プロローグ
目を通して頂きありがとうございます。
皆様に目薬代をかけさせぬよう頑張ります。
そしてPSP投稿というin the暴挙。
ページ表示の遅滞に泣きつくという痴態を見せぬよう頑張ってみる。
週一のペースで更新できれば個人的には満点かと思われ……ねぇよ。
アフタヌーンティーを嗜むには出来すぎた昼下がり。
冷え込みの兆しを見せ始めた紅葉の散りゆく姿は、大気を侵食する雪の香りに似合わず暖かな印象を与えてくれた。千差万別とまでは言わないが、淡々としたその色には意欲による味付けを求められているようで、秋の季節の醍醐味が分かったような気がする。
自室の窓を媒体に得た感想を、名も知らぬ桃色の紅茶とともに流し込むと、その影響か言わずど知れぬ汗の行進は、僕の背筋を秋の終わりの如く踏みつけ体温の減退を飛び越えていく。
「私は神だ」
いい加減現状を直視しよう。心と背筋が冷え込みを見せる一方だ。と、僕こと皐月静紅は寒冷地に飛び込んだ精神に嘆息しながら、近年中に砂原と化すであろうブラウン管に瞳孔を移した。
「私は神だ」
再び嘆息。
そこには、四角い窓から上半身を生やした、白い装束を纏った少女がいた。
うわごとの様に呟く彼女の表情は、「セット? なにそれ食えんの?」状態の長い黒髪のおかげで見て取れず、髪や装束の隙間から覗く肌は、不健康のそれとはかけ離れた陶磁のような肌で、誤魔化しようがないほどに現実味が欠けている。
つい先程、政治関連のニュースに国会議員に対する個人的な評価を下していると突然彼女が現れた訳なのだが、その現れ方が某呪いのビデオをパロったかのような具合だったのだ。
剥げたおじ様のインタビュー時。彼の発言に何の意図も生み出せなかった僕は思わず欠伸をしてしまい、生理的にこぼれた涙を拭うと、なんということか彼の髪が伸びていた。まさか育毛CMだったのか? なんて考えが思考の網に掛かった瞬間。
生えてきた。なんというか、生えてきた。大事な事なので二回言いました。
「私、は、神だ」
黒髪の少女の髪が揺れる。外気に晒された顎骨には……水滴?
首を傾げるが早いか否か曖昧な重なり。黒髪の少女がキッチンの黒きG思わせる俊敏な動きで詰め寄って来た。息を飲む僕を尻目に、肉薄する装束。反射的に後退りが行われようと力んだ足腰に彼女の体が圧しつけられ、背もたれにしていた安物のソファーとともに僕は冷や汗にまみれた背中を強かに打つ。
苦悶の息が喉を震わす。その拍子で堪忍袋の尾が切れたのか、腹の上に乗った少女は、大きく憤慨した。
「お前だったのか位のツッコミいれろやボケーっ!!」
「そっち!?」
祟られた。もとい叩かれた。フルスイングとは全力で振りかぶることなり! と親切ご丁寧に僕の胸に打ち込み、ヒステッリクな理不尽が植えつけられる。
なにこれ? 幽霊にツッコミを要求されているのか?
胸中に芽生えた思いを半ば自暴自棄になりながら、零れる涙の栄養源で成長が促されていないか心配になる。そんな恐怖に怯える餌を尻目に半狂乱にのたまう彼女。なにこの人怖い。
「神様無視するなよ! 偉いんだぞ! 凄いんだぞ!」
更に力を込めて、捻りをまぜた拳を叩き込まれる。その度に冷や汗が勢いを増すばかりなのだが、発汗で死なないだろうか僕。
とゆうか、いくら神様だろうがテレビから登場するのはどうかと思う。しかも自分で神様って言うとか何なのさ? 俺様って言っているようなものじゃないか。
不安の種に養分を吸い取られたかと思ったが、案外僕、余裕である。それよりも段々と彼女が可愛く見えてきて仕様がない。
乗り掛かられてから気付いたが、およそ膝裏近くまである髪の長さと比べてこの少女の背丈は予想以上に低いのだ。テレビから垂れ下がった長髪が印象的で、無意識にプロポーションまで決めつけてしまったのだがこれは失敗。
ボサボサと思われた質も予想を遙かに上回る柔らかさを掲示していて、手の甲にのった髪の重みが(もとからそんなものだろうが)羽のよう。
撫でたらきっと、ふわふわフワフワで……うむ、いい。
「笑うなぁ! オタンコナス!」
「ぐふっ」
もしかして僕は笑っていたのだろうか? 笑っていたのだろうな。鳩尾が悲鳴をあげているよ。
ということは結果にしか過ぎないのだが、そろそろ脱線した話を戻すことにしてみよう。
まずは彼女に聞くべき質問あげて……。
君は誰? 神。
どこから来たの? テレビ。
おおぅ、早速投げ出したくなってきたぜ。
妥協が早すぎた。
それはまるでひび割れた受け皿のように、メインディッシュが抜け落ちたディナーのように頼りなさが顕現された威風で、窓を叩きつけるそよ風を思わせる。きっと、枝にしがみついていた木の葉も僕の仲間なのだろう。揺れる黒髪の香りが印象深さを与えてくれた。
「なんのために人間界に降りてきたと思ってるんだ……! なんのために……お前に……」
赤く濁った最後の一枚が、落ちていく。先ほどの態度から一変して、黒髪の少女の声量が屍の餌と成り果てる。
何をしてるんだ僕は……。こんな小さな少女を虐めるなんて、人として恥ずかしくないのか。神様だろうが何だろうが、彼女は、なんらかの理由で僕を求めているのだ。
こんなわけのわからない出会いを果たしたとしても、感情までは希薄じゃない。それに答えてやるのが今すべきことだろう。
「なんのために……! 人外れた魂を見つけたと思ってるんだ」
「え?」
差し伸べようとした掌が、不格好に制止した。レットゾーンと挨拶を交わした発汗量が体内の水分を根こそぎ食らって離さない。
なにその発言こわい。
引き吊った頬に手を添えられる。
暗闇に埋没した白の表情は、とても悲しげで、儚さを覚えさせて、心を締め付けてくるのだけれども。
なんだこの肩身狭さ。
瞳孔から広がる世界が点滅する。
整った顔つきを歪ませ、濡れた頬を伝って桃色の小さな口が弱々しく開いた。
「私と友達になってくれないか」
「……はい」
秋。意欲の季節。
無茶ぶりの葉に乗せられて、冬の前兆に、遅れた友達作りが行われた。
この日、僕は神様と友達になった。
なんだこのステータス。不毛だ。
誤字脱字等の報告を下さると泣いて喜びます。
ファンタジー処女作品。
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