大好物はお忍びで行きましょう
読んで頂き、ありがとうございます。
皆がどのくらいの頻度で投稿しているのか分からない上に、次の頁を書くのにどこを押せばいいのか未だにアチコチいじっては失敗してを繰り返しております。
難しいよ…(;・∀・)
「――ミレーリア、今日はやけに機嫌がいいのね」
優雅に紅茶を口に運びながら、リリーミア王妃は微笑んだ。
その視線の先。
椅子に座っているはずの娘は、どこか落ち着きがない。
「え、そうですか?」
「ええ。今にもどこかへ“飛び出しそう”な顔をしているわ」
にこり、と意味ありげな笑み。
ミレーリアは一瞬だけ固まって―
「そ、そんなことないですよ?」
わずかに視線を逸らした。
(バレてる気がする……)
いや、“気がする”ではない。
ほぼ確実にバレている。
だが――
「今日は天気もいいし、のんびり過ごそうかなって」
できる限り自然に答える。
「そう。のんびり、ね」
王妃はそれ以上追及しなかった。
ただ、楽しそうにカップを置く。
「……ええ、良い一日を」
その言葉に、ミレーリアはぴくりと反応した。
(これ、完全に許可出てるよね?)
数刻後。
王宮の裏門から、ひとりの少女が姿を現した。
質素なワンピースに、軽く結んだ髪。
どこにでもいる平民の娘――
に見える。
「よし、完璧」
ミレーリアは満足げに頷いた。
「今日はパンと、甘いものと……あと本!」
足取りも軽く、思わずスキップする。
王都の通りは、いつも通り賑やかだった。
「焼きたてだよー!」
「新鮮な果物はいかが!」
その声に引き寄せられるように、ミレーリアは店を覗く。
「これ、ひとつください」
差し出されたのは、香ばしいパン。
「はいよ」
受け取って、ひと口。
「……おいしい」
思わず頬が緩む。
「こういうの、やっぱりいいなあ」
王宮の食事も美味しい。
けれど、こうして自分で選んで食べる楽しさはまた別だ。
そのまま、次は甘味の屋台へ。
さらに本屋へ。
「この本、面白そう……」
ページをめくりながら、小さく笑う。
――その頃。
見えない位置で、複数の影が動いていた。
「殿下、南通りに入りました」
「異常なし」
「周囲半径、問題なし」
低い声で交わされる報告。
王女は“ひとり”ではない。
一定の距離を保ちながら、
決して姿を見せることなく、
常に視界に入る位置で。
護衛たちは、ミレーリアを囲んでいた。
半径、およそ一キロ。
「……相変わらずだな」
一人が小さく呟く。
「気づいておられないのか、気づいていて無視しておられるのか」
「後者だろうな」
別の者が即答する。
その時。
ミレーリアがふと立ち止まった。
「……あれ?」
風が、少しだけ強く吹く。
手にしていた本のページが、ぱらりとめくれた。
その一瞬。
周囲の護衛たちの空気が変わる。
「……今の風」
「不自然だな」
だが当の本人は――
「まあいっか」
気にした様子もなく、本を抱え直す。
その無防備さに、護衛の一人が小さく息を吐いた。
「……やはり、まだ不安定か」
一方で。
王宮の一室。
リリーミア王妃は、静かに窓の外を眺めていた。
「出かけたのね」
誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。
「楽しそうで何より」
その声は、優しい。
けれど――
「……でも」
ほんのわずかに、表情が曇る。
「あの子の“力”は、まだ均衡を知らない」
風が揺れる。
カーテンが、ふわりと浮かぶ。
「無意識であれほど動かせるのなら……」
その先は、言葉にしない。
再び、穏やかな笑みを浮かべる。
「――ちゃんと、見ていないとね」
その頃の彼女、いや、お忍び王女殿下はというと――
「次は何食べようかな〜」
完全に満喫していた。
王女であることも、見守られていることも、そして自分の“力”も。
何一つ、深く考えずに。
ただ、楽しい一日を過ごしている。
それがどれほど危うく、
そして同時に――
どれほど特別なことなのかも知らずに
目的地を目指すミレーリアなのだった。
読んでくださる方に感謝申し上げます。
本当にありがとう‼️




