雨の日のお出かけ
雨の日のお出かけはきらいだ。
傘をささなきゃいけないし、水たまりをよけながら歩くのも面倒だし、ズボンの裾が濡れるのも嫌だ。
ぼくはもう四年生だ。
買い物くらいひとりで行ける。
行けるけど……外は雨だ。
行きたくない。
でも、今日はママが熱を出して寝込んでいる。
ママが言った。
「ゆうくん、ごめんね……ママ、まだ起きれそうにないからお弁当買ってきて」
ほかほか弁当は商店街の中にある。ママと何度か行ったことがあるので場所はわかるし、ほかほか弁当のおばちゃんの顔もわかる。
わかるけど、雨だから外に出たくない。
「宅配とろうよ。持ってきてもらおうよ」
「宅配は高いからだめ。ゆうくんお願い」
お腹はすいた。
何か食べたい。
でもママは作れない。
そして宅配もだめ。
仕方ない。
行くか。
雨だけど。
「わかった……行ってくる」
「ごめんね、ありがとう」
ママのお財布から千円だけとる。
長靴をはいて外に出て傘をさす。
バラバラバラ。
けっこう降ってる。
めんどくさいけど仕方ない。
しばらく歩いていくと、一匹の虫が飛んできた。
「!?」
小さなシジミチョウだった。
僕の傘の中に入って、そのままふわふわ飛んでいる。
「え? なになに?」
ただ、すぐにその姿は見えなくなった。
「あれ? どこ行った?」
辺りを見回すも、雨はけっこう降ってるし、この雨の中をチョウチョが飛べるとは思えない。
実際に飛んでないし。
(何だったんだろう・・・?)
商店街まできた。
商店街はアーケードになっているから傘はなくても大丈夫。
傘を閉じると、またシジミチョウが目に入った。
「あ、いた!」
シジミチョウは、目の前をふわふわ何度か上下しながら、そのまま商店街の向こうへ飛んで行った。
さっきは居なくなったんじゃなくて、たぶん僕のどこかに止まってたんだ。そして、雨が降らないところまで来たから僕から離れたんだ。
そう思った。
そう思ったら、なんだかうれしくなった。
とてもいいことをした気分になった。
ぼくは、
雨の日のお出かけがちょっと好きになった。
終




