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王女ですがムコ取りが嫌なのでとりあえず旅します  作者: summer_afternoon
南の国

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3番目兄、出生の暗黒

信じられないという顔のエレーヌに、サードは先に結論を告げました。


「だから、僕の父親は間違いない。そして、たぶん、僕は母上から生まれた」


死刑宣告という言葉に、エレーヌの頭から貴婦人と赤ん坊の話がふっ飛びました。


「なぜお母様は死刑を宣告したのですか? どんな罪であれ、国から追放することだってできたのに」

「父が望んだ」

「それは誰かから話を聞いたのですか?」


母親が話すはずありません。周りの側近達も。ましてや息子のサードに。


「父の先妻や友人を訪ねたんだ」


それは、まだ先代女王の時代でした。先代女王は、娘に後継の女の子が生まれていないことを気に病んでいました。1番目も2番目も男の子。

なので、女の子がたくさん生まれている家を探しました。サード父の家は、4姉妹。誰もが知る美貌一家。サード父はサードと瓜二つなのだそうです。


「さすがに、農家だったから日焼けはしてただろうけど」


サード父は最初、先代女王の申し入れ=子作りを断りました。妻と家族を愛していたからです。しかし、妻の父親の病を治すために、城へ入ることを決めました。サード父の家には、医師が派遣され、薬が渡され、食料や生活用品など、あらゆる物がふんだんに贈られました。

サード父はとても妻を愛していましたし、現女王は最初、サード父を拒んでいたそうです。2年後、やっと現女王は身籠りました。任務を終えたサード父が我が家へ行くと、そこでは知らない男が家族と暮らしていました。

サード父は我が身を呪いました。元凶は、子作りです。現女王の膨らんだお腹は、サード父にとって、自分の不幸の象徴でした。


「父は、城に突撃したんだ」


居場所をなくしたサード父は、馬と銃と剣を買いました。そして、城門が開いているときに守りを突破し、城へ入りました。発砲して衛兵を5人殺しました。現女王が説得に現れると、膨らんだお腹を剣で狙いました。


「それを助けたのは、セカンドの父上だった」


偶然、城にいたセカンド父が現女王とまだお腹の中にいたサードを助けたのです。サード父は捕えられ、投獄されました。サード父の娘達や友達が面会のために城を訪れました。


「僕は、面会に何度も来た父の友達に会ったんだ。父は『もう生きていても仕方がないから、死刑にしてほしい』って言ってたらしい。母上に死刑を頼んだってさ。父は最期まで、娘達の母親に、妻に、会いたがってた。僕には分からない。自分を裏切った女なのに」


悲しいお話です。実の父親に殺されるところだったサードの心を思うと、エレーヌはいたたまれませんでした。言葉を失っているエレーヌに、サードは更なる衝撃の事実を伝えます。


「僕が生まれたのは、偶然、父の処刑の日だった。それが原因で、父は『女の子を身籠らせることができなかったから処刑された』って噂が広まったんだ。だから、フォーは、父親候補が3人で、誰か分からないようになってる」

「お兄様、おっしゃってることがよく分かりません」


事実ではない噂が広まり、誰もが現女王との子作りを拒否しました。子作りを引き受けて、もし男の子が生まれたら、自分が処刑されてしまうと思われたのです。いくら否定しても、誰も信じませんでした。サード父が城に突撃し、何人もの衛兵を銃殺したこと、現女王に剣を向けたことは伏せられていました。それはサードを罪人の子供にしないためです。

そこで、3人がローテーションで子作りの相手をし、父親が誰か分からなくするという方法が取られました。


「ひっ」


エレーヌはぞっとしました。


「先々代の女王はこれが5人だったんだよ。だからさ、僕は、エレーヌが城から逃げたとき、このまま逃がそうって言ったんだ」


どうやら、エレーヌを逃がそうと提案したのはサードだったようです。女の子を産むというだけの道具にならないために。

自分が背負う任務の異様さと代々の女王達が歩んできた過酷な運命に、エレーヌは絶望しました。


「話の論点はこれじゃない。もしも赤ん坊が取り替えられたとして、それは誰かってこと。セカンドと僕は違う。言い切れはしないけれど」

「私かもしれません。普通に考えて、王家は女の子を望んでいたのですから」

「僕も同じ意見だよ。例えば、ファウストかフォーだったとする。その場合『女の子に生まれたら自分と同じ道を辿ることになるから可哀想』と母上が考えた可能性はある。が、そしたら、エレーヌのときにすり替えなかったことと矛盾が生じる」


そのとき、ふと、エレーヌは自分の父親について何も知らないことに気づきました。


「お兄様。私の父はどなたなのでしょう?」

「分からない。取り替えられたとしたら、益々分からない」

「いえ、取り替えられていないとして」

「母上に男の影など」

「そうですよね、ありませんよね」

「セカンドの父上しか思い当たらない」


確かに銅像が立つほどの勇者かもしれませんが、エレーヌの印象では、がさつな、、、いえ、大らかなおじさんでした。若いころはイケメンだったのかもしれませんが、歳をとって劣化、、、いえ、渋みが大衆化したタイプ。要するに、その辺に転がっていそうなおっさん。まあ、様々な国の情勢に詳しくはありましたが。


読んでくださってありがとうございます。

「北の国」の章を少し変更しました。

ストーリーに関わってくるのは、狐火は遠くからも見えるという内容です。

「ep.11 このままでいられたら」「ep.20 空はどこまで見えるか」の話を追加し、「ep.21 自分の存在が咎ならば」の最後に加筆しました。

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