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王女ですがムコ取りが嫌なのでとりあえず旅します  作者: summer_afternoon
海賊船

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禁止のはず由々しき港

帆船は、エレーヌが西の国から南の国に来るときに乗ったものよりずっと小さい船です。

先ほどまでいた香水の店の海側は、程よい崖。切り立ってはいませんので、自殺のために飛び降りたり、犯罪の告白には適しません。けれど、巨大な船を隠すことができる程度には高低差があり、街の通りから船は見えなくなっています。海の中も、大きな船底が擦らないのでしょう。


店員の女性が1人、乗船拒否されました。


「ババアはいらん」


アラサー女性は、縛られたまま、ぽいっとその辺に転がされました。

かもめの鳴き声の中、エレーヌは船へ背中に剣を突きつけられたまま、陸から船へ渡した板の上を歩きました。


『ごめんなさい。ジジ』


エレーヌが喉元に剣など突きつけられていなければ、ジジはエレーヌを助けることができたでしょう。


船に乗ると、陸とを繋いでいた板が片付けられました。

甲板の上、女性達は横一列に並べられました。

このような乱暴狼藉、海賊に他なりません。

なんということでしょう。エレーヌが小説で読んでいた海賊と違いすぎです。「君のハートを盗みにきたんだ」的な妙齢の素敵な男性など一人もいません。全員、据えた臭いの小汚い、、、いえ、汚いおっさんです。


「はっはっは。上等上等」

「酒の相手が欲しいよな」

「どれにしようかなっと」


縛られた女性達の前に男達が15人ほど群がります。その中から1人、ヒゲで口が見えない男が出てきました。ゆっくり歩きながら品定めしていきます。


「おー、こいつは」


ヒゲ男はエレーヌを顎クイ。


『げーげーげー。離して、ばっちい』


ヒゲ男はふっと視線をエレーヌの胸に落とし、さっと手を離して次へ行きました。


『ムッ』


別に、選ばれなかったからよかったのですが、なんとなく屈辱です。

選ばれたのは、メロンのように見事な胸の女性でした。


「嫌です。やめてください」

「いーっていーって。酒注ぐだけ」

「そーだぜ。オレらはジェントルマンだからな」

「おじょーさん、船には掟があるんだぜ。商品には手ぇ出さねえってな」

「安心して酒を注いでちょ」


そんなやりとりを見ている間にも、引き潮に乗って船はどんどん沖に出て行きます。

船が揺れるので、エレーヌ達は甲板に座らされました。もちろん縛られたままです。

甲板のど真ん中で酒盛りが始まりました。


しばらくすると、酔っ払った男が1人、ふらふらとエレーヌ達のそばにやってきました。船が揺れでも大丈夫なようにロープを体に1周させ、気持ちよさそうにぼーっとまどろんでいます。


『ラッコみたい』


ラッコは寝ている間に流されないよう、海藻を体に巻いて眠るのです。

エレーヌは話しかけました。


「おじ様、おじ様」


男は、焦点の合わない目でエレーヌの方を見て、にーっと笑いました。


「おじ様か。悪くねーな。けどオレは未婚だ。おにーさまだ」


4人の麗しい兄達とは似ても似つかないおっさんを同じように呼ぶなど、不愉快です。しかしエレーヌは、内心『きっもー』と思いながらも媚びるような声を出しました。


「おにい様。みなさんは海賊ですか?」

「おうよ」


男は答えてくれました。「黙ってろ」とは言いません。エレーヌはお酒の威力に感謝しました。


「海賊は、船を襲うだけじゃないのですね」

「ああ。南の国の船はなー。襲っても今ひとつ商売になんねーんだわ」


これは、先にサードから聞いていたことが理由でしょう。南の船の積荷は綿花やお茶。綿花は加工が大変なので簡単には売り捌けません。盗んだお茶はノーブランドになってしまい、高く売れません。


「東の島国の船や央の国の船は襲わないんですか?」

「東の島国の船はな、当たりが悪いと、クソ強ぇヤツらが乗ってんだわ。央の国の船は海軍と連携してて、沈められる危険があっし」

「だから陸にまでいらしたのですね?」

「そーそー。南の国のな。央の国の方は海軍がいるから。東の島国の陸へは怖くて上がれねー。金目の物っつったら女が1番手っ取り早い。運が悪かったな」


男は酔っ払ったせいか、とても饒舌です。途中「水が欲しい」と樽からジョッキに水を汲んで飲み、ふーっと一息つきます。見れば、マストに樽がくくりつけてあります。それには水が入っているようです。「おーい、空んなったぞ」と大声を上げると、下っ端が別の樽をくくりつけていました。


「おにい様、私達はどうなるのですか?」

「央の国にでも売るさ」

「央の国では人身売買が禁止のはずです」

「なーに言ってんだ。盗みは禁止のはずです、人殺しは禁止のはずです、アヘンは禁止のはずです。はーっはっは」


残念ながら、その通りです。犯罪とはそういうもの。


「央の国の港は、どこも海軍が監視していますよ?」

「ちゃーんとあるんだぜ。オレらみたいなのの専門の港が」


これは由々しき問題です。王家の者として、いえ、央の国に住む善良な者として、放っておけません。この海賊船は、ならずもの達が使う港の場所へ案内してくれるのです。


『願ったり叶ったり』


エレーヌは、違法取引を一掃するチャンスだと思いました。

エレーヌは王女。央の国に送られてから正体を明かせば誰かが助けてくれるだろう、と蜂蜜のように甘く考えました。海賊船に「商品に手を出さない」という掟があるので、女性達は安全です。女性によっては、お酒の相手をさせられるでしょうが。


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