ギャンブラーエレーヌ
大胆にも現寵姫は、ハレムの外、王宮の一室でギャンブルをしようと言うのです。
今日は、現寵姫が旧寵姫に勝った日です。自分の力を他の女性達に知らしめなければなりません。特別感を出したいのでしょう。
王宮の一室には、来客用のギャンブルルームがありました。現寵姫はそれを知っていました。国王に連れてきてもらったことがあるそうです。
夕食後はみんなでギャンブルです。セカンド、護衛、御者も来ました。護衛と御者は、ハレムの女性達にでれでれです。
「なんだこれ、すっげーいい匂い」
「フェロモンだフェロモン。すーはーすーはー」
最初、ハレムの中にいる女性達は物珍しげに見学していました。そのうち、一人二人とゲームをプレイし始めます。国王の横に腕を組んでぴったりと胸をくっつけているのは現寵姫。サイコロに賭けています。
エレーヌは、やりたいのにできないブラックジャックを見つめました。
「王女様、一緒にやりましょう。命を助けていただいたのです。チップは私が」
現寵姫に誘われ、国王に促され、ブラックジャックです。大勝ちです。その後、ポーカーで全てを失いました。-_- ^o^ T_T 顔に出ていました。現寵姫はポーカーが激強でした。ぜんぜん大したカードでなくても、はったりをかませて、皆をびびらせました。
「何か賭けませんか? 貴方の得意なブラックジャックじゃなくて、私が得意なポーカーじゃないゲームで。サイコロはいかがですか?」
現寵姫は好戦的でした。
「もう賭けるチップがありません」
そんなエレーヌに現寵姫は提案しました。
「では、私が勝ったら、友達になってください。命の恩人としてではなく、友達として、私と文通してください。そして、央の国の王女様と友達だと公言させてください」
『嫌。怖い。関わりたくない』
「では、私が勝った場合は?」
「私にできることであれば、何でもいたします。命の恩人なのですから」
売られた勝負は買ってさしあげましょう。2人でサイコロのコーナーへ行くと、サイコロを振っていたのは護衛でした。エレーヌは護衛と目で会話しました。
『なぜ、サイコロを振る人になってるの?』
『なりゆきで。プレイっすか?』
『そーです。では、例のサイコロを』
『分かりました』
きっと通じているでしょう。エレーヌは、細工をしたサイコロを護衛に渡してあります。正々堂々とした相手ならイカサマはしません。相手は卑怯な嘘つきです。イカサマをすることに、良心の呵責など微塵もありません。
2つのサイコロの目の合計が奇数になるか偶数になるかを賭けます。勝負は5回。先に3回当てたら勝ちです。
ストレート勝ちでは怪しまれます。が、とりあえず1勝しておきましょう。
「偶数」
エレーヌは言いました。現寵姫は奇数に賭けました。
「4・6の偶数」
いい感じです。次は普通に勝負をしましょう。エレーヌは護衛に「使わないで」という意味で右手をちょっと振りました。
「奇数」
にエレーヌ。偶数に現寵姫。結果は偶数。これでOKです。1回負けておけば、誰もイカサマだと思いません。
次は「偶数」でエレーヌの勝ち。エレーヌのリーチです。
さっさと方をつけましょう。エレーヌは護衛に合図を送ります。イカサマサイコロを使えと人差し指と親指でさりげなく円を作りました。護衛は頷きました。
「偶数」
次も4か6と2か6が出るはずです。現寵姫は奇数に賭けています。
「1・6の奇数」
『は?』
いえいえいえ。しっかりとサインを出して護衛は頷きました。1の方を失敗しただけかもしれません。護衛の目は現寵姫の胸元に釘付けです。サインを送るエレーヌの方を見もしません。この場でしばき倒したくなりました。
『あれ?』
そのときに分かりました。護衛はイカサマセットの指輪をはめていません。指輪に仕込んである磁石がなければイカサマができないのです。
『どゆこと?』
エレーヌが作ったイカサマサイコロには金属が仕込んであります。1つは4の目と6の目の境の辺の中に、もう1つは2の目と6の目の境の辺の中です。指輪に仕込んである磁石は針より少し太い棒状のもの。手の内側でこっそり使えるようになっています。
サイコロを入れた器を台に置くとき、台の上で器を少し滑らせ、サイコロを器越しに手の内側の磁石にくっつけます。このとき、指をサイコロの高さくらいで台と平行にします。すると、サイコロの金属部分が器の中で、台と平行になってくっつくのです。金属が入っているのは、4と6の目の境の辺の中と2と6の目の境の辺。その状態で器から磁石を遠ざけると、サイコロは、4か6、2か6のの目が上になります。
イカサマサイコロは、大抵、サイコロ自体に仕掛けがあり、サイコロを調べると6の目しか出ない、あるいは1と3と5の目しかないなど、すぐにバレるのだそうです。エレーヌが作ったものは、サイコロ単体ではバレません。
エレーヌには、現寵姫にお願いがありました。それは、部外者のエレーヌが言わなければ実現しないだろうことです。どうしても勝ちたいのです。
『なのに、何してんのっ』
次は最後、現寵姫に仕える女性達は歌ってハモって盛り上げます。
イカサマサイコロでないならば、確率は1/2。
「奇数」
「では偶数を」
奇数が出ればエレーヌの勝ちです。
「3・4の奇数」
わーーーっと拍手が湧きました。これで、現寵姫はエレーヌの友達だと公言できないことになります。このままにするのは、大人のすることではありません。
「とても楽しいゲームでした。歌もハーモニーも素敵です。お手紙を書きますね」
大勢の前で、エレーヌは花のような微笑みを現寵姫に向けました。これで現寵姫の面目は保たれるでしょう。
ハレムが登場するのでイスラム圏となります。イスラム教はギャンブル禁止のようです。調べると「支配層では行われていた」ともあります。実態は不明ですが、異世界設定ですので、ご了承ください。




