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乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon
東の島国

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密着ハンモックタイム



「ハンモック使ってみたい」


帰りの船、エレーヌはフォーに直談判です。殿方の3人部屋にしかないので、遠慮していました。けれど、この機会を逃すと、二度とお目にかかれない気がします。


「なかなかいー感じ。あれ」


フォーが3人部屋へ案内してくれました。部屋には誰もいません。

散らかり具合と汗の臭いに、エレーヌは少し眉をひそめました。


「フォーがハンモックで寝てるの?」

「交代で」


エレーヌは、まず真ん中辺りの網を広げ、座ってみました。


「ひっくり返りそう」

「はは。ひっくり返るし」

「そーなの?」

「ほい。ここ持ってるから。寝てみ」


上半身だけ横になってみました。ドレスのスカート部分までハンモックに入れるのは難しそうです。


「おおーっ」

「足も足も。入れてみ」

「え、ムリ。ちょ」


フォーは丁寧にドレスごとハンモックに入れてくれました。


「はは」

「入っちゃった」


少しでも動くと、ひっくり返りそうです。なのに、フォーはブランコのように揺らして遊びます。


「ど?」

「おっもしろーい。え、ちょっと、フォー」


今度はフォーがハンモックに入ってきます。


「じっとして」

「フォー」

「動かないで」


バランスをとりながら、フォーが慎重に横たわります。


ばこんばこんばこんばこん


エレーヌの心臓はあまりの近さにパニック状態。近いというか、距離は0。ハンモックの中でボンレスハムのようにフォーと一塊(ひとかたまり)になっているのです。フォーの左腕はエレーヌの頭を抱き、両脚はエレーヌの右脚を包んでいます。町娘のスカートは、貴族のスカートよりも薄く、下に履いている布も少ないのです。


『あ、あしが、からまりそう』


なんという心地よい圧迫感でしょう。エレーヌは気が遠くなりそうです。


どこどこどこどこどこどこ


フォーの心音が聞こえました。とんでもない速度です。

恋の手練(てだ)れのように振る舞うくせに、実は、そんなことはなかったのです。


「重くても結構耐えられるんだな」


フォーの声が耳元に響きます。息がこそばゆくて。照れ隠しに笑います。


「ふふ。」

「エレーヌ。キス、していい?」

「!」


エレーヌの両目が驚きに固まりました。事実がどうあれ、周りから見れば兄妹です。フォーにとってもエレーヌは実の妹のはず。


キス


それは実行されました。エレーヌの右のこめかみに。温かくて柔らかい唇。かすかに零れてくる息の熱さに溶けそうです。


「いーんだ。オレらは。もう知ってるんだろ?」


耳に降りかかる息と共に、ずっと待ち望んでいた言葉が届きました。


「フォー。どーして」

「6年前、ラインハルトの家に、エレーヌに似た肖像画があるって聞いた。侯爵家から嫁いできた叔母だって。そっくりって言われてるその人の姉妹を見たよ。舞踏会で。エレーヌに似てた」

「……」

「その人の名前が王立学園の名簿にあった。母上と同期だった。もう1つ。母上のところへ、ときどき竹筒が届く」

「竹筒?」

「央の国に竹はない。あるのは東の島国。船で運ぶから、濡れることがないように竹を使うんだろう。差出人は分からない。ラインハルトに、伯爵夫婦がどこにいるか聞いてみた。東の島国だった」

「……」


それだけなら、仲のいい友達同士で文通していると取れます。


「そのときオレさ、女王が脈々と続いてるの、あり得ないって思ってた。エレーヌを産んだのは、エレーヌにそっくりな伯爵夫人じゃないかって。だから女王について、調べたんだ」

「あり得ない?」

「今の女王も、先代も先々代も、女の子がなかなか生まれなかった。長い歴史ん中だったら、子供が生まれないとか女の子が生まれないって、そーゆーの、ありそうじゃん」

「あったの?!」

「調べるの、無理。家系図は女王しか見れない」

「だったら分かんないじゃん」

「央の国の法を調べた」

「法?」

「後継者を選ぶ順序について、なんかあるかもって」


ところが、そういった継承順位についてのものは、存在しませんでした。継承に関してあるのは、女王が家系図を保管することに関する記述のみでした。


「それって、法なんだ。知らなかった」


央の国には、様々な法があります。それらがどのように変わってきたかは記録が残っています。


「オレ、その、女王が保管するってのがいつからなのか調べた。確かに、すっげー太古の法では、家系図は玉座の後ろに誰もが分かるように飾るってこと、書いてあったから」


順に追っていくと、何年も前に女王が保管することに変わっていました。


「一応理由が書いてあった。『央の国にとって神聖なこと』だからだって。オレさ、このとき、後継者がいなかったのかもって思った。でも、政治的な記録には、女王がいつ即位したのかってのが載ってない。とにかく、それは、すっげー昔のこと。そしたら、東の島国で外交官の手記を見せられた。大河が氾濫した年にどこからか赤ん坊が連れられてきて、周りのみんながひれ伏した。しかも玉座の後ろの家系図が取り外された。家系図を見るのが女王だけなら、女王は家系図を改ざんできる」


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