂う気持ちもあるせいか、彼女の話を聞いているのは精神軟禁と呼ばれても過言ではない。

 今更だが、奈良の大仏に拷問されたらガクガクぶるぶるニャーニャーは避けられないと思われ。ごめん。やっぱ口割るわ。


「寝ていい?」

「まてまて、ここからが笑えるんだ」


 頭割っていい?

 憂いて鬱って憂鬱で。

 なんだかもう不貞寝してやるぞこの野郎! いやお前は野郎ではないからやっぱり寝てやらないんだから!

 とか、オールする思春期の学生のテンションは高々である。高山病になってしまいなはれや。


「ところがアマテラスは怒りはじめて、お前の頭割ってやる! って言い出したもんだから、みんなビックリしちゃったんだよ」


 アマテラス? 漢字知らんけどお友達になれそうだ。今度合コンに行こうジャマイカ。二人きりで。ばーか、それはもはやお見合いだぜマイク! HAHAHAコイツはいけねぇぜ! どうだいボブ、憂さ晴らしにゲロックコンボ食い散らかさないかい?

 いや……死にたい。


 何事も程々が一番である。

 だから僕は半殺し。もうやってらんね。


「どうした? 眠いのか?」


 ふっと近づく白の装束。

 気付くの遅いッスよ、つかさっきスルーしたくせに何を今更いいなはるんですか。

 なんてこと思わない。

 心優しくも、僕を心配して楽しかったであろう一方通行会話に蓋をしたのだ。思わず頭をなでなでしたくなる嬉しさである。


 ちょっと気落ちした表情を覗かせて、金と青のオッドアイを壁に立てかけられた質素な時計へと向け細め、肩を落として口をつぐんだ。


「友達には思いやりを持たなければいけないものだしな、うむぅ」


 ぼそっと自己確認のためのように呟く神様。名前はまだない。事実である。


「よし!」


 暫く顔を伏せて何かを思案していたかと思うと、突然僕の胸に飛び込んできた。凹凸に乏しい体つきではあるものの、全体を占める柔らかさはそんじょそこらの抱き枕の非ではない。やべっ、眠い。知ってたけど。


「女友達というものはお泊まりすると同じ布団で寝るものなんだろう?」


 どっから仕入れたその知識。

 否定はしないが必ずしもそうとは限らないのだが、だみだこりゃあ、ボブとマイクが睡眠コールをのたうち叫んで喜びまくっていやがる。

 僕は己の睡眠欲のパワーバランスに抵抗するまでもなく、小さく頷いて欠伸を噛みしめた。

 今夜は寝させないぜグヘヘぇ。なんて拷問されたら即刻オープンする発言なので甘んじて飲み込んだ。


「しかしなぁ、なにか詫びの一つでもいれなければ私の名が廃る」


 再び思案。

 そんなものは気にしなくてもいいのに。神様と友達になっただけで僕は満足だよ。そうだよいやみだよ。かたじけない冗談やけん。


 ピークを迎えた眠気。むしろ越えている。

 そんな僕を見つめて何かに思い至ったのか、彼女はハツラツとした笑顔を開花させた。着色料は使っていない。


「旅行はどうだ! 旅は気分を解放的にするとも言うし、うむ」

「旅?」


 温泉旅行には行ってみたい。

 だけどなぁ、僕は考える。


 なんか既に神様w扱いになっている彼女がどこに連れていくのか検討もつかん。

 とりあえずは頷いておくか、寝て起きたら旅先を決めることにしよう。


「分かった、楽しみにしていてくれ。この年代の夢ならすでに網羅しているからな!」

「オーケー、とりあえずお休み」

「待て待て!」


 布団敷きながら話を聞いて、緩んだ思考の網に制止の声がかかった。首だけそちらに向けて、僕は布団に潜り込む。なんだろう、私も寝るからスペース開けとか言うんじゃなかろうな。

 あけるけど。


 しかし僕の考えとはうって変わって、彼女は今までで一番とも見れる笑顔を僕に授与して、元気魂ともとれる言の葉に質問をのせた。


「なにか好きな能力とかあるか?」


 待て、寝かせてくれ。

 ファンタジーな話題に飛躍させるな。

 ぼやけてきた世界でうっすらと反抗してみるけど、三大欲求には勝てないか。寝たら死ぬと解っていても寝るを選ぶそうだからな人間は……。


「特には」

「やってみたいことは?」

「有為現象の“発現”」


 そこまで呟いて、僕の意識は闇に捕らわれた。

 光の残り香が語感に響く。


 最後に視界の端に移ったのは、光の渦を巻いて布団に潜り込む神様だった。

ゲロックコンボを知っている人はいるのだろうか。

もし居たら小一時間ほど語り合いたいものである。


皆様、目薬代かけてしまって本当にすいません。

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