神の子孫が知る央の国
「馬車はありません。歩きか馬です」
アルバートは残念なお知らせをしました。東の島国の道はあまり整備されておらず、馬車は走れません。
「「マジかよ」」
護衛と御者が声を上げました。エレーヌも心の声は同じです。
1人1頭小さな馬。荷物を積む馬2頭。キャラバンのように隊列を組んで街道を進むことになりました。最初に根を上げたのはエレーヌです。一応レディ。長時間馬に乗る習慣などありません。脚に力が入らなくなり、お尻の皮がひりひりと痛くてたまりません。
「ごめんなさい。旅が遅れてしまいますね」
レディというのに、木陰で腹這いになります。お尻が痛くて座れないのです。腿の内側も痛くてたまりません。
「ヌーちゃんが言ってくれて助かったぜ」
「オレらだってキツイ」
護衛と御者は休憩に喜んでいます。
そんな苦労をしながら、やっと東の島国の西の都に到着しました。
そのころには、エレーヌのお尻の皮はかなり耐性ができていました。
「西の都、ですか」
「こちらの都に神の子孫がお住まいです」
アルバートは骨折ってくれました。謁見するには、アポを取らなければなりません。書状を送り「面会希望」、返信が来て「許す」、再度書状「いつがいーっすか?」、返信「いついつの何時」、お礼状「よろ」。それらを厳しい文章で認めます。
数日後、やっと神の子孫に会うはこびとなりました。
海を隔てているせいか、東の島国の屋敷は独特です。両開きの門扉が開きました。少し進み、もう1つ門扉。中は真っ白な砂利が敷き詰められた広場。雑草1つありません。広場の向こうに大きな建物がありました。そこに謁見の間があります。
神の子孫は年齢不詳の白装束。高さ20cmほどの台に座禅を組んでいました。エレーヌ達は、美しく磨き上げられた木の床に座りました。
「ようこそおいでくださいました」
神の子孫が座る後ろの壁には、家系図が書かれた紙が掛かっています。
「御目通り願えたこと、恐悦至極にございます」
しばしば、アルバート以外は卒業式のように「「「ございます」」」と最後の言葉だけ繰り返します。
「央の国と我が国は、非常に古くから交流があります。こちらにそれらについての記録を集めました。ご覧ください」
神の子孫は、エレーヌ達に、央の国と東の島国の繋がりの歴史を示します。
庭に面していない壁際に台があり、その上に、書簡や木簡、竹簡が並べられていました。どれも見ただけで古さが分かります。10年、20年という単位ではありません。100年、200年、1000年という単位の古さです。
「我が国は島国です。現在は一部の港を通じて、様々な国々と交流があります。しかし、昔々は央の国のみでした。言葉、文字、技術、文化。様々なものについて央の国を手本としました」
『そういえば、言葉はほとんど一緒。きょーえつしごくとかは初耳だったけど』
そこから1000年以上経ち、文化については央の国とは全く別物。東の島国は、これまでのどこの国よりも異国です。
「央の国に習い、神座の後ろに家系図を飾っております」
と神の子孫は言うのですが、央の国では、家系図は女王のみが閲覧できる物です。エレーヌは、そのことを話しました。
「存じております。シャトル外交を行なっておりますので」
とのこと。
央の国で玉座の後ろに家系図を飾っていたことは、1000年以上前の竹簡に書かれていました。そして、家系図を取り外したことについては、外交官の手記がありました。
『ずーっと家系図が続いてるから、紙、足りなくなるもんね』
エレーヌは、単純に考えていました。
一方、フォーは食いつきます。
「読んでよろしいでしょうか」
「どうぞ。そちらの竹簡と手記です」
せっかくなので、エレーヌもフォーと一緒に閲覧しました。
竹簡には、家系図を掲げることにより、謁見する者に血統の正当性と威厳を知らしめると書かれていました。
次は手記です。こちらは紙です。
央の国を訪れた外交官が目にしたのは、平野部に広がる水害の痕。水害を鎮めるため、大河の源流に女王の娘を捧げたという話を聞きまた。東の島国にも同じ風習がありますが娘はそこらのミス村娘。外交官は、「女王が自ら娘を差し出すとは」と国を守る覚悟に胸を打たれました。
外交官が央の国の女王に謁見したとき、玉座の後に家系図がありました。見れば、女王には1人しか娘がいないではありませんか。生年月日から15歳と分かります。大河の源流に捧げられたのは後継としか考えられませんでした。
そのとき使いの者がやってきて、女王に小さな赤ん坊を差し出しました。女王は赤ん坊を抱くと、涙し、その場にいた全ての者達が床にひれ伏しました。外交官は口を開くのも憚られる空気を感じました。
翌日、玉座の後ろに家系図はありませんでした。
手記を持つフォーは、そのページを凝視しています。
「とても古い書簡ですね」
エレーヌは何年前が知りたかったのですが、東の島国は神の子孫の代ごとに年がカウントされるので、いつなのか分かりませんでした。
「魔法のiらんど」に投稿したものを「小説家になろう」に残そうと思いました。しかし、サイト色もあり、「小説家になろう」では一部R18に分類される気がします。かといって、R18専用のサイトに投稿するほどではありません。




