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九話:休む日と努力の決意。

風邪ひいた。

作者は昼寝の驚異を思い知る。


まさかたった二時間ちょっとで症状があらわれるとは……。


まぁ、とりあえず。




熱冷ましにアイス食うか……。




 ギルドに登録して四日目。

 この世界に来た影響かは知らないが、身体的な能力が現世のそれとは比べものにならないほど飛躍した僕は、回復力が向上した体で街の医療施設の木製の手摺てすりにしがみついていた。


「頑張ってサツキくん!」


 そして、ティアナの喫茶店に通いつめているお姉さんからの応援がやけに歯がゆい。

 看護婦という役職の彼女が腰に手を回してリハビリの効率を上げさせていることは十二分に理解できていても、歯がゆい。むしろ恥ずかしい。脇腹を撫でるのはご遠慮してもらいたいところだ。


「ガンバレっガンバレっ」

「あはは」


 リハビリを行っている僕の病室前の廊下。僕の病室の入り口で仏頂面をしているフェリからの視線が、針の如く僕の背中に突き刺さる。

 そんなことは意に介さず行為(エロい意味ではない)を続行するお姉さん。


 なぜだろうか、桃色のナース服のスカートがやけに短く感じられるのは……。

 なぜだろうか、僕のパジャマのボタンが着々と外れていっているのは……。


 なぜだろうか?


 廊下の影から双眼鏡で僕たちを見つめるティアナの頬が赤く染まっているのは……。


「仕事しろよ!」

「やってるよ?」


 看護婦様に返事された。

 彼女達より僕の方が背は高いのに、まるで見おろされているという感慨深さに落ちてしまう。

 見せもんじゃねぇよ! これは!


「はぁい脱ぎ脱ぎしましょうねぇ」

「へ、んな!? いつの間に!」

「汗をかいてるから、着~替~え~」

「廊下で!? この前草原で脱がされたのに!?」

「……そうなの?」

「そうですよ! だから二度もこんな醜態をくらうわけにはーー」

「私は気にしないから」

「いかな、って話聞いてよ!?」




 一悶着あったため、精神面が面汚しをくらった僕の体は、残業労働者もびっくりな疲労感と衰弱を示していた。

 瞬きを繰り返して「記録」と連呼しているティアナにはOHANASHIが必要だと思われる。

 病室の柔らかいベットに背中を押しつけて、僕は嘆息した。フェリが不器用にもリンゴの実を剥いているのが視界の端に映える。皮剥きではない、実剥きだ。現状に困憊こんぱいしている僕には見向きもせず実剥きするフェリ。頭かじらせろゴラっ。


 と内心憤慨する素振りを見せる僕に、ティアナが光らんばかりの笑顔を見せて、きゅぴんとウインクした。


「いい絵が見れました!」

「親指立てんな」


 やはり、グッジョブするティアナには説教が必要だ。せっきょっう! と発音するのが醤油である。味噌以外の表現が思いつかなかったのである。


「剥けたぞ!」


 活のはいった声とともに、僕の目の前に製造途中の春雨が繰り出された。


「食えと?」

「いや、啜れ」


 じゅるびゅるじょりずずずずず。やだ、なんかえっちいよ神様。ツッコム気力が失せていたので甘噛みしながらすすってやった。口内にビンタを浴びせられまくって滅茶苦茶痛い。


 しばらく経って。


 半分ほど食道に通過させたその時、音を立てていた僕の耳が余計な物音をサルベージした。冷や汗が瞬間的に溢れる。


「サツキくん、体調はどう?」


 お姉さんの訪問。

 固形物を啜る僕を見て止まる時間。

 この時、僕は退院を決意した。


「欲求不満?」


 じゅびゅりゅりゅりゅりゅうぅぅ。




 ◇◆◇◆◇◆




「退院おめでとう、僕」

「自分で言ってて悲しくならないか?」

「はい、お茶」


 ティアナにスルーされた。

 後で職員さんに病室を優遇してくれたお礼を言わないと……。つまり、空気になっていた職員さんは頑張っていたという脈絡ない思考である。リハビリよか頑張ってた。


 ちなみにここ、病室ね?


 目尻を下げながら苦虫を噛むように顔をしかめた。アキレス腱がヤバいらしいのだ。退院したくても後三日は退院できないのだ。やるせねぇぜよ。

 そもそも、羞恥から逃げ出したくて退院したがっているわけではない。僕は思案する。ギルドに登録したため、帰れるその日までは最低でも三回依頼を受けなければ罰金だ。


 後の事は知ったこっちゃないが、フェリへの危険を削減するためにも能力の研究をしたいわけで、死にたくないわけで、もしかしたらティアナにもとばっちりがいくかもしれないわけで、それを言い訳に退院しようと思うわけで。


 別にアンタのために退院するわけじゃないんだからね! 金銭問題ですね、分かります。

 過去の現代高校生は、来年就職活動頑張ろうと安直な現実退院を開始していた。


 と、そこで僕はある事を思いつき。

 それを口にした。


「入院費ってどうなってるの?」


 会話に触れずにいたティアナに聞く。

 だが、顔を背けるばかりで返答はない。

 フェリを見る。


「私が頑張って稼ぐ! コイツはあてにするな!」


 コイツとは当然ティアナ。

 いや、まぁ。入院費まで世話になる気は毛頭ないが……。

 しかしどこか意見が食い違ったのか、フェリは泣きそうな顔で僕に飛びついた。


「お前をあの看護婦のところに逝かせるものか!」

「すいません! 眼福には勝てません!」


 なぜかティアナが参加して熱がはいる。

 なんだ、この状況。

 なんだ、この展開。


「入院費をお客様が持つと言って」

「代わりに静紅に一日奉仕させると言って」

「入院費がかからないうえに目の保養に!」

「入院費はかからないが私の静紅が!」


 ……熱が冷めた。

 いろんな意味で真っ赤になっている二人を見つめて、疎通能力に錆がついた情報を還元してみる。


 入院費を払えない。

 お姉さんにさらわれる。

 僕がピンチ。


 入院費を肩代わりする。

 眼福が得られない。

 ティアナ危険。


 あ、アクレッシブすぎるぜ。


「静紅! 私は頑張る! 頑張るぞ!」

「静紅さん! 頑張ってください!」


 僕は考える。

 ティアナもう黙れよと。

 僕は思う。

 フェリの健気さがすでに目の保養だと。


 とりあえず看護婦さんを呼んで外出届けを出そう。

 お金を稼がなきゃ僕の身が危うい。


 結論とともに記憶が巡った。

 様子見に行くかと、小さく考える。


 その後、ヒートアップしていく彼女達に苦笑を浴びせて、ひっそりと僕は暖房いらずの病室を後にした。




 ◇◆◇◆◇◆




「此処は何処?」


 金髪の子の存在を思い出した僕は、外出届けを後回しに施設内を駆け巡り。


 彼女を探す旅路の中で。




 迷子になっていた。

お気に入り登録も増えてきて、作者は喜ぶ。

初の感想をいただいて、作者はベットで跳ねる。

なんか最近、小説書くのが楽しい。


そして次話を中心に能力の研究が開始されると思われたりする。


う~ン。

風邪つえぇ。

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