表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon
西の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/77

夜伽はサバイバルの為

約1000人のハレムの女性は、5パターンに分類されます。

①国王の寵愛を受けていない女性(大半が相当)

②国王の寵愛を受け、子供がいない女性

③娘を産んで寵愛を受けていない女性

④娘を産んで寵愛を受けている女性

⑤息子を産んだ女性


①は、国王の判断で家臣に下賜(かし)されます。要するに、飽きると家臣にあげるのです。そうしないとハレムの部屋数は限られていて、新しく貢がれる女性を置けません。費用も嵩みます。なにせみなさん「こんなに愛されてるのよ」的に贅沢に着飾りますので。

③は娘が10歳くらいになったら、家臣に下賜されます。


②と④で、国王の最期までハレムで過ごすと、国王とお墓に入るために殉死するという名誉を得られます。子供を産んでいても娘の場合はお墓行きです。

エレーヌにとっては、アホみたいな話であって、名誉でもなんでもありません。


⑤は、息子と共に後継者争いバトルロワイヤルです。


家臣に下賜された場合、元々いる正式な妻や親類から疎まれます。家臣とて望まない人間関係クラッシャーは嫌です。多くの場合は、実家に返されるか売られます。ハレムにいたというだけでとても高く売れるのです。

まだ娘が10歳という幼いうちに下賜されてしまうのは、歳を取ると売るときの価値が下がるからです。国王に貢がれる年齢が10代後半。それから10年以上経つと30歳ほど。国王の家臣に対する配慮です。


だから、女性達は国王の息子が欲しいのです。

若く美しい女性が次々貢がれる中で寵愛を受け続けることは困難。息子がいれば、生き長らえることができます。裕福な家の女性は下賜を経由して実家に帰ることができますが、その場合、実家はかなりの金額を積まなければなりません。10年もすると実家の権限は代が変わっていることも多く、なかなか難しいのです。


旧寵姫は「自分はもう2人の息子がいるから」と、No.3やNo.4を国王に勧めてくれるそうです。そして、息子達が即位するときには争わず、後継者になれない者は平和に身を引きましょう、と訴えているそうです。


「新しい国王が『兄弟を殺さない』という(めい)を下せばいいとおっしゃるの」


エレーヌは、西の国の後継者争いが、なぜ苛烈なのかを質問しました。後継者以外が死ぬことはないと思います。

兄弟が残っていると、有力な貴族がそこに集まって勢力争いを繰り広げるからでした。長い歴史の中、西の国だけでなく、様々な国で何度も繰り返されてきました。世が乱れる原因です。西の国では、後継者が決まったときに兄弟が粛清されるか、後継者が1人になるまで争うか、が採用されています。


「第1王子か第3王子が後継者に選ばれたら、長い間繰り返されてきた悲劇がなくなるかもしれません」

「本当に素晴らしい方だわ」

「いつも周りのことを考えてくださるの。だから、人を(おとし)めようとなんてなさらない」

「昨日の浴場のタランチュラの件だって、あの女が自分でやったのかも」

「そうよそうよ。第2王子の事故はあの女が来た1週間後だったわ」


第2王子はNo.3の息子でした。浴槽に浮かんで息絶えているところを発見されたそうです。


旧寵姫の部屋は現在、国王の母親の部屋の隣。現寵姫の部屋からとても離れています。何よりも、旧寵姫は絶対にタランチュラを使うような奇怪なことを思いつくはずがないと2人は力説します。


「失礼しました。王女様にお見苦しいところを見せてしまいました」

「話し過ぎてしまいました」


冷静を取り戻したNo.3とNo.4は去りました。


「エレーヌ様、ハレムの女性は大変そうですね」


ジジは気の毒そうに2人の背中を見送りました。


どこの国も、後継者問題は大変のようです。

エレーヌは央の国の歴史を振り返りました。女の子を産むために大変だったという話はありますが、姉妹での権力争いは起こっていません。後継者の父親が貴族だった場合は政治介入できないよう切り離されます。もとより、子供の父親が誰か、分からないことが多いのです。意図的に伏せているのでしょう。

エレーヌは、女王の国は合理的だという結論に達しました。


ナッツ海は穏やかです。多くの船が行き交う景色は隆盛の極み。


『これだけの物流があるってことだもんね』


きらきらと海面に反射する波を眺めていると、一際大きな船が近づいてきました。


「あ、お兄様が乗ってる」


国王の船でした。国王、護衛、御者の姿があります。


エレーヌがセカンド達に手を振っているとき、風に乗って旧寵姫の言葉が聞こえてきました。


「貴方は分かっているでしょう? 昨晩のことは私ではありません。私はもう、国王の寵愛を争うつもりはないの。だから、私のところにいる女性達を巻き込まないでください」


チーム旧寵姫のリーダーとして、現寵姫に直談判していました。エレーヌは、旧寵姫は強くて頼りになる人だと思いました。

そのときです。


「きゃあああ! 何をなさるのですっ」


旧寵姫は立っているだけなのに、現寵姫が金切り声を上げました。そして、バランスを崩したようにふらつき、船縁から体を海に傾けるのです。波は静かです。船は揺れていません。旧寵姫は触れてもいません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ