表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王女ですがムコ取りが嫌なのでとりあえず旅します  作者: summer_afternoon
海賊船

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/77

夜の海を風上へすすめ

「窓ね。どーしよう。あ!」

「いい案ですか? エレーヌ様」

「足跡みたいなのするの。今度は血の手形とかどう? そしたら怖がって窓を開けないと思う。でも、血のお水、もうないんだよね」

「血ですか。見張り台に1人いますが。どうせなら、体の一部でも切り取って窓に吊るしましょうか?」

「絶対ダメ!」


トン


エレーヌは思わず机を叩いてしましました。「うわぁ」「なんだ」と船長室の下にある船室からざわめきが聞こえます。

エレーヌは窓の外に吊るされた手足や生首を想像してしまいました。17人もを夜の海に突き落としたジジなら、サクッとしそうです。


「きっと効果ありますよ?」

『そりゃあるでしょーよ』

「えーっと。私が嫌なの」

「そうですか」


結果、とてもありきたりに窓の外側の板を閉めることになりました。嵐や高波に備え、ガラスを守るための板があるのです。それは外側についています。窓も外側の板もそれほど大きくありません。


エレーヌとジジは波に合わせ、とても小さな声でハミングしました。西の国で現寵姫達が歌っていた曲です。


「了解です。エレーヌ様」

「じゃ、このテンポで」


2人で、海賊達がいる船室外側の真ん中辺りに立ちました。一緒にとても小さな声でハミングを始め、足音を忍ばせて、それぞれ別々のドアの外側へ行きます。そして、曲のクライマックスの頂点で、


がちゃり がちゃり


鍵を閉めました。OKです。エレーヌには波に紛れて、ジジが同時に鍵を閉めた音が聞こえました。次のフレーズに合わせ、テンポよく窓の外側の板を閉めます。板は船室の両側に3つ。閉め終わったら、モップの柄を板についている金具に通し、中からは開かないようにします。


「助けてくれぇ」

「航海士だ。あいつだ。あいつの霊だ」

「悪かった」

「うわぁ」


海賊達がどたどたと騒いでいる様子が聞こえます。

ドアが蹴破られないよう、そこらへんにあった箱や道具などを置きました。

エレーヌは船底の女性達を解放しに行きました。ジジは、見張り台に1人海賊が残っているため、甲板で見張りです。


牢の前でエレーヌは状況を説明しました。


「まだ1人残っていますし、海賊達が出てきてしまう可能性もあります。絶対安全なのは牢の中ですが、上に行きますか?」


女性達は全員、牢から出ることを選びました。

甲板への階段を上るとき、ジジともう1人、人影がこちらに向かってきます。


「エレーヌ様。念の為、捕えておきました」


なんと、見張り台の上にいた男です。両手を頭の後に組んで歩かされています。


「こ、殺さないでくれ。何でもする」


何をされたのか分かりませんが、男は泣いています。エレーヌは可哀想になってしまいました。


「だったら、船を動かすのを、「エレーヌ様!」


なかなかの剣幕でジジに止められました。


「はい。」

「牢の鍵をお貸しください。ぶち込みます。でなければ、海にぶち込みます」

「はい」


エレーヌは素直にジジに従いました。女性が1人、ランタンと鍵を持ってジジの足元を照らす係をしました。


閉じ込められている海賊達に気づかれない方がいいので、船室から離れた場所で集います。


「船は、基本北に向かっていますが、少しずつ東に流されています。陸は西です」


それは恐らく、央の国の海軍に見つからないために、陸からやや遠い針路をとっているからと考えられます。

エレーヌは、女性達に訴えました。協力してほしいと。

西へ行って、陸が見えたら座礁するぎりぎりまで近づいて停泊し、漁師に見つけてもらうというのが理想的です。今、風は西から吹いていて、風上に進まなければなりません。それには帆を動かす必要があるのです。


全員で7人。万が一海賊達がドアを蹴破ったときの対処要因は、もちろんジジです。ジジは船室前から動けません。


「ロープだらけで、どれがどの帆を動かすかなんて分からないわ」

「その前に、どう動かせばいいのか」


その点は、エレーヌが分かります。ただ、実際にやったことはないので、自信はありません。


「やってみましょう。何もしなかったら遭難するだけよ」


誰かが言ってくれました。


「そうね。男と同じ力は出せなくても、2人3人でだったら動かせるかも」


そんな風にして、さくさくと決まっていきます。

ムリだと思いつつ、エレーヌは言ってみました。


「本当は見張りが1人欲しいのです。私は、舵を動かすので」

「じゃ、私が」


すっと1人が名乗り出てくれました。


「あそこですよ?」


エレーヌはメインのマストの遥か上にある見張り台を指しました。


「ええ。きっとできるわ。小さなころ、椰子の木に登って遊んでいたの。ちょっとツルツルなのが気になるけど」


椰子の木の幹には横に線があって凸凹しています。そこに足をかけて登るのす。エレーヌは船の横から斜めに見張り台に向かってある、ロープの網を指しました。


「あれを使って登るんです」

「だったら簡単」


頼もしい応えでした。


現在、船の帆を畳んだ状態で北北東への潮流に流されています。西へ向かうには、まず帆を広げなければなりません。帆船で風上へ進むのは、初心者向きではありません。畳んであった帆を広げます。


「すごい。こうなっているのですね」

「引っ張られるぅ」

「手が」


力仕事などしたことのない香水の店員です。


「きゃあ、ごめんなさい」


手の中のロープが滑ってしまったり、結んで固定できなかったり、なかなか大変です。


「結ぶのは、私が」


ロープには、様々な結び方があります。エレーヌは、西の国から南の国への船で教えてもらったことを、しっかり実行しました。

次は舵をとって動かします。


「進んでる!」

「ちょっとずつだけど風上に進んでるわ」

「やった」


みんなで喜び合いました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ