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乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon
旅へ

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シスコン兄妹愛茶番劇

テーブルには、背の高いガラスの器に入った蝋燭(ろうそく)が揺れています。壁にもたくさんの蝋燭があり、明るく部屋を照らしていました。今は食事中。席を立つ者はいません。エレーヌはカフスボタンを入れた果物皿をちらちらと気にしつつ、星宿る海の話を聞きました。


「星宿る海」の話は、(おう)の国に住む者なら誰もが知っています。ですが、どこにあるのかは誰も知りません。「星宿る海」は辿り着ける者を選ぶと伝わっています。


「海と言うからには、海なんだろうな」


央の国は海に面している部分が限られています。南側が少しと東側だけ。


「もし央の国だったら、場所が分かってると思わないか? 央の国の海沿いは、港や街がある。街道もある」


そうなのです。だからこそ、エレーヌは北の国、西の国、南の国、東の島国に旅をしようと思ったのです。

北の国は凍てつく寒さ。大地をつっきって北の端へ行くと、冬には凍ってしまう海があります。西の国との国境を越え、西に進むと鮮やかな海があります。波も気候も穏やかで美味しい木の実がたくさん採れる場所です。南の国の海は央の国との貿易船が数多く行き交っています。央の国と東の島国との間には、ときに恐ろしく荒れ狂う海があります。


エレーヌは、東の島国との間の海のどこかではないかと思っています。激しい波に星々が吸い込まれる光景が容易に想像できるからです。ただ、星が生まれるなら、穏やかな海なのではないだろうかとも思います。


「昨日、王立図書館で調べたんだ」

「私はご老人に聞いたわ」

「家の書庫を探してみたの」


それぞれ、様々な方法で調べてくれていました。もっとも有力な情報は、食事をしたかどうかも忘れてしまう老人が自分の曽祖父から聞いたという話でした。


「羊飼いが道を教えてくれたんですって。ただ、ご老人のご家族は『また言ってる』って苦笑いしていたわ」


エレーヌは信じました。


「ありがとう。『また言ってる』ってことは、きっと、若いころから話していらっしゃったのね。手掛かりになると思う」


誰かが冷静に語ります。


「星が消滅して生まれる場所なんてないよ。だったら、羅針盤がなかったころの船乗りはどうやって航海してたんだ? オリオン座も北斗七星もずーっと同じ形じゃ……な……もごもご」


その発言は、途中で途切れてしまいました。ファウストはいらんこと言う誰かの口を塞ぎながら被せます。


「北の国には、夜空に光のカーテンができるらしい。それのことじゃないかと思うんだ。光のカーテンに星が隠れて消え、カーテンから星が生まれる」

「「「すてき!」」」


その場にいた女の子達全員が、幻想的な空を見てみたいと思いました。


ところで、エレーヌは星が動かないことを知っています。天文学の本にありました。しかし、それはオリオン座や北斗七星、北極星などの有名どころに限るのではないかと考えました。星は無数にあり、名前があったり星座に属したりしているものだけではないからです。エレーヌは、そんな、名もなき星々が消え、生まれる場所が星宿る海だと想像しています。


4人の兄達は、星宿る海を口実に、エレーヌと旅をしたいだけでした。


「北の国で星宿る海が見つからないことを祈るよ」

「そーだね。見つかったら旅が終わってしまう」

「東の島国まで、バトン、繋いでよ」


困ったものです。


その場にいる何人かはエレーヌよりもずっと大人で、繰り広げられている兄妹愛茶番劇をほほえましく見守っていました。


一方、まだまだ子供のエレーヌは、老婆をこの別荘へ招いた人を炙り出そうと、悪戯を企てていました。護衛、御者、侍女に準備をお願いしてあります。重曹とクエン酸は、掃除に使用するので別荘に常備されていましたし、松ヤニは、バイオリンを弾く3番目の兄が持っていました。


食事はデザートにさしかかりました。壁の蝋燭が消えて部屋が暗くなり、ロマンチックなムード。灯りはテーブルのところどころに置かれているガラスの器に入った蝋燭だけです。

エレーヌはこっそり侍女からグラスを受け取りました。準備OKです。誰もがお喋りに夢中。他の人のことなど気にしていません。何より薄暗くてよく見えないのです。エレーヌは大きく頷いて、護衛、御者、侍女に合図を送ります。


フッ


一斉にテーブルの蝋燭の火が消えました。辺りは真っ暗です。

周りでは、いきなり全ての蝋燭が消えたことに騒いでいます。ガタガタとイスの動く音。何人かは席を離れているようです。


「なんだなんだ」「怖い」「大丈夫ですか」


やがて、壁の蝋燭の1つに火が灯されました。ファウストでした。さすがしっかり者です。厨房のコック達が使っていた火を持ってきたようです。2番目の兄は、別の蝋燭を近づけて1本目の蝋燭から火をもらい、ずらっと壁にある蝋燭に火を移しています。

エレーヌは、果物皿を見ました。


『カフスボタンがなくなってる』


罠にかかりました。あとは、犯人を探せばいいだけです。


使用人達は大慌てで新しい灯りの準備をしています。

かなりの間があり、やがて、テーブルに別の灯りが置かれました。


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