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乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon
海賊船

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香水の店に据えた臭い

「そーだ、僕から誕生日のプレゼントがあるんだ」


サードは突如会話を方向転換。フォーの件をぶった斬りました。


「ありがとうございます」

「ここでは無理なんだ。ちょっと後んなっちゃうかな。旅の最後に」

「楽しみです!」


いったいどんなプレゼントでしょう。数多(あまた)の女性を喜ばせてきたサードからのプレゼンとに期待が膨らみます。

部屋に帰って、ジジと2人で想像しました。


「エレーヌ様が喜ぶこと。うーん。すっごいご馳走でしょうか。たくさんのお菓子」


ジジにとってのエレーヌは、子供のようです。


「それいい! 央の国へ入ってからってことは、別荘でシェフに作らせるのかな」


実際、エレーヌは子供です。


「エレーヌ様はなんだと思いますか?」

「サードお兄様だから音楽かな。別荘へ行ったら楽団がいて、私のために作った曲をプレゼントしてくれるとか」

「いーですね。サード様にしかできませんよね。それかも」


エレーヌはその後サードの前で、ことあるごとに好きな食べ物を念押ししました。


「私が食べたいのはね、えーっと、柔らかい牛肉とぉ、東の島国風タレのうなぎとぉ、アクアパッツァも」「お兄様、チョコレートは最高です。ふかふかのスポンジとのコラボも好きです」「干したイカをずーっと噛むのも乙ですよね?」


そんなエレーヌの言葉を、サードは「誕生日プレゼントのことだな」と分かっているようで、左右非対称に青い瞳を細めるのでした。


旅は順調です。逆三角形2つを合わせたような形の南の国、北の方を突き進んで東の海に出ました。この後は海沿いを北上する予定です。


「大きな街ですね、お兄様」

「王都と同じくらい栄えてるね」

「ステキな帽子。あ、扇子が」


央の国の国境に近いせいか、央の国の品が高級品として多く売っていました。


「へー。面白い。いい商売してるね。レートが違うってのもあるけど、ぼったくり」


アクセサリー、食器、傘など、央の国では普通の物でも、南の国ではとても高価な贈答品のようです。


「お兄様、こっちにはハンカチ」


港町です。船の絵がついたハンカチがあるかもしれません。眼球が白い老婆は、赤ん坊を連れた貴婦人が船の絵のハンカチを持っていたと言いました。

エレーヌは探しました。

ありませんでした。お店の人に尋ねましたが、花の模様のハンカチを勧められただけでした。


香水の店があります。とても賑わっています。


「う。僕は遠慮する。いろんな匂いが混じってるじゃないか」


繊細なサードは鼻のあたりに手をやり、息を止めました。


『お店だからいろんな匂いがあるのは当たり前』


サード、護衛、御者は近くのカフェで待つことになりました。

エレーヌはジジと2人で店に入ります。

店内は、海側に大きく窓を取ったステキな空間でした。女性達に人気なのが納得です。ステキな場所にいると自分がエレガントになったような気がします。そんな自分に相応しい香りを優雅に選びたくなります。


他の女性達に混じり、エレーヌとジジはテスターの香りを嗅いで微笑んだり、香を染み込ませたレースの匂い袋を見ていました。


『なんか、変な(にお)いが』


微かに据えた(にお)いがするのです。何かが腐ったような酸っぱいような汗臭いような。周りにいる女性達から、そんな臭いはしません。エレーヌはジジに尋ねたかったのですが、香水のお店で「変な臭い」など、小声であっても口にするのは(はばか)られました。


くんくんくんくんくんくん


エレーヌは鼻を頼りに、臭いの元へ向かいます。


「エレーヌ様、どうかされたのですか?」


ジジが後ろから追いかけてきます。

店の奥、臭いはすぐと分かった壁の裏、剣がエレーヌのアゴの下で止められれました。いきなりのことに、エレーヌは息を止め、目を見開いて喉元の剣を見つめます。きらり、と切れ味の良さそうな刃が放つ光。

剣を持っていたのは臭いの元。髪には汗と油で埃がくっつき、服は色褪せ、汚れ、破れています。顔に刀傷のある男でした。

エレーヌの姿を見たジジは固まりました。


「!」


危険に晒されているのはエレーヌだけではありません。奥には店の女性達がロープで後ろでに縛られています。しかも、据えた臭いの元は10人ほど。エレーヌは、店内にいるお客達に知らせようと、遭遇してから1分は経っているのに、今更、声を上げようとしました。


「きゃ、」

「このアマ!」


即、男に、剣を持つ反対のてで顎ごと捕まれ、口を塞がれます。頭蓋骨ごと潰れそうです。

ほんの一瞬の奇声でも効果はありました。壁に阻まれて見えませんが、女性達のざわめきが聞こえます。


エレーヌは口を塞がれ、剣を喉元に当てられたまま、別の臭いの元に体をロープでぐるぐる巻きにされました。ジジまでぐるぐる巻きです。

エレーヌは引っ張られ、建物裏手のドアから引きずるように出されました。


バタン


ジジを建物の中に残したまま、ドアが閉まります。


「□□!」(ジジ!)


叫びたくても声になりません。エレーヌは岩場にある階段を歩かされます。下へ。エレーヌの前には店員らしき女性が6人、後ろで手を縛られ、口を布で塞がれ、剣で脅されながら歩かされています。


岩場の下にあったのは、帆船でした。


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