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乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon
央の国

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ふたり人知れず恋の道

エレーヌは立ち上がって姿勢を正し、女王に体を向けました。


「お母様。私、後を継ぎます」

「ちょ、ちょっと。それ、とーとつ」


女王は動揺します。


「4つの国を見てきて、央の国には女王が合理的だって気づきました。それに、星宿る海があったんです。オザリン王女の墓碑のすぐ近くに。運命を知ると言われている星宿る海が。天も足元も星空になった素晴らしい景色でした。そこで決めました。女王になるって」

「フォーはいいの?」

「!」


どきどきどきどき


いきなりぶっ込まれた爆弾に心拍数が急上昇。エレーヌは母親の顔をまともに見ることができません。どうして知っているのでしょう。いい感じになったのは、旅に出た夜からのはず。


「見てれば分かるって。フォーには相談したの?」

「いえ」

「相談しなきゃ。2人で逃げちゃってもいいと思ったのに」

「逃げません。誰かが女王をやらなきゃならないから。どこかから来た赤ん坊だったり、取り替えられた赤ん坊だったり、本当に女王から生まれた赤ん坊だったり。今のところ、国王のいない国はありません」

「そうね。国際的スタンダード」

「フォーには話します」

「じゃあ、ファウストのところへ行きましょ」

「はい」

「でも、家系図のことは話しちゃダメ。女王しか見ちゃいけないことになってるから」


エレーヌはまだ女王ではないのです。


いつも家族が集まる部屋に、ファウスト、セカンド、フォーがいました。

ファウストの表情は苦悩に満ちています。セカンドは、「よ、お帰り」とエレーヌににこにこ。


「母上を牢に閉じ込めるなどしたくなかった。女王の権限で法を変えればいいじゃないですか。はー。私は家臣や国民にどう思われているんだろう。これでは反逆者だ」


渦中の人、ファウストの心労を思うと、エレーヌは気の毒になってしまいます。


「あはは。央の国を取るなんて考えてたのに。そんなんじゃ、西の国だったら真っ先に殺されてる」


女王は、最も骨肉の争いが激しい国にたとえて笑い飛ばしました。続けて、高らかに宣言。


「央の国は『原則』女系継承で行きます。但し、絶対に、本人が望まない婚姻、子作りをしないこと。そして、万が一途切れる場合には、養女をもらうことにします」

「「「「養女?」」」」


一緒に家系図に2人のオザリン王女の名を見たとは言え、エレーヌは、女王の養女の明言にびっくりです。


「ええ。基本は兄弟の娘って考えてるけど、もっと検討します。他の国の王族は国を乗っ取られる可能性があるからダメとか、貴族の娘は政治に権力を持ち出しそうだからダメとか、一番好ましいのは父親が分からない子だとか、本人の意思で放棄できるとか、年齢を設けて大人が操ることのないようにするとか。いろいろ」


女王の言葉を聞いて最も安心したのは、ファウストでした。


「母上。議会に提出しましょう!」

「ダメよ。私が行って、勅令を出すわ」

「では明日!」

「あと1週間くらい公務さぼってゆっくりしたいんだけど」

「検討も含め、明後日の朝イチです。」


女王はファウストに押し切られました。


部屋を出ると、女王のもとに家臣達が群がります。古くから仕えているジジババは「よくぞご無事で」と涙しています。


「24時間女王として振る舞い、公務を(こな)すのに疲れていたので、とても休養になりました。心配させてすみません」


側近は「どの口が。人がいなければすぐ寝っ転がるく……」と言いかけ、別の者に口を塞がれます。



パタン


エレーヌの部屋、エレーヌはフォーと2人になりました。


「母上と何を話したの? エレーヌ」


フォーは泣きそうな顔をします。


「心配しないで。私ね、女王を継ぐ。でもね、誰のものにもないよ。フォーに言われたときに決めたもん」

「困ったな」

「え?」

「オレ、は?」

「いいに決まってるじゃん」

「エレーヌ。人前では距離を保とう。誰にも知られないように」

「うん。秘密にする」


エレーヌはフォーの胸に飛び込みました。背中に両腕を回してぴったりくっつきます。


「エレーヌ」


呼ばれて顔を上げると、おでこにキス。鼻にキス。口の横にキス。そしてやっと唇に。





次の日、エレーヌは朝帰りのサードに会いました。


「おはようございます」


人を小バカにしたようなメッセージ以来です。


「ああ、お帰り。早かったね」

「お兄様、教えてください」

「何を?」

「どうして分かったんですか? 星宿る海の場所。(いかだ)の話を聞いたんですか?」

「筏? なにそれ。オザリンって名前の由来を聞いたんだよ。珍しいから。オリビアじゃなくオザリン。そしたら、湖の名前だった」

「湖?」

「ほら、大河の源流の湖。あれ、オザリン湖。昔、すっげー綺麗なお姫様が湖の神様の花嫁んなったって。故郷の民話だってさ。別れを惜しんだ家臣達の涙が星になって降り注いでる場所に行くって言ってたから。星かーって。湖なら風でさざなみができる。ま、さ。オレは星宿る海は湖だと思ったわけ。そしたら、隣の湿地帯だった。キレーだったよな」

「本物のオザリン妃に都のオザリン妃のことを話さなかったのは、なぜ?」

「都のオザリン妃が幸せなのはたまたまだよ。責任逃れの罪は背負うべき。人生なんて好きに生きたもん勝ちだけどね」

『メンドクサ』




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