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乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon
海賊船

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バースデープレゼント

夜の海を進みます。エレーヌにとっては夢のようです。

ほぼ黒の藍色の海に現れる白い波や雲が途切れると現れる星々は、実際、夢の中のように幻想的です。

西の国から南の国への帆船で、エレーヌは乗組員達を羨ましく思いました。およそ人が操るとは思えないほどの巨大な物を動かすのですから。速度を測る道具、帆を張り操る滑車&ロープ、舵やアンカーの仕組み、他にも様々な技術が使われています。船という物があると知ってはいましたが、目の当たりにして感動しました。船長のように操舵するなど夢のまた夢でした。


『とんでもないトラブルだけど、ラッキー』


このときばかりは、エレーヌは神様を信じることにしました。


夜が白々と明けてきました。何人かが食べ物を探しに行きました。


「小麦粉にはダニがいて、ビスケットにはウジがわいてたわ」


ショックです。聞いたとき、エレーヌは自分が見なかったことを幸いに思いました。

開封していなかった小麦粉は無事だそうです。誰かがパンを焼いてくれました。塩漬け肉と豆や根野菜のスープも作ってくれました。


「こんなに美味しい物、食べたことなかった」


昨日、夕食を食べていなかったエレーヌは、空腹と疲れと夢の実現と朝焼けと皆の笑顔で、ありえないほど美味しく感じたのです。パンを丸かじりし、スープをコップで飲みました。美味しさに涙を流しながら食べました。


海賊達にも食事を持って行くべきかどうかという問題がありました。


「絶対にダメです!」


ジジが断言。自分達は食べ物を貰ったということが、女性達の心を縛っていました。ジジは理路整然と説得しました。


①今は幽霊のせいと怯えているが、事実を知ってしまう。

②食べ物を渡すためにドアか窓を開けると、そこから出てきてしまう。

③海賊が女性達に食べ物を与えたのは、商品を死なせては損だから。

④航海がいつまで続くか分からないから食べ物の量は多い方がいい。


皆、ジジの強い目に従いました。



漂流2日目、見張り台の上から歓声が上がります。


「ヘイ! 船。船だよ。みんなー」


皆で見張り台の下へ行き、様子を聞きます。


「気づいてくれた?」

「通り過ぎそう」

「「「ええーっ」」」


困りました。


「大砲でもあれば、気づいてもらえるんだけどね」


エレーヌは何気なく言いました。以前、軍艦の話を聞いたことがあったからです。


「あるわよ」

「ねえ」

「下の部屋に」


驚きです。気づけば、エレーヌは船内を知りません。舵を取り、風を読み、船の速さを測定し、甲板の上にずっといたのです。海賊船には軍艦ほどではありませんが、大砲がありました。使い方は分かりません。射程も分かりません。


「弾入れて火をつければいいんじゃない?」


メンバーはなかなかイージーで大らかです。ですが、敵とみなされて攻撃されてはたまりません。考えました。敵がいない方向へ撃つのです。そちらは皆に任せ、エレーヌはその船に近づくよう舵を操作します。


ドーン!


それはすごい衝撃音でした。船体が揺れ、傾き、耳はしばらく音が聞こえないほど。船室から、監禁されている海賊達の騒ぐ声が聞こえます。


「気づいた。船がこっちに方向変えてる」


見張り台から大声が聞こえます。


「「「やったー! 助かる」」」


女性達は大喜びです。


「央の国の旗が見える。海軍。海軍よ」


さあ大変です。南の国にとって央の国の男性は大変人気があります。イケメンの流行りなのでしょう。そして、海軍といえばお嫁さんになりたいNo.1。皆、一斉に顔を拭き、化粧をし、香水で汗の(にお)いを消します。時間がないのに、髪を結い直す者までいます。

エレーヌは、舵の操作で手一杯でした。なにせ、砲弾を撃った後、揺れに揺れましたので。それでも、膝のところで結んであったドレスの裾を戻しました。エレーヌの場合は、王女だと言わなければならないからですが。


海軍の船が近づくと、女性達は涙ながらに訴えました。


「南の国で拐われました」

「船が遭難しています」

「海賊船です」

「海賊は閉じ込めてあります」


全て正しいことです。しかし、聞いた相手は訳がわからないといった顔です。


「「ヌーちゃんみーっけ!」」


護衛と御者がエレーヌを指差します。その瞬間、船の乗組員全員がびしっと敬礼しました。


ざわざわざわ


女性達がざわつきます。それは、エレーヌが原因ではありませんでした。


「ちょっと」

「マジ?」

「ヤバくない?」

「彫刻?」

「フィギュア?」


女性達の視線の先には、サードとラインハルト。♡_♡

誰もエレーヌへの敬礼など気にしていません。

とりあえず、女性達は全員、央の国の海軍の船に移りました。


「エレーヌ」

「フォー」


フォーです。何ヶ月ぶりでしょう。夢のようなことが続きすぎます。夢かもしれません。


「無事でよかった」

「皆さんのおかげ、な、の……zzzzzz」


エレーヌは伸ばされたフォーの手に触れたとたん、眠り姫になってしまいました。


「僕からのバースデープレゼントだったんだけどな。この子猿への」


サードは、フォーに抱き止められたエレーヌを眺めながら悪態をつきました。


評価してくださった方、ありがとうございます。とても励みになります。

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